連載:『Player』盛衰記 第42回|『Player』1977年夏『人気投票』スタート! 連載:『Player』盛衰記 第42回|『Player』1977年夏『人気投票』スタート!

連載:『Player』盛衰記 第42回|『Player』1977年夏『人気投票』スタート!

2023年に惜しまれつつ休刊した音楽雑誌『Player』。楽器を扱う専門誌として『ギター・マガジン』とは良きライバル関係にあっただけに、その不在はやはり寂しい。音楽業界や楽器業界を盛り上げ、読者に大きな影響を与えたその偉大な55年に敬意を表して、元編集長の田中稔氏にその歴史を綴ってもらう。隔週更新。

文=田中 稔

第42回
『Player』1977年夏『人気投票』スタート!

前回は1977年10月号を取り上げて、その編集内容を紹介した。この号のカバー・ストーリーは若き日のジョニー・ウィンターで、白いファイアーバードを手にしたライブ写真がやたらとかっこよかった。今回は、その10月号でも掲載されている『Player 人気投票』について紹介しよう。

1977年夏から、『Player』では読者参加型の大型企画がスタートした。その後、毎年恒例となった「人気投票」である。読者がどんなミュージシャンに興味を持っているのかなど、読者層を把握するアンケートだが、その第1回がこの年からスタートした。10月号では、その中間速報と題して、途中経過を公開している。

単なる読者アンケートだと面白くないので、“イベント的な要素を含んで読者が参加して楽しめる内容にしよう”ということで、この年の春から準備を進めていた。

現代のアンケートであれば、自分の好きなミュージシャンをせいぜい数人挙げる程度だろうが、この人気投票は違う。“海外部門”、“国内部門”に分かれ、さらに各楽器ごとに5部門ずつ、計10部門の投票となる。しかも人気投票と並行して、読者層を把握するアンケートや本誌で取り上げてほしいアーティストや特集記事のリクエストまで、14項目に関して詳しく聞いている。

特に“海外ギタリスト部門”は20人ものプレイヤーを選ばなくてはならない(それ以外の1部門10名)。本誌に付属している投票用紙の両面には、600人ほどのミュージシャンのリストが楽器別に紹介されている。その用紙を本誌から切り離し、アーティスト名にマルを付けて、プレイヤー編集部宛に郵送するという、かなり時間と手間のかかる人気投票だった。

少しでも多くの読者からアンケートが採集できるように、豪華な景品を付けることで投票を促すことになった。近年なら一瞬でソッポを向かれるほどのボリュームだが、当時はインターネットが存在しない時代。封書でアンケート用紙などを郵送することは日常的なことで、さほど面倒には感じられなかった。

改めてアンケートの内容を読み返してみたが、これがなかなか面白い。

  • 現在楽器を持っていますか?(持っている / 持っていない)
  • 1ヵ月のお小遣いはいくらですか?
  • どのようなジャンルの音楽が好きですか?(アメリカン・ロック、ブリティッシュ・ロック、etc)
  • 現在一番気に入っているアルバムは?
  • バンドを組んでいますか?(YES / NO)
  • 練習はどこでしていますか?(自宅/スタジオ/その他)
  • スタジオはどこのスタジオを利用していますか?
  • 現在一番欲しいものは?(楽器/オーディオ/カセットデッキ/カメラ/オートバイ/その他)
  • よく読む音楽雑誌は何ですか?
  • 今月号のプレイヤーで一番面白かった記事は?
  • 一番つまらなかった記事は?
  • プレイヤーの講座は難しいと思いますか?(思う/思わない)
  • どの講座が難しいですか?
  • 今後やって欲しい企画は?(インタビュー/特集/講座/その他)

といった、妙に具体的な内容。

アンケート用紙には、なんと600人ものミュージシャンのリストが掲載されていた。

アンケートを募集しただけではなかなか集まらない可能性も考え、クライアント(神田商会)の協力を仰ぎ、豪華な景品を提供してもらうことにした。第1回の景品は……

  • Greco/MRミック・ラルフス・モデル 1名様
  • Westminster/STモデル 1名様
  • Maxon/D&S 毎月5名様
  • Greco/ギター弦 毎月5名様

この「人気投票」企画は極めて読者ウケが良く、4~5ヵ月間にわたって行なわれた。アンケート用紙の回収は予想を遥かに上回り、毎日郵便受けを開けると、アンケート用紙の入った封筒が雪崩のように落ちてくるほど寄せられた。そしてさらに「人気投票を」盛り上げようと、12月号の採集結果発表の前に、この10月号で中間報告をして、さらに投票を促したというわけだ。

その人気投票中間発表速報を見ると……。

  • 海外ギタリスト部門:ジェフ・ベック(34,973票)、エリック・クラプトン(29,898票)、ジミー・ペイジ(26,325票)etc……
  • 海外キーボーディスト部門:キース・エマーソン(23,823票)、ヤン・ハマー(18,116票)、リック・ウェイクマン(17,174票)etc……
  • 海外ベーシスト部門:ジョン・ポール・ジョーンズ(20,722票)、ポール・マッカートニー(17,791票)、グレック・レイク(15,923票)etc……
  • 国内ギタリスト部門:竹田和夫(24,636票)、竹中チャー(22,760票)、森園勝敏(22,561票)etc……

といった内容で、各10部門が以下100位まで紹介されている。

中間報告といっても、300人を超える投票結果が掲載された。

「Player 人気投票」は予想を大きく上回り本誌の人気企画となり、1977年から40年近く続いた。年を追うごとに景品はさらに豪華になり、20社近いクライアントから様々な景品が提供され、1ページでは掲載しきれず、カラー見開きで景品を紹介するようになった。

そこまでは良かったのだが、その後問題となったのは寄せられたアンケート用紙の整理だった。アンケート内容をどんどん増やしていくのはいいが、それらの回答内容はすべて手作業で整理しなくてはならない。アンケート内容を欲張って増やしていったことで、回答用紙を整理するのにえらく時間がかかるようになった。

それらの作業は外部に依頼したが、毎月送られてくる数万枚のアンケート用紙の整理には、莫大な時間と経費が必要となったことは言うまでもない。

著者プロフィール

田中 稔(たなか・みのる)

1952年、東京生まれ。

1975年秋にプレイヤー・コーポレーション入社。広告営業部、編集部にて『Player』の制作を担当。以来編集長、発行人を経て1997年に代表取締役就任。以降も『Player』の制作、数々の別冊、ムック本を制作。48年間にわたり『Player』関連の仕事に深く関わった。

以後はフリーランスの編集者として活動し、2025年4月、クラプトンに魅せられた10人のE.C.マニアのクラプトン愛を綴った『NO ERIC, NO LIFE. エリックに捧げた僕らの人生.』(リットーミュージック発刊)を制作。2025年9月、電子マガジン「bhodhit magazine(バディットマガジン)」の名誉編集長に就任。

アコースティック・ギターとウクレレの演奏を趣味としている。


Tag:
『Player』盛衰記