10周年を迎えたAltero Custom Guitarsの真骨頂と新たな可能性。 10周年を迎えたAltero Custom Guitarsの真骨頂と新たな可能性。

10周年を迎えたAltero Custom Guitarsの真骨頂と新たな可能性。

Altero Custom Guitarsが滋賀で歩んだ10年間〜

数多のビルダーを育てた技術力で
ギタリストの理想を形にする

Altero Custom Guitarsは、代表/ビルダーの安田圭佑氏と、ショップマネージャー/ビルダーの倉田聡一氏のふたりで立ち上げた、カスタム・ギターの製作、リペアを行なう工房だ。両氏は、同じ高校の同じ軽音出身の先輩・後輩であり、それぞれ東京のギタークラフト学校を卒業後に、クラフトの講師を務めるほどの凄腕でもある。

安田圭佑氏(左)と倉田聡一氏(右)。

先に個人としてギターのリペアの仕事などを受けていた倉田氏と、独立を考えていた安田氏が、“ふたりで組めば、できることが広がる”と地元・滋賀でAltero Custom Guitarsを立ち上げたのが、2010年。当初はライブハウスとリハスタが併設されたビルのフロアの一角を借り受け、そこで開業した。

この場所で始めたことが、Altero Custom Guitarsのその後の方向性にも影響を及ぼしている。とにかく“ライブ直前だがギターの調子が悪い”、“リハーサルで音が出ない”といった相談がひっきりなしに舞い込む。それらに対応する徹底した現場主義と、“自分たちが好きな音を押し付けるのではなくギタリストやベーシストが求める音を作る”というスタンスが、この時期にできあがった。

増え続ける仕事に工房はすぐに手狭になり、3年で移転。現在の大津市馬場に居を構える。

設立当初からAstraを中心に自社オリジナル・ギターを作っていきたが、実はこだわりはそれほどなかったというふたり。これは、“こだわり=自分たちエゴ”を排し、徹底的にユーザーに寄り添う姿勢の表われのように思う。そしてこれが可能なのは、求められればどのようなものでも作れる技術の高さゆえ、のことだろう。

そうして、これまでにフル・オーダー~セミ・オーダーで、数々のギターを作ってきた。以下は、初期の作品の一部だ。

オーセンティックなVシェイプの、サウスポー・モデル。
LPシェイプで7弦、ピックアップはリアに一基のみという個性的なモデル。
Altero Custom Guitarsの個性が表れた、Vuotoモデルの一本。

中には無茶なオーダーもあったというが、とにかく“技術的にできないことはない”というアルテロだけに、どんなオーダーも形にしていった。それとともに、オーダー、リペアともに仕事が増え続けていったのだ。

滋賀の小さな工房が
世界に知れ渡る

そんなAltero Custom Guitarsの転機となったのが、さまざまなアーティスト・モデルを製作したことだった。中でも、tricotの中嶋イッキュウ、キダ モティフォのギターを作ったことで、Altero Custom Guitarsの名は世界に知られるようになる。

実は高校の軽音の後輩でもあり、前身のバンド時代からAltero Custom Guitarsに出入りしていたというキダ。彼女が“新しいバンドを組んだ”というのがtricotだった(中嶋も学年は違うが、同じ高校の軽音の後輩)。旧知の仲だったキダ、中嶋に安田氏が“FUJI ROCKみたいなでかいフェスに出たら、お祝いにギターを作る”と口約束をした直後の2012年頃から、tricotが快進撃を開始! 国内の大規模フェスに片っ端から出場し、海外にまでツアーに行く存在になった。

そして、約束通りに製作したキダ モティフォ・シグネチャー・モデル=Astra KID-Aがこちら。

撮影=小原啓樹

激しいパフォーマンスで“とにかく、壊れないギターが欲しい”というキダの要望に、不要なパーツは取り去ったシンプルなモデルを製作。これに反応した全国のファンはもとより、海外からも問い合わせがくるようになった。

Altero Custom Guitarsのもうひとつの転機が、Kanade Sound Designという新ブランドを設立したこと。このブランドは、“ハイクオリティなサウンドを気軽に奏でてもらいたい”というコンセプトのもと、数々のリペアやカスタムオーダーで培った技術を注ぎ込み、高品質でありながら手の届きやすい価格を実現した製品をそろえている。Kanadeのギターを通してAltero Custom Guitarsを知る新たなファンも生まれ、カスタム・ギターの制作依頼は増えているそうだ。

さらに、リペアの依頼数も右肩上がりで、“最近はお待たせしてしまっているお客様が増えてしまい、ありがたい一方で、申し訳ない気持ちも強いですね”と倉田氏は言う。

それに加えて安田氏は“マンパワー的には、そろそろ限界です(笑)。工房に若い力を借りることも考えていく必要があると思っています。ただし、ブランドを大きくしたいというよりも、滋賀で真っ先にご連絡をいただく工房として、プレイヤーの悩みに何ができるのかを考えていきたいと思います”と語っていた。

なお、今回紹介した6本の10周年記念ギターの音が聴ける動画が、Altero Custom Guitarsの公式YouTubeチャンネルにて随時アップ予定。これらの記念モデルと3台の新たなエフェクター、そしてキャラクター・モジュール=Iodoformの単体発売によって、彼らの動きがますます注目されることは間違いないだろう。しかし、あくまでも地に足をつけて活動していきたいという両氏には、浮き足立ったところがまったくない。次の10年でAltero Custom Guitarsがどのような作品を生み出していくのか、期待は高まる一方だ。

店舗情報

Altero Custom Guitars

住所:〒520-0802 滋賀県大津市馬場3-16-22 1階
電話番号:077-536-5160
営業時間:12:00〜20:00(毎週火曜定休日、他不定休)
Altero Custom Guitars公式HP>
公式YouTubeチャンネル>