東京を中心に活動するギターポップ・バンド、THE TREES。ザ・スミスやテレビジョン、USインディーやネオアコなどの音楽にルーツを持つ彼らが、デビュー・アルバム『Reading Flowers』をリリースした。きらびやかで美しいギター・サウンドが全編を覆う本作だが、プロデューサーに菅原慎一(vo,g /菅原慎一BAND、ex.シャムキャッツ)を迎え、サウンドメイクからアレンジまでガッツリと関わってもらったという。一体、どんなこだわりがあったのか? メンバーの有馬嵩将(vo,g)&荏原優太郎(g,cho)に加え、菅原を交えた3人に話を聞いた。
取材・文=辻昌志 撮影=小原啓樹
“イントロ・ドン”ができるように、リフにはこだわりました。
──有馬嵩将
THE TREES、ギター・マガジン初登場ですね。まずは2人それぞれ、ギターを始めたタイミングを教えてもらえますか?
有馬嵩将 もともとは高校生の時、BUMP OF CHICKENのコピーをやるためにベースを始めたんです。ギターにガッツリと転向したのは、THE TREESを組んでからですね。
THE TREESの音楽性につながるような音楽で、当時聴いていたものは?
有馬 テレヴィジョンは大きいと思います。トム・ヴァーレインとリチャード・ロイドとのギター・アンサンブルが好きなんですよね。あとはフェルト(80年代のネオ・アコースティック・バンド)、最近のバンドだとリアル・エステートとか。
ギタリストで影響が大きいのは?
有馬 ザ・バーズのロジャー・マッギンの影響は大きいと思いますね。ロジャーの12弦ギターのサウンドが好きで。その影響もあって、今作でも12弦ギターは多用してます。
荏原さんはどうでしょうか?
荏原優太郎 僕も最初はベースから始めて、THE TREESでギターに転向したんです。
2人ともベーシスト出身なんですね。どういう音楽を聴いてきたんですか?
荏原 中学生の時はL’Arc-en-Cielで、高校に上がってザ・スミスやザ・キュアーを聴くようになりました。スミスを聴いた時、“ギターがめっちゃキラキラしてる”って驚いて(笑)。
(笑)。そういう80年代のきらびやかな音は、THE TREESのサウンドにもつながっている気がします。荏原さんは好きなギタリストをあげるとしたら?
荏原 やっぱりスミスのジョニー・マーですね。ジョニー・マーが”ギターの弾くべきことは決まってる”、“曲への当て方がちゃんとある”、みたいなことを言ってるんですけど、すごく共感できたんです。あとは有馬も上げた、フェルトのモーリス・ディーバンク(4th『カスピの詩人』まで在籍)。それからワイルド・ナッシングっていうバンドにサポートで入ってたニック・ヘスラーもいますね。この3人はギターが1人で目立つっていうよりは、“曲に対して良いアプローチの仕方を探している”っていう面に影響を受けてます。あと、やっぱり菅原さんにもめっちゃ影響を受けてます。
菅原さんは今作のプロデューサーとして参加していますよね。その経緯は何だったんでしょうか?
有馬 もともと、メンバー全員がシャムキャッツのファンだったんです。菅原さんとはシャムキャッツがやっていたポップアップ・ストアで知り合って……。
菅原慎一 それは覚えてない(笑)。一番古い記憶は、千葉ルックでツアーのライブをした時に、楽屋まで目を輝かせて来てくれて話したことですね。
有馬 そうでしたか(笑)。そのライブのあと、僕らはEPを作って自主企画をやったんですが、菅原さんにDJとして出てもらったんですよ。その時に親交が深まって。
なるほど。仲も深まったこともあり、今作のプロデューサーをお願いすることになったと。
有馬 そうですね。それまで僕たちは自主制作のみでやっていたし、アルバムを作ったことがなかったんです。バンド4人の中の感性でしか作れていなかったというか。だから外部からの視点で、僕らの良さが何かを客観的に見てもらいたかったんです。それで一番好きだったかつ、僕らの音楽性的にも一番良いアプローチをしてくれる、と思ったのが菅原さんだったのでお声がけしました。
菅原さんはオファーがあった時、どう思いましたか?
菅原 まずDJとして彼らの自主企画に出た時は、まだTHE TREESの魅力をそこまで知らなかったんです。その日のライブは下北のベースメントバーで、良いバンドがいっぱい出てたんですけど……それを観ているのが本当に楽しくて。というのも、僕たちが昔に出ていたようなライブハウスで若いバンドを観る機会って、どんどん減っていたこともあったんですね。その日は“最高、めっちゃいい!”ってずっと言ってて、最後にTHE TREESが出てきたんですが、それが一番良かったんですよ。
荏原 そうだったんですか(笑)。
有馬 ありがとうございます。
菅原 で、その時から、このバンドに対して自分ができることをできたらいいな、と実は思ってたんです。