60年代ブルースの名盤を紹介する本連載。第2回目の今回は、エルモア・ジェイムス、アール・フッカー、スリーピー・ジョン・エスティス、アルバート・コリンズ、バディ・ガイらが1960年代前半から中盤にかけてリリースまたは録音したアルバムを紹介します。
文・選盤=小出斉
Howlin’ Wolf
『Howlin’ Wolf』
●リリース:1962年
●ギタリスト:ヒューバート・サムリン
名脇役、ヒューバート・サムリンを聴け!
チェスからの2枚目で、通称“ロッキン・チェア・アルバム”。数曲50年代の録音も入っているが、主に60、61年の録音で「スプーンフル」、「ユール・ビー・マイン」、「ザ・レッド・ルースター」など、ウルフの代表曲となる名演名唱がずらりと並ぶ。相棒ヒューバート・サムリンのキレキレでユニークなギターも絶頂へと向かう。
Elmore James
『The Sky Is Crying』
●リリース:1965年
●ギタリスト:エルモア・ジェイムス
デレク・トラックスにも受け継がれる魂
有名なタイトル曲など数曲は59年11月の録音だが、主に60〜61年のファイア録音。テデスキ・トラックス・バンドらにも受け継がれた「ローリン・アンド・タンブリン」や、ジミ・ヘンドリックスもカバーした「ブリーディング・ハート」など、「ダスト・マイ・ブルーム」パターン以外の曲でも、スライド・ギターがたっぷり。
Earl Hooker
『Blue Guitar : The Chief / Age / USA Sessions 1960-63』
●リリース:2001年
●ギタリスト:アール・フッカー
シカゴのミュージシャンズ・ミュージシャン
60年代シカゴのNo.1ミュージシャンズ・ミュージシャン、ワイルドな職人肌ギタリスト、アール・フッカーの、自身のインスト及びほかのシンガーのバックをつけた60~63年の録音集。ため息もののスライド・ナンバー「ブルー・ギター」、ドライブ感満点の「ユニバーサル・ロック」などの名演の数々、ギタリストなら必聴です。
Sleepy John Estes
『The Legend Of Sleepy John Estes』
●リリース:1963年
●ギタリスト:スリーピー・ジョン・エスティス
再発見されたカントリー・ブルースマン
戦前にメンフィス近辺で活躍したカントリー・ブルースマン、スリーピー・ジョン。時代の潮流から取り残され、引退状態の極貧生活に。そんな折、62年の“再発見”後、録音されたのが本作。戦前のスタイルに輪をかけた悲痛な歌いぶりから、“涙なくして聴けない”と宣伝され、70年代日本のブルース・ブームの火付け役ともなった。
Bobby Blue Bland
『Call On Me / That’s The Way Love Is』
●リリース:1963年
●ギタリスト:ウェイン・ベネット
歌手としての真価を発揮
アルバム・タイトルは、63年のシングル両面ヒット曲。ポップなR&B調で、これはこれでいいが、「ザ・フィーリング・イズ・ゴーン」、「ホンキー・トンク」、「ウィッシング・ウェル」といった曲で、ブルース歌手としての真価を発揮。アレサ・フランクリンがカバーするバラード「シェア・ユア・ラヴ・ウィズ・ミー」のオリジナルも。
Memphis Slim
『Memphis Slim En Public』
●リリース:1963年
●ギタリスト:マット・マーフィー
ギターでマット・マーフィーも参加
メンフィス・スリムは、40~50年代にシカゴ、セントルイスなどで活動していたピアニストだが、60年代に入ってすぐフランスに移住。本作は50年代にスリムのギタリストとして多くの名作に参加した、マット・マーフィーを招いての、フランスのクラブでのライブ。デュオ・スタイルでも縦横無尽に弾きまくるマーフィーが最高だ。
Little Johnny Taylor
『Little Johnny Taylor』
●リリース:1963年
●ギタリスト:アーサー・ライト、他
アーサー・ライトらが参加
激辛なゴスペル唱法を全面的に展開した63年の「パート・タイム・ラヴ」は、モダン・ブルースの新たな形を提示したマイルストーン的ヒット。ギターは、同曲のアレンジなどもこなした、西海岸の職人肌ギタリストのアーサー・ライトなど。この時代の68年頃までの録音は英エイスでまとめてCD化されている(『Galaxy Years』)。
Albert Collins
『The Cool Sound Of Albert Collins』
●リリース:1965年
●ギタリスト:アルバート・コリンズ
エグくて熱い攻撃的なギター
クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンなどの影響下、テキサス産アグレッシブ・ギター・スタイルを極めたコリンズ。その初期録音集たる本盤は1曲を除いてすべてインスト。テキサス・シャッフルからラテンものまで、曲調は色々だが、「フロスティ」など“クール”なタイトルの曲で、最高にエグく熱い攻撃的なギターを展開する。
Sonny Boy Williamson
『More Real Folk Blues』
●リリース:1966年
●ギタリスト:バディ・ガイ、マット・マーフィー
バディ・ガイやマット・マーフィー参加
40~50年代にラジオを通じて南部で絶大な人気を持ったサニー・ボーイ・ウィリアムスン。55年にチェス入りし、タイトなシカゴ産サウンドに乗って名作を多数残す。本作は60~64年の録音で、スタンダード化した「ヘルプ・ミー」など、モダンさを増した音に生ハープをぶつける。ギターはバディ・ガイやマット・マーフィーなど。
Buddy Guy
『I Was Walking Through The Woods』
●リリース:1970年
●ギタリスト:バディ・ガイ
B.B.のスタイルをエキセントリックに
2枚のSPを残したアーティスティックが倒産した後、60~67年をチェスで過ごしたバディ・ガイ。70年に編集された本作は、60~64年の10曲をまとめたもの。本人的には満足いかぬ時代だったようだが、「ストーン・クレイジー」始め、B.B.キング・スタイルをエキセントリックに発展させた自身のブルースが、花開いていた。
*本記事はギター・マガジン2021年10月号にも掲載しています。
『ギター・マガジン2021年10月号』
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