ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(3/4) ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(3/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(3/4)

南米スラッシュ・メタルの名盤を10枚ずつ紹介する連載の第3回。前回までに登場したアルバムはすべて1980年代から90年代にかけて発表されたものでしたが、今回は21世紀に入ってからリリースされた作品も紹介します。

文・選盤=川嶋未来

Apokalyptic Raids
『Only Death Is Real…』

●リリース:2001年
●ギタリスト:Necromaniac

Hellhammerへのあふれる愛

バンド名、タイトルからロゴにいたるまで、完全にHellhammer/初期Celtic Frost。肝心のサウンドのほうも、もちろんそのままで、「Hellhammerの未発表曲集だよ」と言われたら、信じてしまいそうなレベル。これまでに5枚のアルバムをリリースしているが、いずれもHellhammer愛あふれるオマージュで、ここまで来ると栗田貫一。

MX
『Simoniacal』

●リリース:1988年
●ギタリスト:Decio、Morto

恋しくなるB級スラッシュ

サンパウロのスラッシュ・バンドによるデビュー作。ロゴとジャケのダサさは半端ではないが、中身はなかなかのB級スラッシュ。その後、少々ニュー・メタルの色気を見せたりしつつも、現在も活躍中。18年の最新作の『A Circus Called Brazil』でも高品質スラッシュを聴かせているが、高品質すぎてやはり初期作が恋しくなる。芸術とは難しいものですな。

Overdose
『…Conscience…』

●リリース:1987年
●ギタリスト:Cláudio David

当時のC級感が好きな人は楽しめるかも!?

ベロオリゾンテのパワー/スラッシュ・バンドによるデビュー作。もはやセパルトゥラとスプリットを出していたことだけが売りのバンドという感じがしないでもないが、サウンドのほうは下手クソ寄りのヘタウマ・ハイトーン+スピーディな楽曲の、スラッシュというより80年代初頭のパワー・メタルという感じで、当時のC級感が好きな人はけっこう楽しめるかも。

Claustrofobia
『Download Hatred』

●リリース:2016年
●ギタリスト:Marcus D’angelo、Douglas Prado

セパルトゥラのアンドレアス・キッサー参加作

さて、ここからはアンドレアス・キッサーによるオススメ・ブラジリアン・スラッシュを紹介しよう。こちらはサンパウロ出身のスラッシュ・バンドで、活動歴25年以上を誇るベテラン。これが最新アルバム。疾走感の凄まじいデス・メタル寄りのスラッシュを聴かせる。アンドレスのほか、ナパーム・デスのシェーン・エンバリーやKrisiunのギタリストもゲスト参加。

Torture Squad
『Far Beyond Existence』

●リリース:2017年
●ギタリスト:Rene Simionato

アンドレアス・キッサーがイチオシ

こちらもアンドレアス・キッサー枠。サンパウロのバンドで、90年から活動を続けるベテランだが、15年に女性ボーカリスト、Mayara “Undead” Puertasが加入し、俄然注目を集めるようになる(それ以前にWacken出場をかけたMetal Battleで優勝もしているのだが)。スラッシュをベースに、適度にブラストビートなどのデス・メタル的要素も取り入れている。

Andralls
『Bleeding for Thrash』

●リリース:2019年
●ギタリスト:Alex Coelho

続・アンドレアス・キッサーがイチオシ

これもアンドレアス・キッサー枠。サンパウロのバンドで98年に結成され、これまでに6作品をリリースしているが、正直知名度は高くない。こちらは最新アルバム。“Fasthrasher”を自称するだけあり、かなりスピードを重視した突進スタイルがカッコいい。『Beneath the Remains』の頃のセパルトゥラをスピードチョイ増しにした感じと言えばいいだろうか。

Nervosa
『Victim of Yourself』

●リリース:2014年
●ギタリスト:Prika Amaral

全員女性のスラッシュ・バンド

サンパウロ出身、メンバー全員が女性のスラッシュ・バンド。人気、実力ともに21世紀のブラジルを代表するスラッシュ・メタルと言えるだろう。全体的にジャーマン・スラッシュっぽく、ブラジルの香りは希薄。20年にボーカルとドラムが脱退し、Cryptaというデス・メタルを結成。残されたPrikaは元Burning Witchesのメンバーらを加入させ、現在はブラジル・ヨーロッパ混合バンドとして活躍中。

Violator
『Chemical Assault』

●リリース:2006年
●ギタリスト:Pedro Capaça

クロスオーバーのファンにもオススメ!

ブラジリア出身のスラッシュ・バンド。ロゴ、アートワーク、そしてアルバム・タイトルに至るまで、80年代後半のアメリカ西海岸の香りを漂わせる。ひたすら疾走するナンバーにハードコアから影響を感じさせるストロングなコーラスと、スラッシャーのツボをおさえた教科書的名盤。クロスオーバー・ファンにもオススメ。

Bywar
『Heretic Signs』

●リリース:2005年
●ギタリスト:Adriano Perfetto、Victor Regep

デストラクション丸出しスタイル

サンパウロ出身のスラッシュ・バンドによる2nd。南米スラッシュの砦、Kill Again Recordsからのリリース。基本的にデビューEP~『Infernal Overkill』期のデストラクション丸出しのスタイルで、ボーカルもシュミーアを意識している感アリアリ。これまでに4作を残しているが、1枚気に入ればどれもイケるはず。11年に解散するも、20年に復活!

Eternal Devastation
『Slaughterhouse』

●リリース:2006年
●ギタリスト:Fábio、Ricardo Tino

この名前だけどデストラクション感は皆無!?

2002年に結成され、本作1枚でフェイドアウトしたブラジルのバンド。こんなバンド名なのに、(デストラクションの)『Eternal Devastation』感は皆無。というより全体的にKreator感が強く(ボーカルは完全にミレ・ペトロッツァ)、むしろ“Pleasure to Kill”という名前にすればよかったのでは? 猪突猛進、全曲同じ、全33分というスラッシュの鏡。自然消滅は残念。

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*本記事はギター・マガジン2021年9月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年9月号』

【特集】追悼 寺内タケシ
エレキの神様よ、永遠なれ。

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■コラム:寺内タケシと『歌のないエレキ歌謡曲』
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■寺内タケシが愛したギターたち
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■「だから私はギターを弾く」2003年6月号より
■寺内タケシ奏法分析
■GM SELECTION(※電子版には収録されておりません)
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・「夕日に赤い帆」寺内タケシとバニーズ
・「レッツ・ゴー運命」寺内タケシとバニーズ