ブラック・ミュージックを基調にセクシーでグルーヴィな音楽を奏でるI Don’t Like Mondays.が、昨年8月から12月まで5ヵ月連続シングル・リリースを決行。本来であればアルバムを制作~ツアーを回る予定だったが、新型コロナ・ウィルスの状況を鑑みて急遽路線変更、このような試みに至った。ギタリストのCHOJIは2020年の緊急事態宣言中にクラシックの勉強を始め、オーケストレーションについてフルスコアから学んだそう。コロナ禍だからこそのインプットから生まれた5つの楽曲には、これまでのアイドラにはない、新たなチャレンジが隠れている。さっそくその5曲でのギター・プレイについて、CHOJI本人に語ってもらおう。
取材=福崎敬太 Photo by Masaki Sato
「モンスター」の音は
1、2を争うくらい
気に入っている
まずは5ヵ月連続シングル・リリースという試みを振り返ってみて、率直な感想を聞かせて下さい。
YU(vo)が書く歌詞が、今感じている言葉を中心に書いてたので、曲の作り方も変わったところがあって。今まではメロディをガチッと決めて、譜割も固まったところに歌詞を乗せる感じだったんですが、歌詞を変えたりする、リズムを決め切らない遊びの部分を作るようになったんです。それによって僕のギターも音楽的に主張できるようになったというか。あと、日本語の歌詞が多くなったので、例えば“震えた”という言葉が出たらトレモロをかけたり、歌詞に合わせたプレイとかもやりやすくなったんです。そういう部分で成長できたなと感じています。
結果的にバラエティ豊かな楽曲が並びましたが、それぞれについてギター的にはどのような楽曲に仕上がったと感じていますか? まずは「モンスター」から。
「モンスター」は実は録り直しをしているんですよ。最初はレス・ポールでリフを弾いたんですけど、ラフミックスを聴いて“なんかギターの音が違う”ってずっと悩んでたんです。それで別の曲をレコーディングする日に、作業が終わったタイミングで“すみません、違うギターでもう1回録りたい”ってお願いして。それで最初に想像したサウンドとは違う感じの良い音で録れたんですよ。この「モンスター」の音は1、2を争うくらい気に入っていますね。
「MR.CLEVER」はどうでしょう?
「MR.CLEVER」のような楽曲でギターが活躍する曲って、世の中にあんまりないと思っていて。それで、“爪痕を残してやろう”みたいな気持ちで、レス・ポールをオクターブ違いで重ねたリフを録りました。で、「ENTERTAINER」はこのバンドで初めてワウを全編で使った曲ですね。個人的にワウってインスピレーションで弾くものだと思ってるんで、まったく決めずに2回くらいRECで弾きましたね。これはESME MORIさんと一緒に作ったんですけど、“ベースのほうをフィーチャーしたい”っていうのが少しあって、僕はイントロのリフで“掴めたかな”って感じたのでバランスを見て全体としては引いた感じですね。「東京エキストラ」で気に入っているのは、2番のBメロで出てくる、フワーッとしたディレイというかリバーブのフレーズ。ボトルネックでやっても良かったんですが、手で弾いたニュアンスも悪くないなと思って普通にチョーキングして……僕の中では、車で走っていて、対向車線からきた車のライトみたいなイメージで(笑)。
わかります(笑)、対向車が通り過ぎていく感じ。
そうそう(笑)。あれはけっこう気に入ってます。で、「ミレニアルズ」は、ギターがたぶん10本以上重なっているんですよ。レス・ポールをベースに、テックさんが持っているビンテージのSGも使ったりしましたね。プレイ的には、リズムを縫うようなポリリズム的なフレーズなどにはこだわりました。
6度を当てるのが
好きなんですよね。
「モンスター」のイントロは左右2本のギターが違ったリズムで絡み合いますが、このようなレイヤーはどのように作っていくんですか?
最初はストレートなリズムのほうがあって、それだと表面的過ぎるからリズムをズラすことで立体的にさせるんですよ。でもこれはそんなに悩まずに作ったと思います。この曲はコードがB♭m→D♭→E♭って上がっていくんですけど、トップノートは下がっていくんです。プリンスをすごく聴いてた時期で、そういうフレーズをやりたいと思って作ったんですよね。
B♭m→D♭→E♭だけでもいろいろと違うボイシングが出てきますよね。
そこはけっこうこだわりますね。“常に進化していきたいな”っていう気持ちがあるので、いろんなパターンを出したくて。ただ、ベースやシンセ、ボーカルなど全体のアンサンブルの接着剤みたいなところは意識していて、ギター同士も同じ帯域にいないようには気をつけています。高い音域のフレーズも、高過ぎても浮くいたりするので、そのあたりはかなり意識していますね。
「MR.CLEVER」、「ENTERTAINER」や「東京エキストラ」のイントロもそうですが、こういうキャッチーなコード進行での単音カッティングってなかなか作るのが難しいと思うんです。音選びやリズムで心がけていることはありますか?
こういった曲の場合はギター・リフから作ることはあまりなくて、ベースとドラムと軽いコード進行がある中で、オクターブ違いで試してみたりしますね。同じフレーズでも3~4弦で弾くのと4~5弦で弾くのとでは倍音の出方などが全然違うんです。そこはけっこう意識してやるようになりましたね。あとはもう運(笑)。
(笑)。やってみて、おかしければ直す感じですね。
そうです。デモで弾いた時に気持ちよくハマるとそのまま採用することが多いんですが、“なんかちょっとな”っていう時はけっこう悩む時もありますね。特にイントロで“掴まないといけない時”は意識します。歌えるっていうのが大事ですが、そこには自分の手グセみたいなのがあったりすると思うので、そのバランスを見てって調整していく感じですかね。
コード進行はどのくらい気にしますか?
めちゃくちゃ気にしますね。コード・トーンからも作ったりします。たぶん僕は、Fの時のDみたいに6度を当てるのが好きなんですよね。Maj7も好きですけど、なんとなく弾き始める時は、そのあたりから始めることが多いかもしれないです。「Crazy」っていう曲は6度を意識したカッティングですし。
6度のどういう雰囲気が好きなんですか?
ハワイアンみたいなイメージというか、ちょっとほんわかした雰囲気がありますよね。C6なんかは特にそういうイメージがあるんですけど。
ハワイアン・スティールはC6チューニングも多いですよね。
そうですね。それを単音でやると意外に新しく感じるのかな。
CHOJIさんのカッティングはジャスト目なグルーヴという印象ですが、カッティングで影響されているギタリストは? 本誌2017年8月号『ニッポンの偉大なギタリスト100』のアンケートでは鳥山雄司さんが入っていましたが。
僕は鳥山さんの作る曲が大好きで、『世界遺産』の曲(「The Song of Life」)をオーケストラをバックにギターで弾いていたりするのが、僕のゴール地点みたいな感じなんです。でもカッティングで言うと、もうちょっとラフなほうが好みで、ナイル・ロジャースの雰囲気とかが理想ですね。それこそギター・マガジンで見たんですけど、ナイル・ロジャースは同じコードでも弾く場所を変えて、高音弦と低音弦側を弾き分けるだけでグルーヴを出すんです。ただ、それはライブではやりますけど、レコーディングでは、うしろノリな感じよりもタイトなほうが新しさがあるかなと思っています。