岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第5回はR&Bやフュージョンなどのフィールドでも活躍するマイケル・グレゴリー・ジャクソンの初リーダー作をご紹介しよう。フリー・ジャズの手法を土台にしながらも、叙情的なメロディ・メイクなどは耳馴染みも良いだろう。
文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸
今回紹介する作品は……
『Clarity』
マイケル・グレゴリー・ジャクソン
Bija Records/MJ-1000/1977年リリース
―Track List―
01. Clarity
02. A View Of This Life
03. Oliver Lake
04. Prelueoionti
05. Ballad
06. A♭ B♭ 1-7 3°
07. Iomi
ポピュラリティが垣間見える
フリー・ジャズ・ギター。
1970年代半ばからワダダ・レオ・スミスやデビッド・マーレイらロフト・ジャズ界隈に出入りしフリー・ジャズを演奏していた異色のギタリスト、マイケル・グレゴリー・ジャクソンの初リーダー作。
耽美なテーマをユニゾンでダイナミックに演奏するという伝統的なスピリチュアル・ジャズの様式も、3管+ギターという、ベース、ドラムのダイナミクスを抜いた大胆な編成によって、本作を浮遊感と静けさの中に力強さを兼ね備えた特異な作品に仕立て上げている。
本作で聴けるマイケルの演奏は、伝統的なフリー・ジャズの手法が基盤にはあるものの、耽美なメロディ・プレイやソウルフルなカッティングなどには、のちにポップスやフュージョン的なサウンドへと舵きりしていくのも頷けるような人懐っこさが垣間見える。アコースティック・ギター1本で奏でられる「Prelueoionti」や、スピリチュアルなアンサンブルをバックに囁くように歌われる「Clarity」は、彼のそうしたポップな面が色濃く反映されているように思う。
途中エレキ・ギターに持ち替える「A♭ B♭ 1-7 3°」はボリューム奏法を用いたデレク・ベイリー的なプレイも聴かせているものの、その発音はやはりどこかポップな親しみやすさを感じさせる。
著者プロフィール
岡田拓郎
おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。