毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく新連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。今回はアルバート・キングのオススメ盤5選を紹介。まずはこれらを聴くべし!
選・文=久保木靖
Albert King『The Big Blues』(1963年/King)
1959〜1963年のBobbin/Kingレコードでのシングルをまとめた1st作。曲によってはホーンを導入し、これより前のParrotでのシカゴ・スタイルから一皮も二皮も剥けたアーバン・ブルース化に成功している(R&B風味もあり)。ギターはB.B.キングが開拓したスクイーズ路線だが、思わず仰け反ってしまう音程差の大きなチョーキングはアルバート以外の何物でもない。これは、B.B.による飛躍の大きなグリッサンドにも通じてくるから興味深い。アイク・ターナーがピアノで参加した「Don’t Throw Your Love On Me So Strong」はR&Bチャート14位のヒット曲だ。
Albert King『Born Under A Bad Sign』(1967年/Stax)
ブッカー・T&ザ・MG’sとメンフィス・ホーンズをバックに従え、サザン・ソウルを加味した傑作。個性的なメロディやリフを持つ曲が多く、タイトル曲や「Oh, Pretty Woman」、「The Hunter」などはブルース・ロック好きならきっと耳にしたことがあるはず。滑らかなボーカルと極シンプルに吠えるギターのコントラストが最高だ。イチ押しはソロが激アツな「Personal Manager」。Stax初期は8ビートを基調とする曲も多く、ビートの捉え方などにJBスタイル以前のファンキー・テイストものの重要曲「What’d I Say」(レイ・チャールズ)に通じるものを感じる。
Albert King『Live Wire / Blues Power』(1968年/Stax)
サンフランシスコのフィルモア・オーディトリウムでの傑作ライブ。1968年2月にジミヘンらの前座を務めたのが好評だったため、6月にメインでステージに立った際に収録された。ディストーション・サウンドは指弾きも相まって音が太く、アンプからギャンギャンと響き渡るリバーブのスプリング音も凄まじい。「Blues Power」での迫力が弩級で、バンドをブレイクさせた部分での変幻自在のチョーキング技にはノックアウトされること必至! アウトテイクを収録した『Wednesday Night In San Francisco』、『Thursday Night In San Francisco』が1990年にリリースされた。
Albert King『Funky London』(1994年/Stax)
『I Wanna Get Funky』(1974年)と迷いに迷って、ほぼ同時期のシングル&未発表曲集であるこちらを選出(1970〜1974年録音)。バーケイズやマーキーズといったメンフィス・バンドがバックを固めたファンキー作だ。まず度肝を抜かれるのがインストでカバーしたジェームス・ブラウンの「Cold Sweat」! 5分超えだが、ロック・フィールドを見据えてのことか、はたまた歳下のフレディ・キングがインストでも成功したことへの対抗心か、アルバートはずっと弾きっぱなしだ。メロウなインスト・ソウル「Sweet Fingers」での複数のギターの絡みはオシャレ!
Albert King With Stevie Ray Vaughan『In Session』(1999年/Stax)
1983年、カナダのテレビ番組用に収録された師弟ライブ・セッションで、レイ・ヴォーンの「Pride And Joy」以外はアルバートのレパートリーを中心に構成。無名時代のレイ・ヴォーンがアルバートのライブに飛び入りしたことを思い出し、“やせっぽちだったな”と、レイ・ヴォーンを笑わせるシーンがある。ただ、演奏は“微笑ましい共演”というより、“本気のぶつかり合い”だ。「Don’t Lie To Me」でレイ・ヴォーンの低音弦中心のソロを気に入って“ワン・モア、ワン・モア!”ともう1コーラス弾かせる場面がいい! なお、2010年にDVDも発売された。