ギタリストなら絶対に聴くべき戦前ブルースの名盤40(4/4) ギタリストなら絶対に聴くべき戦前ブルースの名盤40(4/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
戦前ブルースの名盤40(4/4)

なぜ“ギタリストなら絶対に聴くべき”なのか? それは戦前ブルースがギター・テクニックの宝庫でもあるからです。スライド、ピッキング、チューニングなど、ギタリストごとに異なる多種多様な技を研究して自分のプレイに取り入れれば、新たな世界が必ず開けるはず!・・・では「戦前ブルースの名盤40」の最終回をお届けします。

文・選盤=小出斉 協力=七年書店

メンフィス・ミニー
『Hoodoo Lady』

●ギタリスト:メンフィス・ミニー

No.1ダウンホーム系ブルース・ウーマン

ダウンホーム系のブルース・ウーマンとしては、戦前/戦後を通じてナンバー・ワンだったメンフィス・ミニー。その戦前録音でも最初はカントリー・ブルース寄りだったが、本盤はシカゴに出てきてより成熟した33~38年の20曲を収録。歌ももちろんだが、南部で鍛えた力強いリズムに支えられたギターの腕前は、まさに男勝り。

ロニー・ジョンソン
『Steppin’ On The Blues』

●ギタリスト:ロニー・ジョンソン

ブルースとジャズを跨いだ偉人

戦前のブルース・ギタリストで、いち早くメロディックな単弦ソロを極めたロニー・ジョンソン。ブルースとジャズを跨いだ偉大なギタリストだった。初録音は25年と早く、戦前だけでもソロ名義で200曲以上録音し、伴奏者としても活躍した。タイトル曲などの比類なきスウィング感、流れるようなフィンガリングは戦前随一。

ロニー・ジョンソン
『Hot Fingers』

●ギタリスト:ロニー・ジョンソン、エディ・ラング

エディ・ラングとのデュオが超絶

タイトル曲など冒頭2曲は、白人のジャズ・ギターのパイオニア、エディ・ラングとの超絶ギター・デュエット。ほかにもデューク・エリントンやルイ・アームストロングとの共演など、ギター名演はいくらでも。一方でロバート・ジョンソンにも影響を与えた、メランコリックなシティ・ブルースマンとしての姿も聴き逃せない。

タンパ・レッド
『The Guitar Wizard』

●ギタリスト:タンパ・レッド

ニュアンスに富んだ、歌うスライド

1920年代末から50年代初頭までシカゴで活動し、戦前だけでも200曲以上を録音した人気者タンパ・レッド。本作は主に32、34年のピアノとのデュオと弾き語りが中心で、タイトルどおり、ギタリストの腕に焦点を当てたもの。「Denver Blues」など、ニュアンスに富んだ、歌うようなスライド・リック、素晴らしいのひと言だ。

タンパ・レッド
『Slide Guitar Classics』

●ギタリスト:タンパ・レッド

名ソングライターとしても魅力的

28~46年の録音から満遍なく選曲。初録音曲「Through Train Blues」からして、チューバをベースにスライドでソロを弾きまくる、時代を先取りしたものだった。一方、名ソングライターでもあり、「It Hurts Me Too」、「Black Angel Blues」などスタンダード化した曲も多数。前半はギターの、後半は曲作りの魅力が詰まったCD。

ビッグ・ビル・ブルーンジー
『Father Of The Chicago Blues Guitar』

●ギタリスト:ビッグ・ビル・ブルーンジー

シティ・ブルースの立役者

50年代にいち早く渡欧し、イギリスのミュージシャンにも多大な影響を与えたビッグ・ビル。20年代にシカゴに移り、30~40年代のシティ・ブルースの立役者として膨大な録音を残した。戦前の自己名義録音14曲に他シンガーのバックをつけた6曲、エリック・クラプトンもカバーした51年の「Hey Hey」のおまけつき。

ケイシー・ビル・ウェルドン
『Slide Guitar Swing』

●ギタリスト:ケイシー・ビル

ハワイアン・ギターの魔術師

メンフィスで活動し35~38年に60曲以上の録音を残したケイシー・ビルは、SP盤のレーベルに“ハワイアン・ギター・ウィザード”と記されたものもあるように、ラップ・スタイルのスティール・ギタリスト。「Guitar Swing」など、魔術師の名に恥じないスウィングぶり。38年の最後のセッションではエレキのパン・スティール!

ココモ・アーノルド
『The Complete Recorded works In Chronological Order Vol.1』

●ギタリスト:ココモ・アーノルド

豪放磊落な都会派

30年代にシカゴで活動。左利き(だったらしい)のスライド・ギタリストで、曲の途中で突然倍テンポにするなど、実に豪放磊落な魅力。都会派ではあるが、絞り出すような歌も野卑な魅力一杯。「Sweet Home Chicago」の原型「Old Original Kokomo Blues」、「Milk Cow Blues」など、ロバート・ジョンソンにも直接影響を与えている。

サニー・ボーイ・ウィリアムスン
『Blue Bird Blues』

●ギタリスト:ビッグ・ジョー・ウィリアムス、ロバート・リー・マッコイ、他

ブルース・ハーモニカの改革者

ブルース・ハーモニカの改革者、サニー・ボーイ・ウィリアムスンⅠ世のベスト盤。有名な「Good Morning School Girl」、「Sugar Mama Blues」などスタンダード化し、歌い継がれた曲多し。楽器演奏の中心はハーモニカだが、ダウンホームなものから、スウィング感溢れるシティ・スタイルまで、各ギタリストとの絡みの違いも楽しい。

トミー・マクレナン
『The Bluebird Recordings 1939-1942』

●ギタリスト:トミー・マクレナン

粗野なワイルドさがほとばしる

1930年代末~40年代にシカゴで活躍した、ミシシッピ出身のブルースマン。唾が飛び散りそうな歌、細かいことはお構いなく、徹底して強いアタックでリズムを弾き放つギターは、“ニガー”という忌み言葉を平気で使っていたという粗野な性格丸出し。「Bottle It Up And Go」などスタンダード化した曲も多い。全録音の42曲収録。

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*本記事はギター・マガジン2021年3月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年3月号』
特集:ギター・ヒーローが愛した、アコースティックの世界。

クラプトン、デュアン、フルシアンテ。キースにピートにジョン・メイヤー。Jマスキスにガルシアにハウ。コイツら全員、アコギもヤバい!!!