go!go!vanillas 『PANDORA』 go!go!vanillas 『PANDORA』

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『PANDORA』

文=尾藤雅哉

コロナ禍に生み落とされた
希望を鳴らすロックンロール

コロナ禍に生み落とされた1年10ヵ月ぶりとなるニュー・アルバム『PANDORA』。メイン・ソングライターの牧達弥(vo、g)が“生活に根ざしている音楽をイメージしていた”と語る1枚で、“すでに歌詞がついた状態でデモを制作していた”ということからも表現したいことのディティールはハッキリしていたのだろう。ロック・バンドとしてネクスト・ステージに突入した力強いアンサンブルが鳴り響く快作に仕上がっている。

バンドの歴史においてひとつの大きなターニング・ポイントになったのが、昨年11月に行なった武道館公演だ。ライブを成功させたことで生まれた“より大きな会場で自分たちの音楽を響かせたい”という新たな指標が作品制作にも反映されており、シンガロングで観客と一体になれる普遍的なメロディを軸にした珠玉のポップ・ソングから、緩急のダイナミズムを巧みに操り会場をダンスフロア化させるグルーヴィな楽曲、90年代UKサウンドのようなサイケデリックな退廃さを内包した壮大なロック・ナンバーまで、魅力溢れる楽曲が収録されている。

歌詞の世界観を彩るギター・ワークも聴きどころだ。柳沢進太郎(g)が“曲が呼んでいるフレーズを自然と過不足なく弾けた”と語る「アダムとイブ」では、少ない音数ながらメロディに寄り添い展開していく機能美を追求したプレイが印象的。続く「鏡」では、新たに手に入れた1964年製のSG Jr.(ポラリス・ホワイトのレア・カラー!)を手にパワフルなリフ・ワークで楽曲を見事にドライブさせている。ボーカル以上に“歌いまくる”ギターを見事に織り込んで成立させたアレンジ・センスが光る「クライベイビー」や、生々しいピッキング・ニュアンスを残しながら疾走していく「アメイジンググレース」の流麗なソロ、「手紙」や「馬の骨」で聴ける繊細な歌声を支え輝かせるアコースティック・ギターのアプローチなど、楽曲を輝かせるプレイで表情豊かなアンサンブルを創り出している。

未知なるウィルスにより乱暴に書き換えられてしまった鬱屈した日々において、彼らが響かせるロックンロールは、パンドラの箱に唯一残された希望のように聴き手の気持ちに寄り添い、時には力強く背中を押してくれることだろう。そして何より更なる高みを目指して進化の歩みを止めない彼らが、これから先の未来にどのような熱狂を巻き起こしていくのか今から楽しみでならない。

作品データ

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『PANDORA』

ビクター/Getting Better Records/VICL-65477/2021年3月24日リリース

―Track List―

01. アダムとイヴ
02. 鏡(TBS系テレビ「王様のブランチ」11月度エンディングテーマ)
03. ロールプレイ
04. お子さまプレート (住宅情報館「お宅研編・発表編」CMソング)
05. クライベイビー
06. アメイジングレース(TBS系テレビ「CDTVサタデー」5月度オープニングテーマ)
07. one shot kill
08. ca$h from chao$
09. ひどく雨の続く午後の寝室より
10. 手紙
11. 馬の骨
12. 伺いとキス
13. 倫敦
14. パンドラ

―Guitarists―

柳沢進太郎、牧達弥