今回のテーマは「セカンダリー・ドミナント」です。ギターで弾きやすいコード進行を例にして解説します。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
セカンダリー・ドミナントを含むコード進行
今回のテーマである「セカンダリー・ドミナント」は、曲のコード進行を作る上でとても役立つものです。
まずセカンダリー・ドミナントなるものを含むコード進行を5つ示しましょう。いずれもコード3つからなる短い進行で、キーはCメジャーです。コード名がピンク色になっているA7、B7、C7、D7、E7が、セカンダリー・ドミナントと呼ばれるものです。
- C△7-A7-Dm7
- C△7-B7-Em7
- C△7-C7-F△7
- C△7-D7-G7
- C△7-E7-Am7
指板図も示しますので、ギターで弾いてみて下さい。
以上のコード進行に出てきたセカンダリー・ドミナント・コード(A7、B7、C7、D7、E7)にはいくつかの共通点があります。
共通点その1は、どれもがセブンス・コードであること。これは一目瞭然ですね。
共通点その2は、どれもCメジャーのダイアトニック・コードではないこと。Cメジャーのダイアトニック・コードは、(四和音の場合)C△7、Dm7、Em7、F△7、G7、Am7、Bm7(♭5)ですから、A7、B7、C7、D7、E7はダイアトニック・コードではないわけです。
そして共通点その3は、セカンダリー・ドミナントから次のコードへは、ルートが完全5度下行もしくは完全4度上行で進んでいるということです。
完全5度下行と完全4度上行のギターでのルートの動きはそれぞれ次の図のようになります。上で示したの5つのコード進行の2番目のコードから3番目のコードへのルートの動きは、これらの図のいずれかに当てはまります。
なお、Cのキーの曲にCのダイアトニック・コードではない「異物」を入れてしまって良いのか?と疑問に思う人もいるかもしれません。答えは「異物でも、セカンダリー・ドミナントならまったくOK」です。逆にセカンダリー・ドミナントを入れることで、「グッとくる」コード進行が作れます。
ダイアトニック・コードのみのコード進行と比較する
次に、上に挙げたセカンダリー・ドミナントを含むコード進行を、ダイアトニック・コードのみでできたコード進行と比較してみましょう。
次の5組の枠内にある1.はいずれもダイアトニック・コードだけでできた「異物なし」の進行です。一方の2.はセカンダリー・ドミナントが入った「異物入り」の進行です。
- C△7-Am7-Dm7
- C△7-A7-Dm7
- C△7-Bm7(♭5)-Em7
- C△7-B7-Em7
- C△7-C△7-F△7
- C△7-C7-F△7
- C△7-Dm7-G7
- C△7-D7-G7
- C△7-Em7-Am7
- C△7-E7-Am7
こちらも指板図で示しておきます。Cメジャー・スケールに含まれない音の押弦記号(●)はピンク色にしました。
これら5組のコード進行をひととおり弾いてみて下さい。おそらくダイアトニック・コードだけでできた異物なしのコード進行は、どれもがわりとサラッとした印象だったと思います。
一方、セカンダリー・ドミナントという異物が入ったコード進行は、2個目のコードでやや緊張をはらむ感じになり、その緊張感が3個目のコードで解消される感じになったと思います。これがさきほど言った「グッとくる」感じなんですが……これ伝わるでしょうか?
そしてこの2個目と3個目のコードの間で何が起きているのかというと、それは前回に説明した「ドミナント・モーション」です。
セカンダリー・ドミナントでドミナント・モーションを作る
ところで、Cのキーのダイアトニック・コード内にあるセブンス・コードはG7だけです。よって作れるドミナント・モーションも少ないです。
G7で作れるドミナント・モーションの例
- G7-C、G7-C△7
しかし、コード進行の中にセカンダリー・ドミナントという「異物」を混入することにより、他の箇所でもドミナント・モーションを発生させることができます。これによりコード進行に起伏や推進力を加えることができるわけです。
セカンダリー・ドミナントを加えると作れるドミナント・モーションの例
- A7-Dm、A7-Dm7
- B7-Em、B7-Em7
- C7-F、C7-F△7
- D7-G、D7-G7
- E7-Am、E7-Am7
ダイアトニック・コードの一部をセカンダリー・ドミナントのセブンス・コードに差し替える、というイメージ
上で紹介した5組のコード進行を、もう少し分析的に見てみましょう。
これら5組のコード進行のうち、セカンダリー・ドミナントを使用したコード進行は、ダイアトニック・コードのみでできたコード進行の2つ目のコードだけを差し替えたものでした。また、その2つ目のコードはいずれもダイアトニック・コードと同じルートを持つセブンス・コードになっています。
C△7-Am7-Dm7とC△7-A7-Dm7の例を図にすると次のとおりです。
その他の4組のコード進行も同様です(図内での説明は省きます)。
このように、ダイアトニック・コードの一部をセカンダリー・ドミナントのセブンス・コードに差し替える、というイメージを持っていると、自分でコード進行を作る時などに役立ちます。
ダイアトニック・コード同士の間にセカンダリー・ドミナントを挿入する、というイメージ
また、これらのコード進行を「ダイアトニック・コード同士の間にセカンダリー・ドミナントとなるセブンス・コードを挿入したもの」というイメージでとらえることもできます。
例えばC△7-A7-Dm7というコード進行は、C△7とDm7(どちらもダイアトニック・コード)の間にA7(セカンダリー・ドミナント)を挿入したもの、とみなすことができるわけです。またなぜA7を挿入するのか?というと、それはドミナント・モーションを発生させるためです。それを図示したのが次の図です。
他のコード進行も同様です。
言葉を少し変えると、これらはダイアトニック・コードであるDm7、Em7、F△7、G7、Am7を「ターゲット」と見なし、それらの手前にドミナント・モーションを起こすためのセカンダリー・ドミナント・コード(ターゲットに対して完全4度下=完全5度上)を挿入したものと言えます。
こうしたイメージも、自分でコード進行を作る時に役立つはずです。たとえばダイアトニック・コードの羅列だけで作られたコード進行に少しスパイスを加えるために、セカンダリー・ドミナントを短い音価で挿入する、といった使い方などが考えられます。
また、コード進行を作っている時にセカンダリー・ドミナントを入れたはいいものの、「次にどのコードを持ってくればドミナント・モーションになるんだっけ?」とド忘れした時は、次の表を見て下さい。例えばセカンダリー・ドミナントがA7なら、次のコードをDmかDm7にすればドミナント・モーションが発生します。
セカンダリー・ドミナント | セカンダリー・ドミナントから進む先のコード (=完全5度下または完全4度上のダイアトニック・コード) |
---|---|
A7 | → Dm、Dm7 |
B7 | → Em、Em7 |
C7 | → F、F△7 |
D7 | → G、G7 |
E7 | → Am、Am7 |
*G7からCやC△7に進む進行もドミナント・モーションですが、G7は“セカンダリー”ではないドミナント・コードなので、この表には含めていません。
*実際の楽曲では、セカンダリー・ドミナントやその次のコードが、この表にはないテンション・コードやその他のコードだったりすることもあります。
*Cメジャー・キーにおけるA7-D7などのように、セカンダリー・ドミナント(A7)の次がまたもやセカンダリー・ドミナント(D7)になったコード進行もあります。
§
今回はセカンダリー・ドミナントについてごく簡単に説明しました。より深いことを知りたい方は音楽理論書をひもといてみて下さい。本講座の今回の内容を読んだあとなら、わりと簡単に理解できるかと思います。
また今回の内容が腑に落ちなくても、ギタリストならば、上に書かれたコード進行を何度も弾き、手クセとして覚えてしまう(ギタリストはこれが得意!)のが良いと思います。セカンダリー・ドミナントを使ったコード進行が、すぐに作れるようになるはずです。
ところで本講座もそろそろ終わりに近づいてきました。最終回まであと3回です。今しばらくおつきあい下さい。
本講座の関連コンテンツ
指板図くんのギターコードブック
コード名を選ぶと指板図が表示されて、音も鳴らせる便利なWEBアプリ。弦を押さえる指の指定やコードの構成音も表示されるので、初心者には特にお薦めです。チューニング・モードもあり!
https://guitarmagazine.jp/guitarchordbook/
*本アプリはスマートフォン、タブレット、パソコン全対応です。
作ろう! マイコードブック
自分独自の指板図やコードチャートを自由に作れる多機能なWEBアプリ。音声機能、自動演奏機能、印刷機能、画像化機能も備え、ギター・コードの学習から、作曲、DTMまで、幅広い用途で役立ちます。
https://guitarmagazine.jp/mychordbook/
*本アプリはパソコン推奨です。
初心者だって大丈夫! コードが自分で作れちゃう! 指板図くんのギター・コード講座
本講座を書籍化した本です。オールカラーで144ページ。電子書籍もあります。
【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
◎続・フレット数の書かれていないコード・ブック
◎コード・フォームを自分で作る
◎続・コード・フォームを自分で作る
◎自分独自のコード・フォームを作る
◇巻末スペシャル:Fコードの押さえ方と攻略法
◇付録:いろいろ確認できる4つの指板図!