ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(2/4) ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(2/4)

ギタリストなら絶対に聴くべき南米スラッシュ・メタルの名盤40(2/4)

南米スラッシュ・メタルの名盤を10枚ずつ紹介する連載の第2回。今回紹介する“名盤”の中には、“すべてがサイテーの大傑作”や、“メンバー全員が自分の限界速度の1.5倍くらいでプレイしている”バンド、“ブラジリアン・スラッシュ史上最悪の作品も! ブラジリアン・スラッシュはブッ壊れ方もひとつの魅力?!

文・選盤=川嶋未来

Mutilator
『Immortal Force』

●リリース:1987年
●ギタリスト:Alexander Magu、Kleber

セパルトゥラの誘いを断った男!

ベロオリゾンテのバンド。『Warfare Noise』コンピに参加後にリリースされたデビュー作。ショボいギターの音、無駄に複雑な展開、異常に早口なボーカル、すべてがアツい!! ギターのAlexanderは、87年にセパルトゥラへの加入の誘いを断っている(結局アンドレアス・キッサーが加入)。もし彼が入っていたら、メタルの歴史は大きく変わっていたことだろう。

Vulcano
『Live!』

●リリース:1985年
●ギタリスト:Soto Jr.、Zé Flávio

85年にしてぶっ飛びのブルータルさ

86年の『Bloody Vengeance』が名作とされることの多いサンパウロのバンド。だが、前年のこのライブ盤も衝撃。85年でこのブルータリティ。リアルタイムで聴いたら、あまりの激しさに卒倒してしまったのでは? 本当に当時のブラジル・シーンはどうなっていたのだろう。プリミティヴ・ブラックやウォー・ブラック勢からカルト視されている。現在も活動継続中。

Korzus
『Sonho Maniaco』

●リリース:1987年
●ギタリスト:Silvio Golfetti

ブラストにも迫る超高速スラッシュ

サンパウロ出身、83年頃から活動を続けるベテラン・バンドのデビュー作。本作も87年の時点でブラストビートに迫る勢いの超高速スラッシュをプレイ。タイトルは“マニアックな夢”という意味で、ジャケにフレディもいるし、エルム街にハマり倒していたのだろう。セパルトゥラとも縁が深く、彼らの最新作『Sepulquarta』にもボーカルがゲスト参加。

Sextrash
『Sexual Carnage』

●リリース:1990年
●ギタリスト:Damned Sentry

これぞ南米スラッシュの真髄、大傑作!

ベロオリゾンテのバンドによる1st。ボーカルのPussy Ripper(どういうネーミングだよ)とドラムのD.D.Crazyが元Sarcófagoということで内容は想像がつくと思うが、妙に耳につく不思議なメロディに溢れた本作は、トータル30分未満、全編超高速、メンバー名・バンド名・ジャケすべてがサイテーという南米スラッシュの真髄を極めたような大傑作!

Dorsal Atlantica
『Antes Do Fim』

●リリース:1986年
●ギタリスト:Carlos “Vândalo”

ブラジル最古のスラッシュ・バンド

リオデジャネイロ出身。81年頃から活動しており、ブラジル最古のスラッシュ・バンドの1つ。本作でデビュー。メンバー全員が自分の限界速度の1.5倍くらいでプレイしている感じで、その崩壊寸前ぶりが強烈な疾走感を生み出している。ハードコアからの影響も大きく、クロスオーバー好きにもアピールする名作。88年の2nd『Dividir & Conquistar』もオススメ。

Explicit Hate
『A View of the Other Side』

●リリース:1988年
●ギタリスト:Gus Santoro、Victor Kelly

脱スラッシュのブームもどこ吹く風!

リオデジャネイロ出身。現在も活動中だが、これが唯一のアルバム。88年というと、スラッシュのメジャー化が進み、多くがスローダウン、脱スラッシュ化を図っていた時期。表舞台ではイーヴルなスラッシュが絶滅危惧種となっていた時期、ブラジルのこういうバンドは貴重だった。まだネットもなかった時代、ブラジルにメジャー化の波は届いていなかったのだ。

Witchhammer
『The First And The Last』

●リリース:1988年
●ギタリスト:Paulo Caetano、Leandro Miranda

キャリアは王道だけど、これでいいのか?

ベロオリゾンテ出身でレーベルはコグメロという80年代ブラジル・シーンの王道を行ったバンド。まず目を引くのが中学生による色鉛筆の落書きのようなジャケ。これにオーケーを出した神経を疑いたくなるが、歌詞のほうも「デブは誰だ?俺だ!」なんていう調子。サウンド的には下手クソなExodus(しかもセカンド以降)という感じで、さっぱりウィッチでもハンマーでもない。

Exteminator
『Total Extermination』

●リリース:1987年
●ギタリスト:Tom Stock

ブラジリアン・スラッシュ史上最悪の作品

ブラジリアン・スラッシュ史上最悪の作品。ジャケットに鉤十字を使用していることからもわかる通り、Holocausto同様ナチギミックを用いたバンド。Holocaustoは音がカッコよかった一方、こちらは音もクソ中のクソ。リハーサルをラジカセで録音したレベルで、冗談でも聴いていられない。ベースのフレディ・クルーガー(どういうセンスだよ)は後にSextrashに加入。

*編注:ここに掲載したジャケット写真は、鉤十字の部分が五芒星に変えられたものです。

Taurus
『Signo De Taurus』

●リリース:1986年
●ギタリスト:Cláudio Bezz

欧米からの影響が大

リオデジャネイロ出身。本作がデビュー盤。80年代のブラジリアン・スラッシュは、欧米のフォロワーと、独自すぎるワイルドスタイルの2つに分かれるが、こちらは前者。アメリカのスピード/スラッシュからの影響が色濃く、当時のブラジルらしい破天荒さはない。公式YouTubeを見てみたら、1年で6回しか再生されていない動画もあったりで悲しい気持ちに……。

Attomica
『Attomica』

●リリース:1988年
●ギタリスト:João Paulo Francis、Pyda Rod

メタリカからの影響も感じさせる

サンパウロのスラッシュ・バンドによる1st。メタリカあたりからの影響も感じられる、展開の多い、ある意味インテリジェントなバッキングに、凶悪すぎるブラック・メタル風味のボーカルが乗るというミスマッチが実にカッコいい。残念ながらこの極悪ボーカリストはこれ1枚で脱退。次作以降は歌がメロディックになってしまい、インパクト激減。

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*本記事はギター・マガジン2021年9月号にも掲載しています。

『ギター・マガジン2021年9月号』

【特集】追悼 寺内タケシ
エレキの神様よ、永遠なれ。

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■「だから私はギターを弾く」2003年6月号より
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■GM SELECTION(※電子版には収録されておりません)
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・「夕日に赤い帆」寺内タケシとバニーズ
・「レッツ・ゴー運命」寺内タケシとバニーズ