ギタリストなら絶対に聴くべき60年代ブルースの名盤40(3/4) ギタリストなら絶対に聴くべき60年代ブルースの名盤40(3/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき60年代ブルースの名盤40(3/4)

60年代ブルースの名盤を紹介する本連載。第3回目の今回は、B.B.キングの歴史的名盤『Live At The Regal』から、60年代に“再発見”された伝説的デルタ・ブルースマンの作品、当時のシカゴ・ブルースの“若手”たちのプレイが聴けるオムニバス・アルバムまで、幅広く紹介します。

文・選盤=小出斉

B.B.King
『The Jungle』

●リリース:1967年
●ギタリスト:B.B.キング

ヘヴィ級モダン・ブルース

50年代にアーバン・ブルースの王者となりながら、ロックンロールの荒波にもまれたB.B.キング。しかし、その間にしっかり力を蓄えて、60年代にさらに飛躍した。本盤は60年代前半にケント・レーベルに残したシングル集で、「ファイヴ・ロング・イヤーズ」ほか、ヘヴィ級モダン・ブルースが炸裂。ジャケ写のハンモック男は別人。

B.B. King
『Live At The Regal』

●リリース:1965年
●ギタリスト:B.B.キング

王者を知るにはこれ!

1964年11月、シカゴのリーガル劇場でのライブ盤。エリック・クラプトンも名盤として挙げ、多くのギタリストに影響を与えた、という点でもまさに歴史的名盤。時に甘く、時に激しく歌うB.B.キングのスクィーズ・ギターの凄さを知るには、これ以上の盤はなし。バックも歌も最高なら、スロー・ブルースでの女性客の反応も最高!

Son House
『Father Of Folk Blues』

●リリース:1965年
●ギタリスト:サン・ハウス

伝説的デルタ・ブルースマン

64年に“再発見”された、伝説的デルタ・ブルースマン、サン・ハウスの65年のアルバム。腹の底から搾り出す歌、叩きつけるようなスライド・ギター。戦前録音ほどの迫力はないものの、ロバート・ジョンスンやマディ・ウォーターズに決定的な影響を与えた、本当の本物の魅力満載。代表作「デス・レター・ブルース」収録。

Junior Wells
『Hoodoo Man Blues』

●リリース:1965年
●ギタリスト:バディ・ガイ

バディ・ガイの変態的バッキングが冴える!

10代にしてリトル・ウォルターの後釜としてマディ・ウォーターズのバンドにも参加、ソロ・キャリアも積んできたジュニアの初アルバム。バディ・ガイ(録音当初は変名で参加)の特異なギター・バッキングも得て、ロウダウン極まりないスロー・ブルースから、ファンキーにはっちゃける曲まで、その個性を完全に発揮している。

V.A.
『Chicago / The Blues / Today!』

●リリース:1966年
●ギタリスト:オーティス・ラッシュ、バディ・ガイ、ジェイムズ・マディスン、J.B.ハットー、ジョニー・ヤング、ジョニー・シャインズ、他

未来の大物が集ったオムニバス

30代になりたてのジュニア・ウェルズ、オーティス・ラッシュ、ジェイムズ・コットンら、若手、中堅どころを中心に、シカゴの現在進行形ブルースに目を向けさせた、LP全3巻の画期的企画(現在は3枚組CDに)。特に「アイ・キャント・クィット・ユー・ベイビー」の新版を歌うラッシュは、録音に恵まれてなかっただけに貴重。

J.B. Lenoir
『Vietnam Blues』

●リリース:1995年
●ギタリスト:J.B.ルノア

時代を映し出す無二の存在感

65、66年録音の『Alabama Blues』(CBS)と『Crusade』(Polydor/発表は70年)の2枚をまとめたCD。50年代はバンドでユニークなロッキン・ブルースを聴かせたが、ここでは生ギター+ドラムで、ある種アフロ的な感覚もあるまったく独自なスタイルで、人種差別や戦争問題などを積極的に歌い、時代を映し出す唯一無二の存在に。

Koko Taylor
『Koko Taylor』

●リリース:1969年
●ギタリスト:バディ・ガイ、マット・マーフィー

シカゴのブルース・クィーン

後にはシカゴ・ブルース界きってのブルース・クィーンが、まだ“ウィリー・ディクスンの秘蔵っ子”だった65~69年の録音。時にソウル風味もまぶしたモダン・シカゴ・スタイルだが、歌いぶりはストレートにブルースを“イキむ”力技。65年の「ワン・ダン・ドゥードゥル」は、チェスの最後のブルース・ヒットと呼ばれる。

Slim Harpo
『Baby, Scratch My Back』

●リリース:1966年
●ギタリスト:ジェイムズ・ジョンスン、ルドルフ・リチャード、アル・フォアマン

ルイジアナ産ゆるファンキー

ハーポといえば、ゆるゆるのルイジアナ・ブルースを代表する1人だが、R&B1位のタイトル曲は緩くもファンキーなダンス曲で、オーティス・レディングもカバー。ほかに、ストーンズもカバーした「シェイク・ユア・ヒップス」、代表的なバラード「レイニン・イン・マイ・ハート」など、ルイジアナならではの味わいを存分に。

Frank Frost
『Frank Frost』

●リリース:1966年
●ギタリスト:フランク・フロスト

最高のサザン・ビート

ミシシッピを根城にしていたハーピスト、フランク・フロストの66年作。本作のハープは、主に隠れた名手アーサー・ウィリアムスが担当しているが、ミッド・テンポのシャッフルやブギ、スリム・ハーポのヒットを真似たイナタくファンキーな「マイ・バック・スクラッチャー」まで、最高のサザン・ビートが味わえる1枚だ。

Lowell Fulson
『Tramp』

●リリース:1967年
●ギタリスト:ローウェル・フルスン、アーサー・アダムス、他

元祖ファンク・ブルース

B.B.キングにも影響を与えた西海岸の重鎮、ローウェル・フルスンが、若い奴らに負けられぬとばかりに録音した、元祖ファンク・ブルース=「トランプ」。60年代ブルースの重要ヒットであり(66年R&B5位)、数十年後にはヒップホップにも流用されることに。よりディープなブルースが楽しみたければ、65年の『ソウル』を。

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*本記事はギター・マガジン2021年10月号にも掲載しています。

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