Interview|オカモトコウキ(OKAMOTO’S)『KNO WHERE』で鮮やかに表現したコロナ禍の“混沌” Interview|オカモトコウキ(OKAMOTO’S)『KNO WHERE』で鮮やかに表現したコロナ禍の“混沌”

Interview|オカモトコウキ(OKAMOTO’S)
『KNO WHERE』で鮮やかに表現したコロナ禍の“混沌”

そこら辺にあるギターと
GUITAR RIGだけで作ったような音のほうが
今の自分的にはリアル

「Complication」は、アルバムの中で一番激しく歪んだギター・サウンドが聴けます。

 たしかに。ここのオクターバー・ファズみたいなサウンドは、Line 6のM5で作ったんですよ。

M5は前作でも使っていましたけど、空間系だけじゃなく、メインの歪みにも使うのがコウキさんならではだなと。

 ちょっと言い方が悪いですけど、“チープな感じの歪み”がすごく良くて。レコーディングの時、歪みエフェクターはいくつか持っていったんですよ。Octaviaとか、奥さん(沙田瑞紀)の持っていたPete Cornishのすげぇ良さそうなファズとか。で、とりあえずデモはM5で録って、あとでちゃんと作った音色に差し替えようと思っていたんですけど、“もう、これで良くない?”ってなったんです(笑)。というのも、さっき話したみたいに“すごくこだわって良質な音を作ってきました”みたいな感じが、自分的に今、しっくりこないんですよね。

それはなぜ?

 ちょっと話は逸れますけど、マシン・ガン・ケリーが、2020年にロックのアルバム(『チケッツ・トゥ・マイ・ダウンフォール』)でひさしぶりに全米1位を獲ったんです。ラッパーなのにポップ・パンクに挑戦する、みたいな作品で、“2005年ですか?”みたいなメロディック・パンクの曲ばかり入っているんですよ。プロデューサーはブリンク182のトラヴィス・バーカーで、めっちゃ“そういう音”って感じなんですけど、どこか“今っぽくて”すごく良かったんです。例えば、ラッパーのアルバムとかでも、そこら辺にあるギターとGUITAR RIGだけで作りました、みたいな音ってあるじゃないですか。そういう音のほうが、今の自分的にはリアルに感じているんです。例えば、前作を作り終えた直後に買ったレス・ポールがあって、めっちゃ良い音だと思うんですけど、なんか今作の雰囲気にはフィットしなくて。

それよりはエアー感がなく、貼り付いてるような音のほうが、曲によってはフィットする部分もあると。

 そうそう、貼り付いていたりとか、どこかパキパキしてしたりとか。自分は今そんなムードだから、機材も5年くらいほぼ変わっていないんですよね。

使用機材が変わらないとなると、ギタリストとして変わっていくのは弾き方などのアプローチの仕方ですよね。

 「Welcome My Friend」で言うと、コード・ワークを1サビ、2サビ、3サビで全部変えていたりして。歌メロは同じなんだけど、当てるコードが違うとか……そういうアプローチが楽しいんですよね。ギタリストとして“もっとこういうプレイをしよう”とか“こういう音を出したい”とかは思わなくて。あまりギタリスト脳じゃないんですよ。何よりも今はいろんな曲を作ることが楽しいし、“コンポーザーとしての方向性を深めたいな”って気持ちが大きくなっている気がしますね。

ギターがどうこうってことよりも
楽曲の完成形が良ければいい

「MC5」では、もちろん所有しているウェイン・クレイマー・モデルのストラトを使ったんですよね(笑)?

 いやぁ、実は使ってないんですよ……使えばよかったですね(笑)。弾いたのはSG Specialです。この曲を作ったのって、実は2011〜12年頃なんですよ。それこそガレージ・ロックをやっていた頃のデモ・テープから、“このフィーリングって、今の自分たちが作る曲にはないよな”って。

レコーディングで使用した機材について教えて下さい。以前のメイン・ギターは60年製の白いストラトでしたが、今回も活躍しましたか?

 白いストラトは、単音のリフやファンキーなカッティングのパートで使いました。「Sprite」や「MC5」、「Blow Your Mind」みたいにロックで重厚な曲はSG Specialですね。そのほかにはシンラインやテレキャスなんかも使いました。珍しいところでは、「Picasso」で初めてジャズマスターを弾いたんですよ。ニューウェイブっぽい曲だったので、“倍音がある、変わった音のギターが欲しいな”って思っていたところ、ジャズマスターがピッタリだったんです。奥さんから借りたんですけど、ずっと鳴らされていたギターなのですごく良い音がしましたね。

ライブでは新たなギターも使用するみたいですね。

 最近リハで使い始めたのが、昔からずっとお世話になっているミリメーターズミュージック(東京・町田の楽器店)が製作したオリジナル・ギターやカジノ・クーペなんですけど、これから始まるツアーで使っていこうと思っています。

今のオカモトコウキにとって、ギターは、“曲を作る/音楽を作るためのツール”といった感じですか?

 もちろんギタリストとしての自分を深めていく人もいるし、それは正当だと思うけど、自分はもうちょっと総合的に見てますね。曲を作っている時とか、最悪ギターが入ってなくてもいいと思うこともあるし。ただそれが深まっていくと、やがてバンドの解体に向かっていくってこともありますからね。まぁ、今のところ特に形態に関してこだわりはないです。ギターがどうこうってことよりも、楽曲の完成形が良ければいいと思っています。

ちなみに、先日発売されたパフィーの25周年記念アルバム『THE PUFFY』には「COCO HAWAII」を楽曲提供していましたが、OKAMOTO’S以外の活動がコンポーザーとして刺激になっていたりしますか?

 それはすごく大きいですね。OKAMOTO’Sが長続きしてるのは、みんな別のことをやってるからだと思います。それぞれがいろんな活動をやって、そこで得たものをバンドに持ち帰るのがすごく健全だなって。

最後に、作品制作を振り返って一言お願いします。

 今やれることを全部やった感覚はあります。ギターに関しては、いろんな音色やプレイが入ってて、最近ではあまり聴かないような長いギター・ソロやメロウなプレイもあるので、けっこう楽しんでもらえるんじゃないかなって思いますね。

 それと、『KNO WHERE』というタイトルに関しては、普通は“K”の付かない“No Where”に、“今”の“Now”、どこにいるかを“知っている”の“Know”などをかけてみたんです。「Young Japanese」のEnglish Versionに“どこに行くかはわからないけど、今までどこにいたかは知ってる”という意味の歌詞があるんですけど、そこに紐付けていて。ライブの予定も決められないし、来年どうなってるのかわからない、頼れるものがない状況の中で、そこで何に頼るのかって考えたら、今まで積み上げてきた音楽や、お客さんだったりするわけです。そのニュアンスをタイトルでも表現したくて。

 そういう意味でも、2年8ヵ月振りにアルバムを作って、“今、この時点、ここにいますよ”っていう記録は、収録された17曲で達成できたんじゃないかな。今後、この作品をどうとらえることになるかはまだわからないけど、10年後、20年後に聴き返しても恥ずかしくない作品になったんじゃないかと思ってますね。

作品データ

KNO WHERE』
OKAMOTO’S

ソニー/BVCL-1176/2021年9月29日リリース

―Track List―

01. Pink Moon
02. Young Japanese ※テレビ東京ドラマ25「直ちゃんは小学三年生」オープニングテーマ
03. You Don’t Want It
04. Picasso
05. Blow Your Mind
06. Sprite ※Amazon Prime Videoにて先行配信テレビ東京にて2022年放送予定ドラマ「僕の姉ちゃん」エンディングテーマ
07. Star Game
08. Complication ※テレビ東京ドラマ25「東京怪奇酒」エンディングテーマ
09. Coffee Break
10. Misty(2021Version)
11. When the Music’s Over
12. M
13. MC5
14. Band Music
15. Subway
16. Welcome My Friend ※「富豪刑事Balance:UNLIMITED」エンディング・テーマ
17. For You

―Guitarist―

オカモトコウキ