Interview|ナイア・イズミ『A Residency in The Los Angeles Area』での独創的アレンジ Interview|ナイア・イズミ『A Residency in The Los Angeles Area』での独創的アレンジ

Interview|ナイア・イズミ
『A Residency in The Los Angeles Area』での独創的アレンジ

これらの曲がライブでプレイできるのか不安だよ(笑)。

あなたはライブだとルーパーを使った1人バンド・スタイルでの演奏もしていますが、今作はバンド・セットでサウンド・プロダクションとしても緻密に組み立てられています。アレンジの際はどの程度ライブでの演奏を考えているんですか?

 そこはトニーといつも言い合いになるね(笑)。スタジオ録音でのアレンジはライブのことはほとんど考えていなくて、僕自身たくさんの音を使おうとしちゃうから、いざライブとなるとどうやって再現していいのかわからないことがほとんどだよ。それに動き回るパートを入れ過ぎちゃうから、ほかのプレイヤーも必要となってしまうんだ。

 結局ライブ・アレンジはある程度のところで落ち着くけど、今回のアルバムの曲もいくつかはサンプラーを使わないとプレイできないだろうね。本当にこれらの曲がライブでプレイできるのか不安だよ(笑)。

来日時とNAMMショウのフェンダー・ブースであなたの演奏を観ているのですが、「Natural Disaster」など、ライブで弾きながら歌っているのは驚きです。歌とも全然リズムが違うギター・プレイですが、どのように考えながら弾いているんですか?

 ドラムを叩く時はハイハットを刻みながらそれと異なるビートでスネアを叩くよね? ゴーストノートを混ぜたりもしてさ。すべての音が異なったタイミングでプレイされていて、それらが一致する時もあれば少しずつ前後している時もある。そういった感覚があるね。

 僕はBPM=20くらいの超ゆっくりなテンポから練習するし、歌とギターをそれぞれのトラックだけで聴いて実際に両者をプレイする状況を想像してみるんだ。そうやって少しずつ構築すると、いつの間にか同時にプレイできるようになるよ。

あと、歌いながら弾くギタリストだとロー・コードが多めになりがちですが、「Voodoo」や「Be Still」などハイ・コードを使ったプレイが多いですよね。それに6thや9thなどのテンション・コードなども多用していますが、コード・ボイシングのこだわりやポイントなどがあれば教えて下さい。

 ユニークなボイシングに聴こえるのは、メロディ、ベースライン、それらの間に埋めている音の総合的な響きだよね。僕は9thと11thを頻繁に使っていて、逆に7thはあまり使わないかな。13thやsus4も使っていて……ある意味ほぼ全部使っているのかもしれないや(笑)。でもそういったコード的なことは考えてなくて、やっぱり常にあるのはメロディだ。結果的にそういった音使いをしているという感じかな。

コードを弾く際はアーミングでトレモロのような効果を出しています。この微妙なニュアンスのつけ方はアジアや中近東のフレットレスな楽器からの影響でしょうか?

 それは確実にあるだろうね。フレットとフレットの間に存在する音にはソウルをもたらしてくれる特別なものがある。中近東の音楽って、必ずしも正確なピッチじゃなくてもハッと思わされるものがあるんだ。変な音かもしれないけど、人の声のビブラートに近いものがあって、しゃくり上げるようなボーカル・テクニックにも通ずるものがある。これはアジアや中近東の楽器だけに限らず、これらの地域の歌唱方法にも感じるものがあるんだ。僕はそれをコードで再現するというアイディアが好きで、多くの人が単音で音を揺らすけど、僕はそれをコードでやりたいと思っている。

クールなサウンドになるまでひたすら実験したよ。

あなたのタッピングはシーケンス的なアプローチですが、よく使うポジションはありますか?

 ポジションはあまり意識してはいないかな。「Soft Spoken」を例に取ると、基本的にAマイナーに7thと11thを加えてプレイしていて、これって基本的に指板上でバレーして同じフレットで全部弾いているだけなんだ。で、あまり考えずに各音をリズミカルかつランダムにプレイしていて、クールなサウンドになるまでひたすら実験したよ。時にはBOSSのレコーダーをオンにして何も考えずにひたすらプレイし、飽きたら別の用事をしてから聴き返してみると“なんだこれ?”となってそこから発展することもあるね。

その「Soft Spoken」のソロは、音響的な表現ながらエモーショナルでとてもカッコ良いです。ギター・ソロはどのようにアプローチしていますか? 

 僕はいつもその場でソロをひたすら弾いていて、この曲ではさらに足下のペダルを気の赴くままに踏んでいた。リバース・ディレイと何かしらを組み合わせてプレイしたものがクールだったから、あとになってそれをペダルなしで再現してみたんだ。ボリュームの操作と組み合わせてかなりそれっぽく聴こえているよ。

 こういうのをやるとトニーは必ず興奮してくれて、それは聴こえが良いからじゃなくてフィーリングがあるからなんだ。コードの中で音を正しく使えているかなんて関係なくて、とにかくやってみるっていうのも悪くないってことだね(笑)。これは僕が路上でプレイしてきた体験で感じたことと通じるものがある。多くの人は細かいところまでこだわって聴いていないから、無茶苦茶なプレイでも、それを何か意図的にプレイしているように見せることでクールなものになり得るんだよ。

ソロは「Natural Disaster」にもあります。こちらはアームとボリュームを使ってスライドのような独特なアプローチです。操作のタイミングや可変の幅などはありますか?

 あまり考えたことはなく、常に実験している感じかな。ボリュームの操作はほかのスキルと組み合わせることが多くて、メジャー・スケールのモードでウォームアップする時なんかによくやるね。ベーシストみたいに指板上を激しくポジション・チェンジしながらだったり、ピッキングしながら操作することもある。

 そういったウォームアップでは、アームを操作しながらスケールの音をグチャグチャに混ぜることもあって、インプロヴァイズする時に無意識に操作できるように、体の準備をしているようなところもあるよ。ちなみに最近は、フラメンコみたいに右手のすべての指を使ったピッキングを練習することもあるけど、僕は爪を伸ばしていないから変なサウンドになっているね(笑)。