マイケル・ブルック『Hybrid』岡田拓郎の“Radical Guitarist”第18回 マイケル・ブルック『Hybrid』岡田拓郎の“Radical Guitarist”第18回

マイケル・ブルック『Hybrid』
岡田拓郎の“Radical Guitarist”第18回

岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第18回は映画音楽の世界でも名を馳せる、カナダ出身のマイケル・ブルックが、ブライアン・イーノとダニエル・ラノワとともに作った『Hybrid』をご紹介しよう。一聴してシンセだと感じる部分もギターでの演奏だったりするので、細かなニュアンスも聴き逃さぬように!

文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸

今回紹介する作品は……

『Hybrid』
マイケル・ブルック with ブライアン・イーノ&ダニエル・ラノワ

Editions EG/EGED 41/1985年リリース

―Track List―

01.Hybrid
02. Distant Village
03. Mimosa
04. Pond Life
05. Ocean Motion
06. Midday
07. Earth Floor
08.Vacant

注意深く聴いてほしい、
ユニークな空間的アプローチ。

近年では劇伴作家として、映画『ブルックリン』や『イントゥ・ザ・ワイルド』など多くの映画音楽を手がけるカナダ・トロント出身のギタリスト、マイケル・ブルック。本作は、ブライアン・イーノのアンビエント・シリーズ、そして自身も参加しているジョン・ハッセル作品の“第四世界”の世界観に通じるアンビエント作品だ。U2『The Unforgettable Fire』プロデュース後で飛ぶ鳥を落とす勢いだった、イーノ&ダニエル・ラノワがバックアップした。

一聴するとギター的な要素はアルバム全編で印象に残らないかもしれないが、実は要所要所でユニークな空間的アプローチを聴かせている。ジョン・ハッセルのハーモニック・トランペットをギター・シンセ(E-Bowにも聴こえる)に置き換えた「Hybrid」は、鍵盤シンセの音色のようにも聴こえるが、細かなビブラート感やベンドのエキゾチックなフィーリングは非常に弦楽器的で面白い。「Distant Village」ではシンセ・パッドを立体的に滲ませるような役割で、ペダル・スティールがレイヤーされている。

そのほかの楽曲でもアトモスフィックなシンセ・パッド的サウンドを多く聴かせているが、“シンセサイザー”とクレジット明記されているのは意外と少なく、多くはギターによるアプローチと思われる。盤には曲ごとの演奏クレジットが記載されているので、ぜひ情報を照らし合わせながら聴いてみてほしい。

著者プロフィール

岡田拓郎

おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。

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