レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテが語る、『Unlimited Love』(2022年)の作曲秘話。アルバムがどういったアプローチで制作されたのかを、楽曲ごとにふり返ってもらった。今回は「The Heavy Wing」に関する制作秘話をお届け。
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翻訳=トミー・モリー Photo by Ethan Miller/Getty Images
ヘッドフォンを付けなかったら耳がやられるところだったよ
ザ・ムーヴだったかシド・バレットだったかの曲で、グレイトなものがあったんだ。Eメジャー、Dメジャー、Aメジャーのコードを使ったヤツでさ。“かなりパワフルだな。俺もこのコードを使って曲を書かなきゃ!”って思ったんだよね。“このコードで始めるのはよしとして、そこからどんな風に展開するのかも考えてみよう”とアイディアが浮かんできたんだ。
この「The Heavy Wing」はシンプルなファンクのリフから始まっている。俺はブレイクビーツとエレクトロニック・ミュージックが大好きで、60年代後半から70年代前半のファンクをたくさん聴いてきたよ。“ファンク・ソングになりそうなサウンドのリフから始めて、そのあとはサイケデリックな世界に持って行こう”と考えたんだ。
ヴァースのギターはモジュラー・シンセで処理していて、サウンド上にわずかな動きを加えている。そしてソロ前のブレイクダウンでは、イントロと同じフレーズを同じギターでプレイしているんだけど、そこではもっとわかりやすくモジュラー・シンセで処理したよ。
ちなみに、「Black Summer」のソロの最後の4小節もモジュラー・シンセで処理を行なったんだ。本当に少しだけどね。でも、ステレオだからかなり大きな効果が出ている。これはギター用のエフェクト・ペダルではなく、シンセを使ったサウンド処理の良い例の1つだね。
「The Heavy Wing」に話を戻すけど、ギター・ソロは62年製のストラトを弾いた。これは俺が最初にバンドに復帰した『Californication』(99年)の頃からずっとメインで使ってきたものだね。アンプはマーシャルのキャビネット4台を大音量で鳴らしたんだ。あまりにもラウドで、ヘッドフォンを付けなかったら耳がやられるところだったよ。けっこう広い部屋でレコーディングしたから、ギターを弾きながら色んな場所を動き回って、いくつかのフィードバックを試すことができたんだ。
このソロではフィードバックさせながらチョーキングをくり返していて、後半にはオクターブが高い音になり、そこからさらに2オクターブ高いところを鳴らしている部分がある。多くの人が嫌がるであろう突き刺すようなサウンドなんだけど、フィードバックが始まる前と同じようにチョーキングしてるところが聴こえるはずだ。これはまったく意図していたものではなかったんだよね。ああいう音になると思ってすらいなかった。でも、そういうことが起こると、“これを逃しませんように”と願いながら音を出し続けるしかない。
あまり事前に作り込みすぎず、“よし、やってみるか”と弾いた自分のプレイに耳を傾け、聴こえてきたものにレスポンスする。俺はそういうソロが凄く好きなんだ。
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作品データ
『UNLIMITED LOVE』
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
ワーナー/WPCR-18552/2022年10月14日リリース
―Track List―
- Black Summer
- Here Ever After
- Aquatic Mouth Dance
- Not the One
- Poster Child
- The Great Apes
- It’s Only Natural
- She’s a Lover
- These Are the Ways
- Whatchu Thinkin’
- Bastards of Light
- White Braids & Pillow Chair
- One Way Traffic
- Veronica
- Let ‘Em Cry
- The Heavy Wing
- Tangelo
―Guitarist―
ジョン・フルシアンテ