崎山蒼志の未知との遭遇 第4回:深夜にギターを爪弾くこと 崎山蒼志の未知との遭遇 第4回:深夜にギターを爪弾くこと

崎山蒼志の未知との遭遇
第4回:深夜にギターを爪弾くこと

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

深夜。静まり返った空気が波のように満ち引きを繰り返す。

 ほかに何もやる気が起きない時でも、ギターを弾くことは不思議とできまして、ギターを爪弾くだけで心が落ち着いたり、アイディアが浮かんだりします。楽器を弾くことが心の支えとなるという見出しの記事を以前見かけたことがありますが、今の自分にとってまさしくそのとおりだなと思います。また有り難く一人のミュージシャンとして活動をさせていただいているわけですが、アイディアが浮かぶという点につながり、一番感覚的にかつ、自然に曲ができるのもやはりギターだなと感じます。それだけ自分にとってギターは特別な楽器なんだなと、ふと思いました。

 深夜です。窓の外は静寂です。たまにサイレンの音や、車の走行音は聴こえますが、そのほとんどは静まり返った空気が波のように満ち引きを繰り返す音です。なぜだか眠れないな、そんな時自分はエレキ・ギターを小さな音で爪弾きます。

 そして本当はよくないのでしょうが、スマートフォンを触ってしまいます。眺めるのはInstagramのギタリストたちの動画。そんな時間にギターを爪弾いているからなのか、わりと穏やかなフレージングだったり、優しめなタッチや音作りのギタリストに心惹かれます(とはいっても、深夜でも激しいアプローチのギタリストの動画をYouTubeなどで観ている時もちらほらあります。激しめのアプローチで最近心惹かれたのはジェイコブ・バグデンというギタリストで、ビーバドゥービーのサポート・ギターを務める方です。同じくビーバドゥービーの「Cologne」という曲のライブ映像で、曲の展開に沿うようにしっかりとしたサポート・ギターとして居ながらも、ギター・ソロでは狂ったようにカマしまくる姿と鳴らす音にぐっときました。お薦めのライブ映像です)。

 カッコ内で大分話が逸れましたが、そうなると、ネオソウル系の方々なんかの投稿を見ることが多いです。その中でもずっと大好きなのはメラニー・フェイで、好きすぎてフレーズを耳コピ目コピすることも多々あるのですが、大分トリッキーなことをされている。リズムの取り方や運指側のスライディングやタッピングの仕方、爪弾くような弾き方などが特徴的で、9thや7thの使い方がドンピシャです。「Eternally 12」という曲などで披露される、頭の中に月夜が浮かぶようなセンチメンタルなフレーズにはいつも胸がいっぱいになります。ギターのチョイスもとてもクールです。そしてやはり本当にリズムがかっこいいギタリストだと思いますね。そこに惹かれている節も大きいです。

 あとInstagramって急に昔の映像が投稿されたりしますよね。パット・メセニー! クリーンなトーンに、均一な、時に強弱自在な柔らかなピッキングによる、ジャジィな超絶技巧かつメロディアスなフレージングが圧巻です。今僕がこんなギターを弾けたらいいなと思う、究極形かもしれません。ギターが歌っています。僕が観たものはパット・メセニー・グループの映像で、弾いていたメイプル・ボディのフルアコがなんとも渋カッコ良かったです。ジュリアン・レイジさんなどもギターが歌っていますよね。そんなフレーズが弾けるよう、精進します。

 ギターを爪弾くといえば、最近家で爪弾いているのはエレキだけではありません。今年購入したガット・ギターもです。爪弾くというスタイルも、実はガット・ギターからの影響が大きいかもしれません。指弾きなんかは特にそうです。

 ガット・ギターに出会ってまたギターへの関心が高まったり、日常的に弾くことも増えました。ガット・ギターはそのふくよかなサウンドから歌を支えてくれる感じがして、最近の自分の曲作りにもその影響が窺えます。11thだったり、9thだったりが気持ちよく鳴ってくれるので、それがなんともたまりません。ホセ・ゴンザレスさんのようなスタイルで弾き語りできたらなというのも、一つ今の目標です。

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。現在19歳。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

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