田渕ひさ子がPEDROの最新ツアー“PEDRO TOUR 2025 「LITTLE HEAVEN TOUR」”で使用したペダルボードを本人が解説! 田渕ひさ子がPEDROの最新ツアー“PEDRO TOUR 2025 「LITTLE HEAVEN TOUR」”で使用したペダルボードを本人が解説!

田渕ひさ子がPEDROの最新ツアー“PEDRO TOUR 2025 「LITTLE HEAVEN TOUR」”で使用したペダルボードを本人が解説!

元BiSHのアユニ・Dがフロントマンを務めるPEDROが2025年4〜7月に開催した“PEDRO TOUR 2025 「LITTLE HEAVEN TOUR」”。本ツアーにて、田渕ひさ子が使用したペダルボードを本人に解説してもらった。

取材・文=小林弘昂 機材撮影=星野俊

Hisako’s Pedalboard

様々なペダルの組み合わせでダイナミクスを操作

【Pedal List】
①BOSS / TU-3(チューナー)
②BOSS / BD-2W(オーバードライブ)
③TC Electronic / Corona Chorus(コーラス)
④Organic Sounds / Organic Drive “Ares”(オーバードライブ)
⑤Providence / P-4TB(1ループ・スイッチャー)
⑥Handmade / Fuzz
⑦Ibanez / BTMINI(ブースター)
⑧Virtues / Stella(ディストーション)
⑨Shin’s Music / Dumbloid Special(オーバードライブ)
⑩Electro-Harmonix / Micro POG(ピッチ・シフター)
⑪BOSS / RV-6(リバーブ)
⑫BOSS / RV-3(リバーブ)
⑬Organic Sounds / Organic Drive “Hades”(オーバードライブ)
⑭TC Electronic / Flashback(ディレイ)
⑮DigiTech / Polara(リバーブ)
⑯FREE THE TONE / PT-3D(パワー・サプライ)
⑰FREE THE TONE / PT-3D(パワー・サプライ)

PEDRO用のペダルボード。ギターからの接続順は、まず①〜⑤まで番号順につながれている。⑤P-4TBには⑥〜⑫の7台がループされており、⑤P-4TBのアウトから⑬〜⑮を経由してアンプ(マーシャル1959 MKⅡ)に接続。

②BD-2WはCUSTOMモードを選択し、歪みはクランチ程度にセッティング。ライブ中はかけっぱなしにしており、本機でマーシャル1959 MKⅡの大きな音量を下げている。こうすることでヘッドルームが確保でき、後段につないだ歪みペダルをオンにした時に大きい音になってくれるという。NUMBER GIRLはほかのメンバーの出音が大きかったためアンプのボリュームを上げていたそうだが、PEDROではそこまで大きな音にはしておらず、②BD-2Wをオンにしても音量はアンプのクリーンとユニティか、少しだけ小さくなる程度とのこと。

筐体側面にはBOSSの社長・池上嘉宏氏のサインが入れられている。2020年にイベントで共演した際にもらったとのこと。

③Corona Chorusは“普通のコーラス”として使用。PEDROでは「春夏秋冬」、「ぶきっちょ」、「安眠」などでオンにしており、使用頻度が多いそうだ。②BD-2Wを除くほかの歪みペダルの前段に接続されているのは、コーラスのかかりを薄めるためだという。

④Aresはオンにすると少しだけ音量が上がる設定にし、サビなどの歌中でオンに。田渕は“歪ませてないのに、ミュートで刻むと歪んでる感じが出るところが好きなんです”と語る。本器のサウンドはローとハイに寄っているため、ボーカルの帯域を開けることができるとのこと。

⑥は田渕のファンから贈られたというハンドメイドのファズ。PEDROの新曲でベースレスの楽曲があり、ローが出る太い歪みを求めて試験的に本機を導入した。

⑦BTMINIは④Aresの音量を上げるために使用するほか、④Aresと⑪RV-6と同時に踏んでビッグなリバーブ&ディレイを鳴らすことも。

⑧StellaはPEDROではドロップDチューニングの楽曲でシューゲイザーのようなサウンドを出す際にオンにするほか、ギター・ソロでも踏むことがあるとのこと。

⑨Dumbloid SpecialはROCKモードを選択。最も大きい音を出す歪みで、⑩Micro POGもしくは⑪RV-6と同時にオンにする。⑩Micro POGはオクターブでレコーディングしたフレーズをライブで再現するためのもの。

⑪RV-6はリバーブとディレイを同時に鳴らせる+DELAYモードにセッティング。E.LEVELノブが3時手前、TIMEノブが2時方向に設定されており、深めのロング・エフェクトをかけていることがわかる。

⑫RV-3もリバーブとディレイを同時に鳴らせる1番のDELAYモードを選択しているが、すべてのノブが控えめにセッティングされており、こちらは薄めのショート・リバーブ/ディレイとして使用。NUMBER GIRLの「NUM-AMI-DABUTZ」や「TATTOOあり」のリフのサウンドは本機によるものだ。

⑬Hadesは④Aresと色を区別するために薄紫色のテープが貼られている。おもにギター・ソロ用で、④Aresと同時にオンにすることもあるという。

⑭FlashbackはTAPEモードを選択。アルペジオや白玉で浮遊感を出すために使用しており、ギター・ソロではあまり踏まないそうだ。PEDROの楽曲では「生活革命」で使用。

⑮PolaraはHALLモードにセッティングし、ギター・ソロや単音フレーズ、そして⑪RV-6のエフェクトが強いと感じた時にそれを濁すためにオンにするなど、ライブ中は頻繁にオン/オフを操作しているとのこと。

⑧〜⑪の4台は以前ギター・テックが制作してくれたという木製の台に乗せられており、その台の下には⑯⑰PT-3Dが2台セットされていた。

Case

PEDRO用のペダルボードはPULSEのものを使用している。カラーはライムで、アンプ・ヘッドのハードケースもライムで製作。

PULSE

Interview

そこまでゲインを上げていなくても、
ミュートで刻んだ時に歪んでる感が出るんです。

各ペダルの使い方を教えて下さい。BD-2W(②)はオンにしっぱなしで、メインのクランチを作っているんですよね?

かけっぱなしで、オフにすることはほとんどないですね。モードはCUSTOMで、ツヤっとするというか、リッチになるというイメージです。

その次の接続順はCorona Chorus(③)ですが、この位置にコーラスを置いている理由は?

歪みのあとにすると効きすぎるイメージがあるので、ここに入れています。“あ、コーラスだな”みたいに、癖がない感じの設定にしていますね。(笑)。PEDROだと「春夏秋冬」、「ぶきっちょ」、「安眠」とか、あとは新曲でも使っています。

Organic Soundsのオーバードライブが2台(④⑬)用意されています。

Ares(④)がサビとかの歌中で踏む用です。歪んでるけど、ほんの少し音量が上がるくらい。これの好きなところは、そこまでゲインを上げていなくても、ミュートで刻んだ時に歪んでる感が出るところなんですよ。だからノイズが少ないというか。あとはちょっとローとハイ寄りなんです。

ここでミドルから離れているんですね。

そうです。あと、これのLEDを踏むと音が途切れることがあるので、ギターのストラップ・ラバーを貼って踏まないようにしています。

Hades(⑬)には薄紫色のテープが貼られています。

そうなんです(笑)。こっちはAresよりもあとにきたんですね。形は違うんですけど色がまったく同じで、“どっち!?”となることがあったので、色を分けようとなったんです。“何色だったらこのボードが楽しそうに見えるかな?”と考えて、薄紫のテープを貼りました(笑)。ネジとかノブとかを全部はずしてキレイに貼っています。

凄くキレイに貼られていますよね。

凄くキレイに貼りました(笑)。これはギター・ソロとかで踏みます。Aresと一緒に踏むこともありますね。

ハンドメイドのペダル(⑥)についても教えて下さい。

よくライブを観に来てくれる方が趣味でエフェクターを作っていて、ライブに来てくれるたびにくれるんですよ(笑)。これもその方が作ってくれたファズですね。

ライブに新作エフェクターを届けに来てる感じですね(笑)。

そうですね(笑)。これはシルキーな歪みでローも出るんですけど、そこまで極端でもなくて、ゲインを絞っても使い勝手が良いんです。PEDROの新曲でベースレスの曲があるんですよ。ローが出て太い歪みが必要だったんですけど、ボードにはゲインを強く設定している歪みペダルが多いので、新しい歪みを入れないといけなくて。それで“合うかな?”と、これを入れてみました。まだスタジオやライブで合わせていないので、変わる可能性はあるんですけど。

このファズはほかのペダルと組み合わせることは?

ないですね。その曲はBD-2Wとこのファズだけです。

BTMINI(⑦)はどのような使い方を?

歪ませないで音量だけを上げる感じです。あの……めんどくさい話をしていいですか(笑)?

どうぞどうぞ(笑)。

RV-6(⑪)は“デカリバーブ”と呼んでいて、+DELYAモードを深めに設定しているんですね。歪んでいるStella(⑧)かDumbloid(⑨)と一緒にデカリバーブを踏みたい時があるんですよ。Providenceのスイッチャー(⑤)にループしてるから事前に2つをオンにしておいて、スイッチャーを使えば同時オンにもできるんですけど、凄く歪んでるペダルとデカリバーブを同時にオンにした瞬間、“ファ〜ン”から入るんです。わかります!?

わかります(笑)!

ノイズのフィードバックみたいな音から入っちゃうんです。だからAresとBTMINIとデカリバーブという組み合わせで使うようにしているんですね。そしたらデカい音のビッグ・ディレイみたいなのができるというか。

クリーン・ブースターを使うことで余計な歪みをなくせると。

そうです。これはAresの音をデカくする時にも使いますね。

StellaとDumbloidの使い分けは?

音量差ですね。Aresの次にデカいのがStellaで、その次にデカいのがDumbloidなんですよ。Stellaは音がシルキーで、サクサクしていてキレイなんですよね。PEDROにドロップDの曲があって、その曲の“ズオー!”っていうシューゲイザーみたいな時に使います。あとはたまにソロでも踏んでいますね。

Dumbloidはどういう時に使うんですか?

ぶっ太くてデカい音で、Micro POG(⑩)かRV-6のどっちかと一緒に使います。DumbloidとMicro POGだと凄くデカい音になりますね。

Micro POGはDumbloid以外のペダルとも組み合わせますか?

Stellaと一緒に踏む曲もありますね。これはレコーディングでオクターブで弾いたフレーズを再現するために使っています。

“グワーッ”と鳴らす時、
BOSSのデジタル・ディレイが一番派手なんですよ。

RV-6はロング用、RV-3(⑫)はショート用なんですよね?

そうです。RV-6はデカリバーブ用ですね。+DELAYモードをロングで使っていて、オンにすると“ウワンウワンウワンウワン”みたいな感じで、会場内を支配しようとしています(笑)。“グワーッ”と鳴らす時、BOSSのデジタル・ディレイが一番派手なんですよ。リバーブだけ、ディレイだけより、一緒になってるこれがいいなと思って、このモードを使っています。ディレイだけだとなんか違うんですよね。昔はRV-3で同じことをやってたんですけど、オン/オフのタイミングで音が途切れるじゃないですか? RV-6は途切れないんですよ。

RV-3のモードは?

これは1番のDELAYモードで、ショートに設定していますね。NUMBER GIRLの「NUM-AMI-DABUTZ」とかで使ってたやつです。

Flashback(⑭)もディレイですが、どのモードにセッティングしていますか?

TAPEモードで使っています。ちょっとだけモジュレーションっぽいニュアンスが出るんですよ。MODモードもあるんですけど、そっちだと“フワワワワ〜“となりすぎるんですよね。

どういうフレーズでオンにするんですか?

アルペジオとか白玉とか、ちょっとだけ“フワ〜ン”ってする時(笑)。曲で言うと「生活革命」とかで踏んでいます。ちょっとアナログ・ディレイっぽい使い方ですよね。ソロではあんまりかけないです。デジタル・ディレイが合わないバンドってあると思うんですよ。そういう時はアナログ・ディレイを持って行きます。

前段のリバーブと一緒に踏むことも?

あります。デカリバーブの“ターッ・ターッ・ターッ”が強すぎる時にFlashbackを踏むと、“タッタ・タッタ・タッタ・タッタ”くらいになって、ちょっと濁るんですよ。

そしてボードの最後にはPolara(⑮)が置かれています。

普通のリバーブとして使っていますね。そんなに深くもないし、長くもない。色んなモードがありますけど、HALLモードにしています。

ほかのリバーブとは、どういう使い分けを?

RV-3はフレーズを弾く時にオンにするんですけど、Polaraはソロだったり単音だったり、けっこうオン/オフしていますね。あんまり踏みっぱなしにはしないです。

Polaraのリバーブって音が上品ですよね。

はい、上品です。HALLモードとかだと癖がないですよね。あと、ノブに被せるやつがありがたすぎます(笑)!

DigiTechのコンパクト・エフェクターに付属する“STOMPLOCK”ですね(笑)。

“ミュージシャンへのお心遣い、ありがとうございます!”みたいな(笑)。ノブって本当に動いちゃいますから。

パワー・サプライはPT-3D(⑯⑰)を2台使っていますね。

前はEx-proのPS-1を使ってたんですけど、ちょこっと足りなくなってFREE THE TONEのパワー・サプライを2台にしました。ちょうど台の下にキレイに入るんですよ。

この台はひさ子さんが作ったんですか?

ずっと前にローディーの方が作ってくれたものを大事に使っています。足が取れたらアロンアルファで付けたりしながら(笑)。

あれがあるとボードの自由度が全然違いますよね。

奥の段が上がっているほうが踏みやすいですし、下に物を置けるし、配線も通せるし。でも今はスノコ・タイプのボードが主流ですよね。こんなに実機を並べている人も少ないですし、マルチが本当に多い。なんならアンプもない人も多くて、アンシュミを使ってて全員イヤモニみたいな。対バンでそういう人を見ると……化石の気持ちです(笑)。

ひさ子さんはあんまりイヤモニをしていないですよね?

たまーに、数年に1回くらいしか使わないです。ギターの返しの音が気になりすぎるんですよ。良い音じゃないと嫌で(笑)。

あの音だとテンション上がらないですよね(笑)。

そうなんですよ! まったくテンション上がらないというか、“こんな音がみんなに聴こえてるんかい!”と思うと、しょんぼりしてくる(笑)。そのEQを自分でいじれるんだったらいいんですけど。でも、良いイヤホンを使ったらちょっとは改善しましたね。

シールドは何を使っていますか?

パッチ・ケーブルは色々ごちゃ混ぜですけど、ギターからエフェボ、エフェボからアンプのシールドはEx-proですね。青いの(FL)と黄色いの(FA)があって、青いのがギターからボード。黄色くて太いのがボードからアンプです。

黄色いFAのほうが音が太いんですよね。

太いです。全然違いますよ。どっちも太太にすると、“ちょっと太すぎるかな?”という感じです。立ち回るにも重いじゃないですか? だからギター側は細いほうにしています。