おとぎ話『US』を様々な視点で深堀りした特集の最後は、おとぎ話をリスペクトするオカモトコウキ(OKAMOTO’S)との対談で締めくくろう。それぞれの印象や影響を受けた楽曲などを、リラックスした雰囲気で話してもらった。
取材・文=小林弘昂 人物・機材写真=西槇太一
絶対、今のおとぎ話とコウキは合うと思った。
一緒にツアーを周りたいっていう気持ちにもなったし。
──有馬和樹
本日は対談よろしくお願いします!
コウキ “おとぎ話について語ろう”ということですね!
有馬 おとぎ話も語るし、コウキについても語りますよ。「蜃気楼」という曲が好きです、ということもね。
コウキ ありがとうございます! おとぎ話は始まって何年ですか?
有馬 21年(笑)。最悪だよ! 人生の半分おとぎ話やっちゃった。
牛尾 そんなつもりじゃなかったのに。
コウキ 凄い。大先輩!
OKAMOTO’Sは何年になりますか?
コウキ 2010年デビューなので、OKAMOTO’Sは12年ですね。でも、やり始めてもう15〜16年くらい経ってます。
牛尾 高校から?
コウキ はい。最初はハマ君がいなかったんですけど、デビューの時に加入して。
有馬 ライブは新宿red clothでよくやってたよね?
牛尾 そうだ! ズットズレテルズもred clothに出てたもんね。
コウキ そうそう。高校の時からred clothによく出ていて。ノルマがなくてやらせてくれるところだったんです。
傍から見ていたら、最初の頃はおとぎ話とOKAMOTO’Sは近いのかなと思っていたんですが、これまで一緒にライブをやったことはなかったんですか?
コウキ やったことないですね。ほかのメンバーと会ったことあります?
牛尾 ハマ君とはSPACE SHOWERの番組でね。
有馬 そう。コード進行を褒めてもらって、“ありがとうございます!”って(笑)。
コウキ コード進行(笑)! そんな音楽的な褒めをしてくるんですね。
牛尾 「COSMOS」をやったんだよね。
コウキ あ〜、たしかにコード進行が良いですね。
有馬 レイジ君は色んなところで見たことあったけど。
コウキ そうかそうか。勝手ながら近い部分はけっこうあると思っているんですけど。
初共演は今年6月5日のイベント(RED SPICE vol.5 Supported by Ruby Tuesday)だったんですよね。コウキさんバンドとおとぎ話という組み合わせで。
コウキ そうです。楽しかった!
有馬 『GIRL』(2019年)を聴いた時から一緒にやりたかったんだよ。
コウキ 本当ですか!
有馬 絶対、今のおとぎ話とコウキは合うと思ったから。OKAMOTO’Sよりもね。一緒にツアーを周りたいっていう気持ちにもなったし。
コウキ おとぎ話の『US』と僕の『時のぬけがら』には共通点があって、共演してからは、よりそう思いましたね。
『CULTURE CLUB』は
凄く衝撃を受けた1枚だったんですよ。
──オカモトコウキ
コウキさん、おとぎ話の『US』を聴いてみてどう思いました?
コウキ “凄い領域に行ったな!”という感じがしますね。僕がおとぎ話を聴き始めたのが意外と遅くて、『CULTURE CLUB』(2015年)が出たタイミングなんです。
牛尾 『CULTURE CLUB』をリリースした少しあとに渋谷のWWWで初めて会ったよね?
コウキ そうです。WWWでのレコ発も観に行って。それからおとぎ話の過去の音源も聴いたし、リアルタイムでリリースされたものも聴いています。『CULTURE CLUB』ってモードが切り替わったタイミングですもんね?
有馬 そう。felicityっていう今のレーベルに移籍して、それまでの我慢していた部分を“もういいや!”って、いきなり出しちゃったんだよね。その前にいたレーベルの時は“商業的に乗っけなきゃいけない”って、わりと言われることがあったのよ。でも、“そういうの、もう飽きたな”みたいな感じで。
コウキ “好き勝手やろう”という?
有馬 そうそう。“適当でいいや!”って。適当なんだけど、ちゃんと自分の中のフォーマットに落とし込んで音楽を作り出した。
牛尾 『CULTURE CLUB』から第二章が始まったかな。
コウキ そうですよね。今もそうですけど、2014〜2015年頃って、ロック・バンドが行き詰まって、やり方をどうするか考えていた時期で。そんな時、『CULTURE CLUB』は自分的に凄く衝撃を受けた1枚だったんですよ。
有馬 そうなんだ! 嬉しい。
コウキ サウンドもそうだし、“Aメロ→Bメロ→サビ”みたいな構成にとらわれていない感じもあって、それが凄く良いなと思って。さらにそのあとのアルバムでどんどん発展、進化していって、個人的には『眺め』(2018年)で『CULTURE CLUB』路線の集大成になったなと思ったんです。そのあとの『REALIZE』(2019年)で全然違う方向にいったじゃないですか?
有馬 そうだね(笑)。
コウキ あの感じもカッコ良かったんですけど、“これからどうなっていくんだろう?”というのが凄く興味深くて。そして『US』を聴いたら“こうなったんだ!”っていう。
かなり聴き込んでいますね!
コウキ はい。『REALIZE』は、やりたいことが凄くハッキリしていますよね。ループの感じと、上がりきらないんだけど低温でずっと燃えている感じがある。で、今回はさらにポップの要素が加わって、わかりやすくなった部分もあり、“そういうことだったのか!”と腑に落ちました。
有馬 “『REALIZE』の手法でポップなアルバムを作る”っていうのが今回の『US』のテーマだったのよ。基本的にはドラムもループなんだけど、その中でボーカルのメロディとギターの妙を意識していて。
コウキ ちょっとずつ変わっていくという。
有馬 そう。弾きすぎないで、それをどんどん展開させていくっていうのをやりたくて。
コウキ そうですよね。“本当に発明的なことをやっているな!”と思いました。凄く盛り上がって、あるポイントでカタルシスがあるわけじゃないんだけど、ずっと沸々と燃えているような感覚があって。聴き続けていると、いつのまにか景色が変わってるみたいな。
有馬 (拍手をしながら)ありがとうございます……! 本当にそのとおり。
コウキ “素晴らしいアルバムだな”と思いましたね。すみません、長くなってしまって。
いえいえ! 先日、有馬さんと牛尾さんがインタビューで話していたことを言い当てていましたね。
有馬 超言い当てています。ありがたい。『REALIZE』は、そもそもアルバムを作る予定がなくて。急に僕に“ルイ・ヴィトンのモデルをやって下さい”って連絡がきたんですよ。
コウキ 凄い話ですね(笑)。
有馬 で、やったんだよ。
コウキ しかもやったんですね!
有馬 だから2〜3ヵ月後にその写真が世の中に出るかもしれないと思うじゃん? でも、結局その写真は出なかったのよ(笑)。
コウキ え〜! その写真、凄く見たいです(笑)!
有馬 見たいよね(笑)? で、その写真が世に出るなら、“この人はバンドをやっています”っていう名刺みたいなものが必要じゃない?
コウキ たしかに。“この人は何をやってる人なんだ?”っていう。
有馬 名刺みたいな1枚を作っておこうと。そしたらfelicityから“海外の人も聴くかもしれないから、今の音楽シーンに合うようなダウナーなアルバムをサラッと有馬君が勝手に作って、それをおとぎ話の作品として出さない?”って言われて、作ったんですよ。だから実は『REALIZE』って僕たちが“一生懸命やるぞ!”って作ったものじゃなくて、僕がソロ的にやりたいことをメンバーに指示して作ったアルバムなの。
コウキ なるほど。
有馬 だから偶発的にできたんだけど、『REALIZE』を作ったことによって『US』に発展したから、めちゃくちゃ良いタイミングだった。
コウキ たしかに力が抜けた状態でできたからこそ、『REALIZE』の感じを出せたのかもしれないですね。でも、めちゃくちゃ高レベルなことをやりすぎているがゆえに、僕は『US』の素晴らしさを読者の方に理解していただけるかが心配で……(笑)。
有馬 わかんないよね(笑)。
コウキ 一聴して“ここが頂点!”みたいなポイントがなくて、とにかく深いんですよ。ちょっとベクトルは違うかもしれないんですけど、ゆらゆら帝国の『空洞です』(2007年)みたいな、低温で凄いことが行なわれているというか。
有馬 あれもビックリしたよね! だからジャブじゃないけど、ボディをずっとトントン叩いているような感じ。
コウキ その感じが逆に長いこと聴かれ続けるアルバムになるんだろうなっていう感じもするし。“もの凄いアルバムなんだぞ”っていうことが伝わってほしいです。
コウキがやって、僕たちがやって、
良いムードのまま音楽を楽しめたと思います。
──牛尾健太
改めて、先日の共演したライブの感想を聞かせてもらえますか?
有馬 あの日のコウキのセットリストがなかなか良くて、1曲目(「惑わせて」)にガツッとかますんですよ。そこからコウキ・ワールドが出てくるのが凄く楽しくてね。今までだったら、“対バンだから僕たちもかまさなきゃいけない!”みたいになってたんだけど、1枚のアルバムをコウキとおとぎ話で作ってるみたいな感じだったんです。
コウキ あ〜、そういう空気感がありましたよね!
有馬 そう。コウキの出番が終わったあと、 “あの曲で終わるんだったら、僕たちはこういう風に入っていきたいよね”っていう感じができた。
牛尾さんはどうですか?
牛尾 対バンっていうと、どうしても意識しちゃうじゃないですか? お客さんも片方のバンドを観たら、もう片方のバンドは観ないとか。それは別に普通のことだし、今までそういうのが多かったんですよ。でも、僕たちももうオッサンだし、普通に音楽だけ楽しめるほうが良い。有馬が今話していたように、コウキがやって、僕たちがやって、良いムードのまま音楽を楽しめたと思います。
有馬 お客さんにそういうムードがあったよね。だからオカモトコウキのファンって、良い人が多いんだなと思った。
コウキ 本当ですか(笑)? 両方のファンにとって凄く良いライブでしたね。
有馬 ね! 幸せな空間だったよね。
コウキ 僕、ソロのライブってそんなにしょっちゅうやれるわけじゃないので、あれも凄く久しぶりだったんですけど、その場の空気感もあったし。
有馬 緊張感があんまりなかった。
牛尾 うん。コウキのMCを初めて聞いたけど、凄くゆるくて。たぶんああいうのも良いんだろうなと思った。
有馬 牛尾は裏で凄く調子に乗ってたのよ! “いや〜、もう立派なもんですよ!”みたいなこと言って(笑)。
牛尾 いや! OKAMOTO’Sで普段ギターを弾いてる人がこうやってフロントを張ってライブをやるっていうのは、なかなかできるもんじゃないっていうことで(笑)!
コウキ それは普通の褒めじゃないですか(笑)。
牛尾 それを楽屋でみんなに言ってた(笑)。
コウキ 嬉しい!
有馬 そしたら全員、“……いやいやいや、そうだよ?”って(笑)。
牛尾 実際なかなかできないじゃん。
コウキ やっと少し慣れてきましたね。最初は凄く変な感じがしました。
有馬 汗かくよね?
コウキ かきますね。あわあわになっちゃって。あとは自分がギターだけでやってる時より、ドラムとかが凄く気になるんですよ。ちょっとの速い/遅いが全然違うんだなと思って、そこも面白かったですね。
有馬 わかる。たぶんそれでバンドに戻ると、微妙なブレスの感じとかがわかってくるよね。
コウキ そうそう! それも凄く良くて、バンドに生かせる経験ができてるなって思います。
コウキさんから見た、ギター・プレイヤーとしての有馬さんと牛尾さんはどうですか?
コウキ もちろん僕はお二人のギター・プレイがめっちゃ好きです。この間、おとぎ話がサポートをやっていたドレスコーズのライブ映像を観たんですよ。僕、牛尾さんのギターは“こんな感じだ”っていうのは知っていましたけど、有馬さんも凄く良いプレイヤーだなって思いました。
有馬 僕は変なだけだから(笑)。
コウキ ギター・ソロも弾いていて、その時に凄く歌心があって、まさに“ボーカリストが弾く良いギター”。例えるならBO GUMBOSのどんとさんみたいな感じがあって、凄く良かった。一方で、牛尾さんのギターはまた違った方向で素晴らしいと思います。僕の“最終的にこういうプレイをしたいな”っていうのが、歯を磨いている時にいきなりギターを持たされるんだけど普通に弾いてる、みたいな感じで。
牛尾 うんうん。わかる。
コウキ つまり、日常生活と接続されているというか。“よっしゃ、ギター弾いて盛り上げます!”というのではなくて、“あ、わかりました。弾きますよ”で素晴らしいギターを弾けるのが一番良い形なんじゃないかなと思うんです。で、牛尾さんはその感じが一番あるんですよ!
牛尾 マジっすか。
コウキ そう。日本のギタリストの中でも、そういう感じでやれる人っていないなと思っていて。だから、それに凄くあこがれますね。カッコ良いです!
牛尾 コウキにもそれはあるけどね。
コウキ 本当ですか?
牛尾 ここ最近のOKAMOTO’Sの映像を観ていても、全員に余裕があるっていうか。
有馬 初期のガレージ・バンドの頃よりも、今のほうがギターが聴こえてくるよね?
コウキ そうかもしれないですね。
有馬 “バランスの取れたメンバーなんだな”って思った。昔はハマ君が目立ってたじゃん? でも、ある時期から“あれ、コウキってこんなに繊細なギターを弾いてたんだ”とか、気づくようになってきて。今が特にそうだと思う。
牛尾 うん。だから今もバンドが続いてるんじゃない?
有馬 だな! それはある。
コウキ 変わらないと続かないですよね。おとぎ話も常にアルバムの感じが違うじゃないですか? 毎回最新作を聴いても、“ここに戻ったんだな!”って思わないし。僕らもそうなんですけど、最初の頃のイメージとか、“こういうバンドなんだ”っていうオーディエンスの思い込みが強かったりして。でも、新しい作品を聴いてもらえれば“今はこういう風になってるんだ”って、おとぎ話もOKAMOTO’Sもビックリされるんじゃないかなと思うんですよ。
有馬 わかるわかる。根底のアティテュードとかは変わらないんだけど、更新していかないとね。
コウキ そうなんですよ。『US』はロックンロールのアルバムですけど、新しい発明がいっぱい入っていて。いわゆる最新の音楽が好きな人が聴いても凄く入ってきやすいと思いますし、4人でこういうことをやっているバンドってほかにいないので、聴いてほしいですね。
『US』は2022年のモダン・ロック・アルバムなので、
のちのち重要になってくるんじゃないかな。
──オカモトコウキ
せっかくなので、この機会に聞いてみたいことはありますか?
有馬 コウキはソロ・アルバムを作ったからわかると思うんだけど、曲を作る時に“絶対にモダンじゃないといけない”って考えるよね?
コウキ 考えますね。
有馬 それってどういう風にする? 『US』では“凄くモダンなサウンドにする”っていうのを意識していたの。録り方はけっこうアナログなんだけど、全部を弾かないこと。あとはミックスの時に自分の意志をあんまり伝えないことでモダンさを出していったのね。手に取った時の異物感を残すということを、けっこう考えているんだけど。
コウキ 凄くわかります! モダンさをどうやって出すかって、バンドをやっていると絶対に曲作りやレコーディングで当たる問題で。
有馬 当たるよね?
コウキ 当たりますね。だから例えばバスドラだけ打ち込みにしたり、“ここのパートはシンセだけにして……”とか、安易な方法から難しい方法まで考えるけど、本当に難しいです。もうバンドっていう形態自体がモダンじゃないから。
牛尾 そうなのよ(笑)!
コウキ それでモダンなことをするって難しくて。で、それができている人たちって本当に少ないんですよ。僕は“どこかだけ打ち込みにしよう”とか、“サウンドの処理をこういう風にしよう”とか、“ボーカルだけ凝った形にしよう“とか、そういう形のモダンさを考えていたんですけど、『US』を聴いて“そういうモダンさがあるんだな!”と思いましたね。
有馬 なるほどね。
コウキ サウンドはロックだし、バンドという形式は変えていないけど、音楽をモダンにする方法がこのループ感だったりするんだなとか。
有馬 凄く短絡的に言うと、例えばモダンにしようとしたらヒップホップっぽく歌うとかあるじゃん?
コウキ そうそう。トラップっぽい符割りで歌を入れたりすることもけっこうあるんですよ。
有馬 あれをロック・バンドがやると古くなるんだよね。
コウキ そうなんですよねぇ。でも、まぁこれも古い話ですが、アークティック・モンキーズが『AM』(2013年)で重いビートでそれをやって、あれは発明だったじゃないですか? そういう風に色々すり抜ける方法はあるんですけど……。牛尾さん、ギターはモダンさを意識したりします?
牛尾 モダンさ?
コウキ 僕は“ギター・ソロがこんなに入っていたら古臭く聴こえるんじゃないか?”と思ったりするんですよ。あとは例えばミッドに寄ったレス・ポールの凄く良い音。僕は好きなんですけど、今の耳で聴くと古臭く感じたりするじゃないですか? 逆にSilvertoneのショボいペケペケの音がモダンに聴こえたりして。
有馬 わかる。
コウキ ギター・サウンドも時代感に左右されるようなところがあると思うんですけど、ある程度はそういうのも意識してるんですか?
牛尾 『US』でいうと、有馬が“こういうイメージで”とメンバーに説明するところから曲作りが始まったんだよね。だからアレンジの時点でモダンさが保たれていて。
有馬 そうだね。牛尾が弾くとけっこう埋めるから、僕は編集者になるの。アレンジを固めていく中で牛尾のギターの良い部分だけをポンポンと抜き出して、そこから音数を減らしていくというのがモダンさにつながってるんだと思うな。僕が全部“こうしろ”と言うんじゃなくて、牛尾が自分で考えてやるから、『US』は今までの作業とはまったく違ったよね?
牛尾 うん。余白があるんだけど、ムードみたいなものはもう決まっていて。そう考えた時に“今回は明らかに全曲SGじゃないだろ”と思ったんですよ。シングルコイルの音が絶対にハマると。その時、自分的にモダンさを嗅ぎ取っていたのかもしれないけどね(笑)。そこは今までのアルバムと一番違います。
『US』の中でコウキさんが一番好きな曲は?
コウキ タイミングによって変わるんですけど、「DEAR」が凄く好きでしたね。ブラジル感は「VIOLET」が強い。マルコス・ヴァーリの『Previsão Do Tempo』、僕も好きですよ。
有馬 マルコス良いよね。オス・ムタンチスのヒタ・リー(vo)がカエターノ・ヴェローゾの「Baby」っていう曲をカバーしていて、「VIOLET」はそれとほぼコード進行が一緒(笑)。
では、コウキさんがおとぎ話の中で一番好きな曲は?
コウキ 難しいですね……「綺麗」!
有馬 おっ……! 嬉しい。コウキの『GIRL』を聴いた時に、“「綺麗」はこのアルバムに入っても大丈夫だ”と思ったもん。
牛尾 リンクしてるんだ。
有馬 そう。だから嬉しいよ!
コウキ 『眺め』も凄く好きでしたね。
コウキさんは『眺め』から影響を受けている部分があると。
コウキ そうですね。日本のロック・バンドでリファレンスにしたいと思うような人たちって、あんまり自分の中にいないんですよ。
牛尾 いないよね。
有馬 日本のバンドってだいたい型にはまってるよね。
コウキ うん。あと普通のロック・バンドがいないんですよ。
牛尾 わかる! 仕方ないのかね。
コウキ でも、おとぎ話はずっとロック・バンドなんですよね。ずっと違うことをやってるけど毎回刺激的で、自分の中で凄く腑に落ちる点が多くて。好きな曲はいっぱいあります。
牛尾 嬉しい。自分のバンドのことをこんなに言われることないもん。
コウキ だから真似できないと思うんですよ。『US』なんかは特に。ずっと長続きするだろうし、もしかしたら孤高の存在になるんじゃないかな。
有馬 もう40代だから、みんなと友達になりたい(笑)。本当に!
コウキ でも、僕みたいな人はちゃんとキャッチしていますよ。凄く影響を受けている。ほかにも絶対にそういう人がいると思うんですよ。
有馬さんと牛尾さんが、コウキさんのソロやOKAMOTO’Sで好きな曲は?
有馬 僕は『時のぬけがら』を凄く聴き込んだから、「蜃気楼」って曲がめちゃくちゃ好き。
コウキ 嬉しいですね。
有馬 凄く変だし、“本当に新しいことをやってるな”って思った。
コウキ 途中のアフロ・ビートっぽくなるところが面白いですよね。
有馬 音楽が好きな人が作る曲と、有名になりたいから音楽を作る人の曲って、まったく違うんですよ。コウキが作るのは“音楽が好きなんだろうな“っていう曲。だから凄く好き。
牛尾さんは?
牛尾 1曲に絞るのは難しいんですけど、コウキに対して思っていることがあって。OKAMOTO’Sのライブでレッチリの「Give It Away」をカバーしてるけど、何回かやってるのかな?
コウキ そうですね。
牛尾 実際レッチリをカバーするのって、とてつもなく難易度が高いというか。表面上だけああいうことをやるのは簡単なんだけど、コウキのギターを聴いた時に、“わかってるな!”と思った。そのあとストラトを弾いてる「Young Japanese」(2021年)も聴いて、言い方は悪いかもしれないけど、“日本で一番ジョン・フルシアンテに近い音してるな”って。
コウキ 嬉しいです(笑)。
牛尾 “どうしてギターを弾いてるのか”っていうのを、凄く感じるというか。ギターを弾いている人はいっぱいいるし、ギターを持っている理由っていうのは聴いてる人にはわからないんだけど、コウキはそれを凄く感じる。ちょっと上手く説明できないですけど。
コウキ YouTubeに上がってる「Give It Away」のライブ音源、あれが凄く良くて。調子が良かったのかな(笑)。
牛尾 SGで弾いてたの?
コウキ あれはストラトで弾いていました。「Young Japanese」で思い出しましたけど、あの曲を作っている時にモダンさみたいなものをけっこう考えていて。サビでギターはリフっぽいものしか弾いてないんですけど、全体のコード感はピアノが担っていて、ピアノのコード感がちょっとずつ変わっていくみたいな感じにしたんですよね。
有馬 そうか。だから面白いんだ。
コウキ ベタッと埋めちゃうんじゃなくて、役割分担を変えようかなみたいな。
有馬 コウキは感じるままにギターを弾いているんだけど、ちゃんとそうしようとしてるのがわかる。ギタリストとしてそれが凄く好き。
早いもので、そろそろ終了のお時間になろうとしています……。
有馬 え〜っ!? OKAMOTO’Sを聴いていると、コウキのやっていることが核だったりするんですよね。最近のOKAMOTO’Sは特に。モダンさとかギターの役割とかが、おとぎ話もオカモトコウキも同じだったんだな、ということがわかって、僕はけっこう安心しています。
コウキ 『US』は2022年のモダン・ロック・アルバムなので、本当に賞賛されるべきというか、のちのちになって重要になってくるんじゃないかなと思いますね。
有馬 なったら嬉しいね!
最後に本日の感想をお願いします!
コウキ 色々と“こうじゃないかな?”と思っていたことを確かめることができました。あとはいかに僕がおとぎ話を聴いてきたかの一端を、少しでも本人に伝えられたのなら良かったかな(笑)。これからも1ファンとして聴き続けるバンドなので、楽しみにしています。『時のぬけがら』も良いアルバムができたと思うし、そのリリース・タイミングで自分の好きなおとぎ話と対バンできたっていうのが本当に嬉しかったから、今日もありがたかったです!
牛尾 まず、コウキと最初に会った時からおとぎ話を聴いてくれていて、アナログも買ってくれたと言っていて、“こいつめっちゃ良いやつだな!”と思っていて。
コウキ (笑)。
牛尾 OKAMOTO’Sは当時から有名だったからね。だから“マジか!”と思って。それからずっと会うことはなかったけど、個人的にはOKAMOTO’Sのコウキを意識していたんです。で、今回もこういう機会をもらって、実際に新しいアルバムを聴いてくれていたり、ちゃんと今までの作品も聴いてくれていて、コウキなりにおとぎ話をとらえてくれているっていうのは凄く伝わったから、めちゃくちゃ嬉しかった。おとぎ話の魅力を凄くわかりやすく伝えてもらったから、コウキの想いはこれを読んでいる人に伝わると思うんだよね。貴重な機会をいただいて、ありがとうございます(笑)!
コウキ 記事が楽しみですね!
牛尾 あんまりこういう機会はなかったしね。
コウキ ミュージシャンがバンドについて話すのって面白いですよね。
有馬 面白い! こういうのが一番良いんだよ。
牛尾 気づかされることも多かったし。
有馬 僕はもう、オカモトコウキ推しです。一番尊い……。これから一緒にツアーに行って、ご飯は僕に奢らせて下さい。
コウキ やったー! ライブ、またやりたいですね。いつでも誘って下さい。
牛尾 それはぜひ。
有馬 やりたいね。誘います!
Guitars
OKAMOTO’S
LIVE INFORMATION
OKAMOTO’S対バン・ツアー
「OKAMOTO’S tourw/2022 ~ウェルカム マイ フレンズ~」
・2022年9月27日(火)
KT Zepp Yokohama(神奈川)
17:30開場/18:30開演
GUEST:DISH//、Last Dinosaurs(from Australia)、OKAMOTO’S
・2022年9月29日(木)
Zepp Nagoya(愛知)
17:30開場/18:30開演
GUEST:iri、Last Dinosaurs(from Australia)、OKAMOTO’S
・2022年9月30日(金)
Zepp Namba(大阪)
17:30開場/18:30開演
GUEST:羊文学、Last Dinosaurs(from Australia)、OKAMOTO’S
・2022年10月2日(日)
豊洲PIT(東京)
16:30開場/17:30開演
GUEST:ALI、AgeFactory、Last Dinosaurs(from Australia)、OKAMOTO’S
【チケット情報】
全席指定¥5,500(+Drink)特典付き
オフィシャルHP先行
8/10(水)12:00~8/17(水)23:59
一般発売日:2022年9月3日(土)
作品データ
『US』
おとぎ話
felicity / P-VINE RECORDS/PCD-27063/2022年6月22日リリース
―Track List―
01.FALLING
02.BITTERSWEET
03.DEAR
04.ROLLING
05.RINNE
06.VOICE
07.VIOLET
08.SCENE
09.VISION
10.ESPERS
―Guitarists―
有馬和樹、牛尾健太
作品データ
『時のぬけがら』
オカモトコウキ
ソニー/SLRL-10087/2022年4月27日リリース(7月20日にアナログ盤をリリース)
―Track List―
01.Time
02.君は幻
03.惑わせて
04.WORLD SONG
05.SMOKE
06.幽霊気分
07.プール
08.蜃気楼
09.folk
10.Thousand Nights
11.いつかの絵
―Guitarists―
オカモトコウキ、藤原ヒロシ、TAIKING、澤竜次