今回は、メジャーとマイナーのトライアドの色々な押さえ方を“フォームの平行移動”によって見つける方法を紹介します。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
前回は、ロー・コードのEmのフォームをそのままの形で指板上を1フレットずつ平行移動させていくことにより、コード名がFm、 F♯m(=G♭m)、Gm、G♯m(=A♭m)、Am、A♯m(=B♭m)、Bm、Cm、C♯m(=D♭m)、Dm、D♯m(=E♭m)、そして再びEmへと変化していくことを説明しました。そして、平行移動によって変化するのはルートだけであり、コードのタイプは変わらない、ということも説明しました。この「法則」は、どんなコードにも共通することです。
そこで今回は、メジャー・トライアドとマイナー・トライアドの色々な押さえ方を、それぞれのフォームの平行移動で見つける方法を紹介します。
メジャー・トライアドの5つのフォームと、マイナー・トライアドの3つのフォーム
ギターを始めて最初の頃に覚えるコードは、やはり次のようなロー・コードでしょう。上の図がメジャー・トライアド、下がマイナー・トライアドです。
そして次の図は、上の2つの図から「フォーム」のみを取り出したものです。あるいは、ロー・コードの指板図からポジション(フレット数)という属性を取り去り、押弦記号の位置関係だけを抽出したもの、と言えばよいでしょうか。メジャー・トライアドのフォームが5つ、マイナー・トライアドのフォームが3つ、となっています。
図の中に書いたとおり、ロー・コードのCが元になっているフォームは「Cフォーム」、同じくDが元になっているフォームは「Dフォーム」、Eが元になっているフォームは「Eフォーム」〜と呼ばれます。
なお、ここでは押弦記号同士を星座の図のように線でつないでいますが、これは「これらのフォームを指板上のどのポジションに移動させても、押弦記号同士の位置関係は変わらない」ということを強調する意味で描いたものです。一般的な表記法ではありません。
また、それぞれのフォームにおいて「ルート(◎印)が何弦にあるか」を必ず覚えるようにして下さい。次の3つの図は、上記の8つのフォームを、ルートがある弦によって分類したものです。
さて、これらの「フォーム名」が、一体どういう場面で使われるのかというと、例えば次の図のとおりです。これはAのメジャー・トライアドを5通りのフォームで押さえたものです。Aコードにも、ポジションの低い方から、AフォームのA、GフォームのA、EフォームのA、DフォームのA、CフォームのA、があるわけです。
6・5・4弦上の音の配置
メジャー・トライアドの5つのフォーム、マイナー・トライアドの3つのフォーム、そしてそれらのルートが何弦にあるかを覚えたら、次に必要なのが、ギターの指板上のどこにどの音があるかを知ることです。
特にコードを覚える際には、次の図のピンク色の字で示した6弦、5弦、4弦での各音の位置を覚えることが重要になります。
*この図をすぐに丸暗記するのは難しいと思いますので、本講座の第4回「Cメジャー・スケールを覚えよう」の中の「1本の弦だけでCメジャー・スケールを弾く練習」をやりながら、ゆっくり確実に覚えていって下さい。
ハイ・コードのポジションをフォームの平行移動で見つける
以上で説明したことをすべて覚えたら、もうメジャー・トライアドとマイナー・トライアドに関しては、どの音がルートであっても、そのフォームとポジションがすぐにわかるようになります。
例えばあなたが、ロー・コードのDは知っているけれども、ハイ・コードのDはまだ知らないとしましょう。その場合も、ロー・コードのCやAやGやEのフォームを、ルートがDになるところまで平行移動させることによって、ハイ・コードのDのポジションを見つけ出すことができます。次の4つの図のとおりです。
※実際に使用頻度が高いのは、EフォームとAフォームでしょう。GフォームやCフォームは指を大きく開く必要があるので、初心者には難しく、使用頻度も高くありません。
さらにロー・コードのDよりも1オクターブ高いDコードのポジションも見つかります。ここまで高い位置でコードを押さえることは実際には少ないと思いますが、一応知っておきましょう。
ハイ・コードのポジションを即座に見つける
また慣れてくれば、わざわざフォームをロー・コードから平行移動させていく必要もなくなります。
例えばあなたが、Gmの押さえ方をまだ知らないとしましょう。それでも、G(ソ)の音が6弦3フレット、5弦10フレット、4弦5フレットにあることは知っていたとします。
この場合は、マイナー・トライアドの3つのフォームのルートを、G音のある位置に当てはめることにより、Gmのハイ・コードの押さえ方がすぐさま見つかります。次の図のとおりです。
8つのフォーム×12個のルートで、96ものコードがあなたのものに!
今日紹介したメジャー・トライアドとマイナー・トライアドの計8つのフォームに、ルートとなり得る12個の音を掛け合わせれば、合計で96個になります。こんな簡単な方法で、たくさんのコードの押さえ方がすぐに覚えられるわけですね。
そして、四和音やテンション・コードも同じ要領で把握できるようになれば、あなたの知っているコードの数は、すぐ1,000を超えるはずです。
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ところで昔も今も、「ギター・コードの数が多すぎて、自分にはとても覚えられない」と思う人が初心者には多いようです。それはたとえば、AmとDmとEmを、まったく別のものとしてとらえているからでしょう。たしかに最初の頃に覚えるのはロー・コードだけでしょうし、それぞれのロー・コードの押さえ方はAmとDmとEmとでまったく違うのですから、無理もありません。
しかしそうした時期はすぐに過ぎ、「AmもDmもEmもフォームは同じでポジションが違うだけ」という認識に変わるはずです。そしてそこから先はもう急速に、コードに対する苦手意識はなくなっていくのではないかと思います。
次回のタイトルは「フレット数の書かれていないコードブック」です。前回と今回で覚えたことに、次回で示すコードの指板図一覧表を組み合わせれば、もうどんなコードも色んなフォームで押さえられるようになります。
本講座の関連コンテンツ
指板図くんのギターコードブック
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【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
◎続・フレット数の書かれていないコード・ブック
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