アイドルズのギタリスト、リー・キアナン。2026年1月に来日していた彼を直撃し、アイドルズのライブで使用している6本のギターについて話を聞いた。※機材写真と解説は2025年1月の来日公演のものです。
取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モリー 機材撮影=星野俊
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アイドルズのリー・キアナンが2025年1月の来日公演で使用した、7本のギター&ベース
Lee Kiernan’s Guitars
2020 Fender
70th Anniversary Esquire
『TANGK』で大活躍した70周年記念エスクワイア
リーのメインは、フェンダーから提供してもらったという70周年記念モデルのエスクワイア。『TANGK』(2024年)のレコーディングでもメインで活躍したものだ。改造点はなし。ボディはローステッド・パインを採用し、ティム・ショーが独自に開発したピックアップが搭載されている。
エスクワイアはピックアップが1発というシンプルな仕様のため、トラブルのもとをあらかじめ回避するという意味で部品が少ないものを使用しているとのこと。
弦はErnie BallのNot Even Slinky(.012〜.056)を愛用。基本的にレギュラー・チューニングながらも太い弦を張っているのが特徴だ。
2020 Fender
American Professional Ⅱ Telecaster
『CRAWLER』の楽曲を支えるテレキャスター
『CRAWLER』(2021年)の楽曲で頻繁に使用された、American Professional Ⅱシリーズのテレキャスター。フェンダーから提供してもらったもので改造点はなし。本器のみトーン・ノブを操作するため、トーン・ノブの下にゴム製のギター・ストラップ・ピンを挟み、ノブがゆるくならないようにしているという。
ちなみにストラップをガムテープで止めているのはストラップ・ピンが壊れているからではなく、激しいパフォーマンスでもトラブルが起きないようにする、“備えあれば憂いなし”の精神からきているため。ギター・テックは“ネットで「手抜きだ!きちんとネジを締めろ!」という書き込みを見るたびに心が痛む”と話してくれたので、誰かを傷つけるネガティブなことは絶対にSNSに書き込まないようにしよう。
Fender
American Vintage Ⅱ Telecaster Deluxe
「POP POP POP」で真価を発揮
「POP POP POP」の後半で使用されるAmerican Vintage Ⅱシリーズのテレキャスター・デラックス。ほかには「A Gospel」と「Grace」でも使用することがあるという。改造点はなく、オリジナルのまま使用されている。
Fender
Esquire with Baritone Neck
バリトン・スケール・ネックをエスクワイアに搭載
「Roy」でバリトン・ギターが必要になり、もともと所有していたエスクワイアにフェンダーのメキシコ製バリトン・ネックを搭載したもの。チューニングはB-E-A-D-F♯-BもしくはA♯-D♯-G♯-C♯-F-A♯にセッティング。今後はピックアップをCreamery Custom Handwound Pickupsのものに交換する予定とのこと。
2017 Fender
Mustang
リーが最も愛する傷だらけのムスタング
ハードテイル・ブリッジが搭載された、2017年のメキシコ製ムスタング。リーのお気に入りの1本とのこと。
フロント・ピックアップをはずし、リア・ピックアップをCreamery Custom Handwound Pickupsのものに載せ替えている。さらにピックアップ・セレクターとトーン・ノブを取り除き、1ボリュームというシンプルな仕様に変更。それに合わせてピックガードも交換済み。フレットはジャンボ・サイズに打ち替えられている。
一度ヘッドが割れてしまったため、ダボを打って修復。あまりにもボロボロのため、2024年の1年間だけで6回もリペアに出したそう。ボディ裏のステッカーは、なんとライブ中に観客の上をクラウド・サーフした際、下にいた観客に貼られたものだという。
2022 Jackson
American Series Soloist SL3
ダイブ・ボムとタッピングに最適なSoloist
アームでダイブ・ボムを駆使する「Gift House」と「Danny Nedelko」で使用された、Soloist SL3。2曲のレコーディングでも本器を弾いているとのこと。リーは“ずっと欲しかった。今まで触ってきた中で最も弾きやすいギターの1つ”とコメント。
ボディはアルダー、ネックは3Pのメイプル、指板はエボニーという材構成。ピックアップはSeymour DuncanのCustom Flat Strat SSL-6 RWRP(フロント&センター)とJB TB-4(リア)が搭載されている。
本器の弦のみ、“激しいフィンガリングで弾きまくるから”という理由で、Not Even Slinkyよりも細いErnie BallのSkinny Top Heavy Bottom(.010〜.052)を張っている。
Interview
基本的にオレのギターの
約90%はメイプル指板だ。
ライブでのギターはエスクワイア、テレキャスター、ムスタング、Jacksonというラインナップですね。
エスクワイアを使うようになったのは、テレキャスターから余計なものを省いて自分仕様にしていった結果なんだ。リア・ピックアップしか使わないし、トーン・ノブも触らなかったからテレキャスターから全部はずしてみた。アイドルズを始めた頃はテックがいなくて、自分たちで何でもやっていてね。楽器が壊れることも多かったよ。車の運転、物販のセット、サウンドチェック……そんな中でハンダ付けする余裕なんてなかったんだ。余計なものがなければ壊れるものも減る、だから必要最低限にしたんだよ。その後、ちゃんとしたエスクワイアを手に入れて夢中になった。これまでプレイした中で最高のギターの1本だ。
でも、ほかのギターの部品を全部はずしたり、散々シンプル化したあとになって、テレキャスターが必要だって気づいたんだ(笑)。青いテレキャスターは新しい試みでね。届いた時はトーン・ノブが取れていて、ピックアップはフロントになっていたんだけど、そのまま深いリバーブをかけて弾いてみたら、ジョー(タルボット/vo)と“アメイジングだな!”となって、すぐに「When The Lights Come On」を作ったんだ。それ以降も使用していて、例えば「The Beachland Ballroom」でもプレイしている。『CRAWLER』のレコーディングではいろんなトーンが必要だったからけっこう使ったよ。
ムスタングは何度も修理をしているとか。
ムスタングはレコーディングで一番使っているかもしれない。暴力的な音で、全作品のフィードバックの約90%はこのギターだ。ピックアップは壊れかけた感じがしていて、マイクロフォニックで、配線もメチャクチャだけど、そのまま使っている(笑)。
昨年、ジャック・ホワイトがアイドルズと一緒に演奏した時、ジャックがあなたのムスタングを使っていましたよね。
あれは彼のチョイスだね。マーク(ボーウェン/g)がオレたちのギターの中からいくつか提案して、“このギターはかなり薄くてアグレッシブだよ”と伝えたら、“じゃあそれを使おう!”ってジャックが選んだんだ(笑)。
ジャックからの評価はいかがでしたか?
わからないな。彼はたくさんギターをプレイしてきただろうし、あまり特別なことではなかったと思う。でも、オレにとってはすごく意味があったよ。彼がこのギターを弾いているところを見られたのは本当にアメイジングだった。
そしてあなたのギターの中で異質なのがJacksonのSoloistです。
Jacksonを求めたのは、オレは80年代ヘア・メタル・フリークで、メタル全般も大好きだからなんだ。楽しくて、ソロやタッピング、アームを使ったダイブ・ボムもやりたくなる。Jacksonはお気に入りだから今では何本か持っていて、オレのサウンドメイキングに欠かせない存在になっているよ。
あなたもマーク・ボーウェンもバリトン・ギターをよく使用していますが、バンド結成時から使用していたんですか?
ボーウェンのアイディアだね。パリ郊外の“La Frette”というスタジオで『Ultra Mono』(2020)をレコーディングしていた時に古いバリトンのテレキャスターが置いてあって、ボーウェンが気に入ってたくさん使ったんだ。時間が経つにつれて彼はますますバリトンを多用するようになったよ。『CRAWLER』でもバリトンをたくさん使っているし、『TANGK』(2024)でもそうだ。ボーウェンが「Roy」でバリトンのパートを作ったんだけど、ライブではオレがそのパートをバリトンでプレイすることで、彼が“Crawler Machine”で別のことができるようになった。
あのヴァースではバリトンが必要だったから、オレが持っていたエスクワイアのボディを使って改造したんだよね。シンプルなギターだけど、サウンドもすごく良くて、ネックを交換しただけで簡単にバリトンに変更できたんだ。本当に賢い方法だと思うよ。
「POP POP POP」で使用していたテレキャスター・デラックスの詳細を教えてください。
これは最近のギターで、アメリカ製のかなりナイスなものだ。でもアメリカ製かどうかは気にしていない。クリーンなサウンドで上手くプレイしない限り、製造地の差なんてほとんどわからないからね。そういうプレイヤーなら木材とかは多少影響するんだろうけど、ペダルを通すと違いを聴き取ることはほとんど不可能だ。例えば、オレのムスタングはメキシコ製でボディ材が何なのかよくわからないけど、フィードバックには最高で、よく鳴るようにできている。
このテレキャスター・デラックスは美しいサウンドと、ハムバッカーを搭載していることがポイントなんだ。ほかのギターとは違った音で、弾いていて面白いところもあるよ。『TANGK』のレコーディングでも何度か使ったし、ツアーでは予備として持って行った。
あと「POP POP POP」のアウトロは、このギターが唯一バッチリなんだよね。曲中でオレはおもにベースを弾いているんだけど、アウトロではこのテレキャスター・デラックスに持ち替える。どういうわけか、ほかのギターではダメだったんだ。ライブではこの役割だけで使っていて、あとはバックアップとして待機させているよ。
テレキャスター・デラックスのネック・プレートには何が書かれているんですか?
たぶんテックの1人のギャヴィンがメモを書いたんだと思う。ネック・プレートを正しい向きに付ける方法を知らなかったんじゃないかな(笑)? ひょっとしたら逆向きで取り付けられて届いたのかも。理由はわからないけど、いつも“それはおかしいだろ”って笑っていた(笑)。ただの何かのメモだね。
あなたのフェンダー・ギターはすべてメイプル指板ですが、メイプルの明るいサウンドがお気に入りなのでしょうか?
メイプルのクリーンでブライトなサウンドが好きだ。それにしっかりしていてフィーリングも良い。ネックが硬めだし、ルックスも気に入っているよ。基本的にオレのギターの約90%はメイプル指板だ。ほんの数本持っているビンテージやJacksonだけがローズウッド指板だね。
昨年のアイドルズの来日公演でマーク・ボーウェンにインタビューした際、彼はジャック・ホワイト、グレアム・コクソン、アンディ・ギルなどから影響を受けていると語っていました。あなたが影響を受けたギタリストは?
アンディ・ギルからは、かなり影響を受けたよ。ギターのサウンドがどうあるべきかという理解を変えてくれたんだ。ギャング・オブ・フォーに出会う前はブライアン・メイやマーク・ノップラーが一番のヒーローで、プレイ・スタイルもまったく違っていた。ブライアンは音を作り出すことに目的を置いていて、マークはテクニカルな指弾きがもう凄まじかった。
そしてギャング・オブ・フォーに触れて、ギターのアグレッシブさや暴力性がどういうものかを理解したんだ。あのクリーンで突き刺すようなサウンドが、『GENKS』をやった時のオレとボーウェンのインスピレーションの1つだったんだよね。コロナのロックダウン中に演奏方法やペダルの使い方を教える動画をYouTubeでやったんだけど、オレたちはギターのトリックのことを“GENKS”と呼んでいて、そこから名づけたんだ。だからアンディ・ギルは間違いなく大きな影響を与えてくれたよ。
バンドの中で、マーク・ボーウェンとあなたはどのような役割の違いがありますか?
違いがあるとも言えるし、ないとも言えるかな。同じフレーズをプレイすることもあれば、まったく違うことをやることもある。2人でリズムもリードもやるし、同時に別々のリードを弾くこともあるよ。でも、最終的には全部に意味があるね。ジョーやボーウェン、ほかのソングライターがアイディアを持ってくるんだけど、オレの役目はそれを育ててサウンドを作り、テクスチャーを加え、曲にとって必要なものを探すこと。曲やプロセス、目指しているものに達することができるサウンドを見つけたいね。
ボーウェンもオレと同じことをしているから、彼と一緒にやるのが好きなんだ。常に新しいサウンドを探しているし、面白いことにトライしている。ただのギター・ラインを持ってくることはない。フィードバックやディレイが絡んだ何かを持ってきて、オレはそれに“良いね、じゃあオレはこうしてみる!”って反応するんだ。そういうところに興奮しているし、だからアイツとやるのが好きなんだよ。彼の出すサウンドやパートに、オレは否応なしに反応させられてしまうんだ。
アイドルズのサウンド・コンセプトを教えてください。
常に変わっているから、答えるのは難しいな。オレたちはどのレコードでもサウンドを進化させたいと思っているよ。ボーウェンとオレはギターをギターらしくない音にしようとすることもある。やりすぎて、“やっぱりギターらしく聴こえたほうがいいな”と戻ることもあるんだ。これは単なる変化じゃなくて進化だね。常にサウンドを探って成長しているんだよ。
ペダルで何ができるのか、とことん知りたい。ちょっと変で扱いづらいノイズでも、曲の中で良い居場所を持たせたい。単純に自分が気持ちいいと感じる音を出したい時もあるし、逆に最悪の音を出したい時もある。エレクトロニックな曲で、“うわ、気持ち悪い!”と思うサウンドに出会うだろう? ああいうのが好きなんだ(笑)。
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