フレディ・キングの歌心あふれるプレイを支えた、ギブソン・ギターの名器たち。 フレディ・キングの歌心あふれるプレイを支えた、ギブソン・ギターの名器たち。

フレディ・キングの歌心あふれるプレイを支えた、ギブソン・ギターの名器たち。

毎週、1人のブルース・ギタリストに焦点を当てて深掘りしていく新連載『ブルース・ギター・ヒーローズ』。今回はフレディ・キングの歌心あふれるプレイを支えたギブソン・ギターの名器、ゴールドトップのレス・ポール、ES-345、ES-355を紹介しよう。

文=久保木靖 Photo by Frans Schellekens/Redferns

活動初期を支えたゴールドトップのレス・ポール

フレディ・キングがシーンの第一線に躍り出た1960年代初頭に手にしていたギターは、初期の代表作『Let’s Hide Away And Dance Away』(1961年)のジャケットで軽々と構えているギブソンのレス・ポールだ。

1953〜1954年製と思われるゴールドトップ期の個体で、P-90ピックアップを2つ搭載し、ブランコ・テールピースではなくバー・ブリッジであること、浅いアーチ形状のトップであることが特徴だ。

別の写真を見てみると、フレディはコントロールを2つ取り外して、1ボリューム/1トーンにしているのが確認できる。

フレディ・キング(Photo by Gilles Petard/Redferns)

セミアコではなくソリッド・ギターであるレス・ポールを手にしたのは、特有の太いトーンとサスティーンがフレディの2フィンガー・ピッキングとマッチするうえに、“B.B.キングの二番煎じ”という印象を払拭できると考えたからか!?

ちなみに、当時はサーフ・ロックのブームなどもあり、フェンダーのストラトキャスターをはじめとしたソリッド・ギターが人気で、フレディの若い感性がレス・ポールを手にさせたという面もあるだろう。ライバルであったマジック・サムはストラトキャスターを手にしていた。

フレディの影響でエリック・クラプトンがレス・ポールを手にし、マーシャル・アンプとのコンビネーションで“ロック・ギター・サウンド”を生み出すわけだから、フレディが同モデルを手にした意義は非常に大きい。

1960年代中頃から活躍するES-345 & ES-355

1960年代中頃以降、フレディのギターはバリトーン・スイッチを標準搭載したギブソンES-345TDへと移行する。

複数本を使っていたが、特に印象深いのは、『Gives You A Bonanza Of Instrumentals』(1965年)のジャケットに見られるチェリーレッド・フィニッシュでストップ・テイルピース仕様、丸く大ぶりのホーン部(ミッキー・マウス・イヤーのカッタウェイ)のモデルであろう。

『Gives You A Bonanza Of Instrumentals』(1965年)

このモデルを忠実に再現した“Freddie King 1960 ES-345”がギブソン・メンフィスから2017年に発売されている。

『Getting Ready…』(1971年)ではトラピーズ・テイルピース仕様のモデルが見られ、それ以外にもマエストロ・バイブローラ搭載のものなどもあった。

1970年代に入るとES-355TD-SV(ES-355TDにバリトーン・スイッチを搭載したステレオ・アウトプット仕様)がメインに。ES-355 TDはES-300シリーズの最高峰であり、マルティプル・バインディングなどの華麗な装飾と、ヘッドに輝くスプリット・ダイヤモンド・インレイがゴージャスなモデル。

フレディ・キング(Photo by David Warner Ellis/Redferns)

ES-355 TDにはステレオ・バリトーン機能のない個体もあったが、フレディは搭載されている方をチョイスしていた(おそらく、1960年代後半〜1970年代初頭製)。残された写真からは、もともと搭載されていたロング・バイブローラのアームを取り外し、ストップ・テイルピースに改造しているものも確認できる。

そう言えば、B.B.キングも一時期、バリトーン・スイッチのついたES-335TDやES-355TDを使用していた。

バリトーン機能は特定の周波数帯域を取り除くもので、一般的なトーン・ポットとは異なる働きをする。エフェクターが限られていた時代において重要な“サウンド・メイカー”だった。

フレディやB.B.のギターからは、時に“鼻にかかったようなトーン”が聴こえてくることがあるが、あれはまさにその機能の賜物なのだ。

フレディ・キング(Photo by David Warner Ellis/Redferns)