東北ライブハウス大作戦第2回 大船渡KESEN ROCK FREAKS編 東北ライブハウス大作戦第2回 大船渡KESEN ROCK FREAKS編

東北ライブハウス大作戦
第2回 大船渡KESEN ROCK FREAKS編

2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災。これを受け、被災地復興の足がかりとなる“人と人とのつながり”の場として、宮古COUNTER ACTION、大船渡FREAKS、石巻BLUE RESISTANCEという3つのライブハウスがオープンした。この試みが“東北ライブハウス大作戦”である。そして2020年現在、コロナ禍によりライブハウスは窮地に立たされている。人々に元気を与えるために発足したこのプロジェクトも、例外ではない。心が締め付けられるこの状況に、少しでも力になれればと、2018年にギター・マガジン本誌に掲載した短期集中連載『東北ライブハウス大作戦-Fromギタマガ情報局-』を再度お届けしたい。第2回は大船渡KESEN ROCK FREAKS。

文:千葉裕昭(KESEN ROCK FREAKS/東北ライブハウス大作戦大船渡支部長)


▲2017年4月にオープンした“KESEN ROCK FREAKS”。

地元を愛する仲間たちと全国の音楽ファンのチカラ

2017年4月、震災後に整備された“キャッセン大船渡”という商業エリアに、大船渡KESEN ROCK FREAKSはオープンしました。しかし、“FREAKS”という名前がたどる物語は、とあるロック・フェスティバルから始まります。

私たちが住む岩手県気仙地方で、2009年から開催しているKESEN ROCK FESTIVAL(以下KRF)。その第3回目の開催を考えていた矢先に、2011年3月11日を迎え、私たちの街は被災しました。

あの震災の直後、KRFを通じて交流があったライブPAチーム=SPCから、イベント実行委員会へ“大船渡にライブハウスを建設したい”という連絡をいただきました。もちろん実行委員会の中にも被災したメンバーは大勢いましたが、私たちはこの街のためになると思い、ライブハウスの建設を決めたのです。それが、“東北ライブハウス大作戦大船渡支部”の始まりでした。

このライブハウスの建設にあたり、震災以前よりともにフェスを作り上げてきた仲間たちの支えがありました。

震災直後、ライブハウスへ使えそうな建物が見つからない中、津波被害を受けた物件を“仲間”に紹介してもらい、みんなの手で、酒場だったその建物を“ライブハウス”へ改装することに決めました。ほかにも、内装業や電気工事業、建設業などさまざまな技術を持つ仲間たち、ライブハウスを作りたいという一心で集まってくれた地域の人々、全国各地のみなさまよりいただいた人的/物的/精神的なご支援とご協力。このような大勢の方々との“つながり”を得て、まだ満潮時にはライブハウスまわりが浸水してしまい、ライフラインも十全ではない中、その名を“LIVE HOUSE FREAKS(写真①)”として産声を上げました。

2012年8月18日ーー震災から1年5ヵ月が経っていました。

①2011年の震災から約1年5ヶ月後、津波被害を受けた酒場を改装し、オープンしたLIVE HOUSE FREAKS。津波が到達しない高さへ土地の埋め立てを行なう“かさ上げ工事”の対象となり、2014年末に移転が決定した。

他方、KRFも、震災の影響から2011年の開催は中止していました。

しかし、このフェスの開催を支えたいと東京で始まったKESEN ROCK TOKYOというイベントや、全国の皆さまの支えのおかげで、2012年に無事KFRを再開することができました。ちなみに、この年だけ特別にメイン級のステージをふたつ設けています。これは、開催することができなかった“2011年のステージ”という意味が込められたものでした。

二度の移転を経てついに大船渡の音楽発信基地が完成!

オープンから約2年、LIVE HOUSE FREAKSは2014年末に移転することが決定します。建物のある場所が“かさ上げ工事”の対象地域となっていたことが移転の理由でした。

次に移転先として決まったのは、被災した商店が集まった“大船渡夢商店街(写真②)”という仮設商店街。この2015年3月〜2016年10月までの仮設店舗での公演は、防音の問題もあり、アコースティック編成のものが多くなりました。移転前のような爆音は聴けなくなりましたが、この商店街でFREAKSをオープンできたのは、一緒に復興へ向けて歩んでいる地域の皆さまの一員として認めてもらうきっかけだったと感じます。

地域の皆さまに認められてこそ、我々は“この地域の”ライブハウスとなることができたのです。

②LIVE HOUSE FREAKSの移転先として決まった、おおふなと夢商店街。復興商店街の中にライブができる場所があるというのは、音楽が持つ“人を勇気づける力”が求められたようにも感じられる。

そして2017年4月、FREAKSは再スタートを切りました。大船渡市が第三セクターと共同で行なった、JR大船渡駅周辺の津波復興拠点整備事業で整備された商業エリア“キャッセン大船渡”という街の一角に、“本設”の店舗を構えることができたのです。

新しいお店の名前は”KESEN ROCK FREAKS”。

この名には、この地域で開催されるロック・フェス=KESEN ROCK FESTIVALとFREAKSというライブハウスが、いわば家族のような存在であり続けたいという意味が込められています。

現在、震災から7年が経ち、大船渡に新しい街ができました。そしてそこには震災後にできたライブハウスがある。それはきっと、大船渡という街にFREAKSが受け入れられたということであり、我々が地域の復興とともに歩みを進めてくることができた何よりの証拠だと思います。

そして、我々を応援してくれるミュージシャンの方との出会いも多くあります。みなさんの普段よりのお心遣いには本当に感謝しています。

また、特に私たちの励みになっているのは、ZALUSOVAやFUNNY THINKといった、“FREAKSがあったからバンドを始めた”と言ってくれる地元バンドが、高校を卒業して大船渡を離れた今でも活動を続けていてくれることです。その2バンドは、ついに2017年のKRFに出演を果たしてくれました。

しかし、まだまだFREAKSには地元出演者が多いとは言えない状況にあることも確かです。ライブの本数も、震災当時と比べると極端に少なくなっています。

私たちはKRFが、音楽を通じた“つながりの場”としてあることを願っていますので、大船渡の、気仙の、岩手の、東北の、そして全国の音楽ファンやアーティストのみなさま! ぜひKESEN ROCK FREAKSに遊びに、ライブをしに来て下さい! 

スタッフ一同、心よりみなさまのご来店をお待ちしております!

ギタリストよ、東北へ行こう!

2011年3月11日に起こった東日本大震災から約7年、完全なる復興への道のりはまだまだ遠い。じゃあ具体的に何をすればいいのか? 我々ギタリストができることとして本誌がオススメしたいのが、この“東北ライブハウス大作戦”への参加である。人が来れば地域が潤い、音楽を通じて仲間が増える――音楽好きとしてこのような場があることはうれしいことではないだろうか。好きなアーティストのライブを観に行くもよし、自分でイベントやライブを企画するもよし。さまざまな形の復興への協力が、音楽を通じてできるはずだ。“東北ライブハウス大作戦”および各拠点の公式HPをチェックして、ぜひ実際に足を運んでみてほしい。

KESEN ROCK FREAKS

〒022-0002 岩手県大船渡市大船渡町字茶屋前3-2-2410
☎0192-47-5009
アクセス:JR大船渡線大船渡駅から徒歩約4分
HP:http://go-freaks.com

*本記事はギター・マガジン2018年4月号にも掲載されています。

本号の特集は「ジミヘンという宇宙。」─いざ、旅立とう。すべてのギター弾きが旅をする、ジミヘンという名の宇宙へ。