ギタリストなら絶対に聴くべきクロスオーバー・スラッシュの名盤40(4/4) ギタリストなら絶対に聴くべきクロスオーバー・スラッシュの名盤40(4/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき
クロスオーバー・スラッシュの名盤40(4/4)

最終回ではカナダ、イギリス、ブラジル、ドイツのバンドの1980年代の作品から、2010年代以降にリリースされたアルバムまで幅広く紹介します。

選盤・文=川嶋未来

V.A.
『Skate Rock Volume 3 – Wild Riders Of Boards』

●リリース:1985年
●ギタリスト:Woody Weatherma、James Yauk、他

スケーター雑誌の企画コンピ・アルバム

スケート誌スラッシャー・マガジンが出していたスケート・ロックのコンピ第3弾。C.O.C.、The Accüsed、Gang Green、Septic Death、Beyond Possessionと、シリーズ中で最もゴージャスなメンバーが揃っているのがこれ。87年には何と日本盤LP(しかも変型ジャケ!)もリリースされた。そのくらいクロスオーバー(というかスケート・ロック)は人気があったのだ。

Beyond Possession
『Is Beyond Possession』

●リリース:1986年
●ギタリスト:James Yauk

カート・コバーンもファンだった?

カナダのクロスオーバー。フル・アルバムを1枚だけ残して消えてしまった、謎多きバンド。“ファストなメタルよりさらにファスト”なんていうキャッチフレーズのとおり、とにかく速い。そして“憑依の向こう側”というバンド名のとおり、ホラー・パンク的要素も持ち合わせていた。Metallicaやカート・コバーンもこのバンドのファンだったなんていう話も。

Sacrilege
『Behind the Realms of Madness』

●リリース:1985年
●ギタリスト:Damian Thompson

クラストとスラッシュの融合

DischargeやCrassなどの流れを組むハードコア・パンクからスタートし、VenomやSlayerからの影響を取り込んでいったSacrilegeの1st。まさにクラストとスラッシュの融合。ボーカルは女性。2nd『Within the Prophecy』(87年)ではさらにスラッシュ色を強めるも、続く『Turn Back Trilobite』(89年)では何とドゥーム・メタル化。英デス・メタルへの影響は絶大。

English Dogs
『Where Legend Began』

●リリース:1986年
●ギタリスト:『Where Legend Began』

ハードコア版メタリカ

一気にスラッシュ色を強めた3rdアルバム。ハードコア・パンク・バンドがMetallicaに挑戦したとでも言えばいいのだろうか。ハードコアの風味と、弾きまくりのギターのミスマッチがケミストリーを起こしている奇跡。86年のイギリスでしか生まれ得なかった名作だ。現在2つのバンドに分裂し、どちらもEnglish Dogsを名乗っているのがややこしい。

Ratos de Porão
『Brasil』

●リリース:1989年
●ギタリスト:Jão

セパルトゥラのお気に入り

ブラジルを代表するクロスオーバー・バンド。もともとはイギリスやスカンジナヴィアのハードコアから影響を受けたスタイルだったが、84年に一旦解散。翌年クロスオーバー・バンドとして復活を果たす。Sepulturaの人気でブラジルに注目が集まった80年代後半、そのSepulturaが彼らの大ファンであり、ロードランナーとの契約を取り持ったと言われている。

Inferno
『Tod und Wahnsinn』

●リリース:1984年
●ギタリスト:Archi

S.O.D.のお気に入り

ドイツのハードコア・パンク・バンドによる83年の作品。クロスオーバーというよりも純粋なジャーマン・ハードコアであるが、スコット・イアンがフェイバリットに挙げ、S.O.D.が本作収録の「Ram It Up」をカバーしたことでメタル・サイドからも注目が集まった。“オXXコにぶち込んどけ、バカ女め”という酷すぎる歌詞の曲なのだが。

Power Trip
『Manifest Decimation』

●リリース:2013年
●ギタリスト:Blake Ibanez(lead)、 Nick Stewart(rhythm)

メタル界最重要バンドの1つ

Power Tripがクロスオーバーどころかメタルの枠すらも超えた大きな存在になりつつあったことは、昨年ライリー・ゲイル(vo)が急逝した際、フォックス・ニュースが哀悼の意を表明したことからもうかがえる。もともとはNYハードコアから影響を受けたバンドとして始まり、演奏力が上がるにつれ、徐々にスラッシュ色を強めていった。ライリーが遺した作品はすべて必聴。

Municipal Waste
『Hazardous Mutation』

●リリース:2005年
●ギタリスト:Ryan Waste

80sが現代に蘇る

このアルバムを初めて聴いた時は、心底びっくりした。05年のリリースにもかかわらず、そのサウンドはD.R.I.あたりの80年代クロスオーバーそのものだったからだ。リバイバル系のバンドというのは、どうしてもあざとさを伴うもの。だが彼らにはそれが皆無。本当に80年代からタイムマシンに乗ってやってきたのかと思うほど、当時のサウンドそのまま。

Iron Reagan
『The Tyranny of Will』

●リリース:2014年
●ギタリスト:Landphil Hall、Mark Bronzino

ミュニシパルの兄弟バンド

Municipal WasteとDarkest HourのメンバーによるプロジェクトだったIron Reaganだが、この2ndがビルボード22位にチャートインし大ブレイク。80年代のパンク・バンドが目の敵にしていたレーガンをバンド名に使うあたりからして当時の匂いがプンプン。ボーカルが同じのため、聴覚的にもMunicipal Wasteに近いが、彼らは自らをメタル・パンクだととらえている。

Red Death
『Sickness Divine』

●リリース:2019年
●ギタリスト:Ace Mendoza、Will Wagstaff

Power Tripに愛されたバンド

共にツアーをしたり、デモを広める手伝いをしたりと、Power Tripから大きな寵愛を受けていたワシントンD.C.のRed Death。19年にはドイツの大手センチュリー・メディアと契約して、この3rdをリリースするなど、ホープとして大きな期待がかかっていたが、残念ながら20年に解散。ライリーの死、Red Deathの解散と、最近のクロスオーバー界は災難続きだ。

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*本記事はギター・マガジン2021年4月号にも掲載しています。

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