文:中島康晴(ギター・マガジン編集部)
今回は3位の発表です。
【3位 – 表紙登場回数:15回】
キース・リチャーズ
ジェフ・ベック
3位にランクインしたのは、登場回数が15回のキース・リチャーズとジェフ・ベックです。
ロック史上最高のリズム・ギタリストと呼ばれるキース・リチャーズと、革新的なアイディアとテクニックでギター・ソロの可能性を大きく広げてきたジェフ・ベック。ロック・ギターの両極ともいえるふたりの組み合わせとなりました。
ちなみにアメリカの音楽誌『Rolling Stone』の「100 Greatest Guitarists」でも、キース・リチャーズは4位、ジェフ・ベックは5位という僅差です。
また生年月日はキースが1943年12月18日で、ジェフが1944年6月24日。イギリスは新学期が秋からでしょうから、ふたりはきっと同学年。ジミー・ペイジ(1944年1月9日生まれ)も同学年なので、つい「お前らの代、すごすぎ!!」と言いたくなります。
キース・リチャーズ
キースの表紙はロン・ウッドとともに写った1981年12月号が最初でしたが、この号にはインタビュー記事はありません。次にローリング・ストーンズが表紙になった1988年12月号に、キースの初ソロ・アルバム『トーク・イズ・チープ』をテーマとしたインタビューが載りました。
このインタビューの発言の中に、ストーンズにおけるふたりのギターのコンビネーション、ひいてはリズム・ギターに対するキースの思想がよくわかる部分があったので引用します。
──あなたのアルバムではいつも、2本のギターのアタックをひとつのフレーズ構成に織り込んで攻めてきますね。相手がブライアン・ジョーンズ、ミック・テイラー、ロン・ウッド、誰であっても。
キース うん、昔からやってきた。“4本の手にひとつのギター”というアプローチだ。俺がギターのレコード、特に昔のR&Bで誰がどこをプレイしているかなんてどうでもいいところまできてるようなレコードが好きなのはそこなんだ。問題はスピーカーから出てくる音がどうなるかだけ。俺がいつもレコードを作る上で気に入ってるのもそれでね。そういうレコードを作りたいってこと。そうするのが一番楽しいし、おそらく俺の最も得意とするところだろう。たまに曲を書き、ギターを弾いてはいる。でも俺の一番の実力は、スタジオでレコード作りの時発揮されるんだ。
またキースの功績のひとつに、ロック・ギターに変則チューニングを取り入れ、それを広めたことが挙げられると思います。中でもトレードマークとなっているのが、6弦をはずしたオープンGチューニング(5弦→1弦:G D G B D)ですね。
もし興味があったら以下に並んだ表紙画像に写っているキースのギターを拡大してみてください。1990年3月号、1993年12月号、1994年11月号、2014年3月号、2016年1月号で見られるテレキャスターには6弦が張られていません。2006年7月号で抱えているゼマイティスのギターはもともと弦が5本のモデルです。
*他のギタリストのギターも見たい方は、ギター・マガジン40年分の全表紙を掲載したhttps://guitarmagazine.jp/40th/ をごらんください。
ジェフ・ベック
1970年代後半のジェフ・ベックは、『ギター殺人者の凱旋(ブロウ・バイ・ブロウ)』(1975年)、『ワイアード』(1976年)、『ライヴ・ワイアー』(1977年)というインスト・アルバムを立て続けにリリースし、ギターという楽器の可能性を大きく拡げました。その次のアルバムである『ゼア・アンド・バック』(1980年)についてのインタビューを、ジェフが表紙となった1981年1月号(創刊第2号)に掲載しました。
そのインタビューから、ギターに対するジェフの決意が感じられる部分を引用します。
──フィード・バックやファズの使い方など、いろんな意味で、君はロック・ギターのパイオニアとされてきたし、サイドマンにスポットが当たるようになったのも、君以来のことだと言える。君のことを、最初のロック・ギター・ヒーロー、と言う人すらいるんだ。それについて、自分ではどの程度真実だと思う? どの程度貢献してきたと思う?
ジェフ さあ? (長い沈黙)難しいな。僕に言えるのは、ヤードバーズの頃エレクトリック・ギターにいろんな自由を持ち込んだんじゃないか、っていうことだけだ。精神異常者ふうの僕を見て、「あれが音楽? でもチャンスだな。もう何をやっても、恥にならないみたいだ」ってみんな思ったんじゃないかな。
(中略)
──エリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、そして君……。1つのバンドにギタリストが3人もいて、その3人ともが、未だにインパクトを保ってるなんて、すごいよねぇ。
ジェフ 僕以外の2人はね。ただ僕も、頑固に自分を通してきたとは思ってる。
──ギターの可能性を広げたという意味では、君の貢献度はたいへんなものだし……。
ジェフ それが僕の仕事だし、それこそ僕がやろうとしていることだ。
*上記の「1つのバンド」とはヤードバーズのこと。
キース・リチャーズとジェフ・ベックとでは、ギターに対するそもそもの考え方がまるで違うわけですね。
なおこの文を書くにあたり、表紙でジェフが持っているギターを改めてひととおり見てみました。「哀しみの恋人達」で使った“テレギブ”(セイモア・ダンカンがジェフ・ベックのために作った有名な改造テレキャスター。ピックアップはハムバッカー)を表紙にしたことはあっただろうか?などと思いつつ。
……ま、“テレギブ”はなかったのですが、その代わりに1985年9月号のジャクソンのピンク色のギターに目が止まりました。ボディに“TINA TURNER”の文字が粗く刻まれたギターです。これを入れたのはティナ・ターナー本人だそうですが、ジェフ・ベックのギターにこんなことができるのは世界でもティナ姐さんくらいでしょう(笑)。
1999年6月号の表紙は、『ギター殺人者の凱旋』(LP)の付録のポスターと同じ写真です。その付録のポスターの裏には「スキャッターブレイン」と「哀しみの恋人達」のギター譜が載っていました。レコードの付録にギター譜が付いているなんて珍しかったので、ご記憶の方も多いのでは?
以上、3位の発表でした! 次回は2位を発表します。公開は2020年12月4日(金)の予定です。