“もともとは、飛んできたゴルフボールが頭を直撃しても大丈夫なように綿が詰まっていた”という、嘘か真かわからない話を聞いたことがあるマリンキャップ。映画『HELP!』でジョン·レノンが被っていたのが有名で、モッズキャップとも呼ばれている英国製の例のやつ。あれが自分は実は大好きで、普段よく被っているし、以前はステージでも白色バージョンを被ったりしていた。
昭和の巨匠、映画監督の黒澤明が、モッズキャップによく似た黒色の帽子を被っている写真を見たことある人、けっこう多いんじゃないかと思うけど、あれは黒澤明監督が特注でオーダーしたものらしい。“その時の職人さんが、同じ型紙を使用して今でも作っている”と当時聞かされ、黒以外に白も少しだけあると知って飛びついたんだっけ。
ところが白色ってステージで被っていると汗染みがヤバいのよ。なので、ステージ後に白色スプレー吹きつけたり、季節ごとに買い足したりした覚えが。あいにく最近は作れる職人さんが激減したとかで入手しづらくなったこともあって、タンスのこやしになっていた。先日、ふと思い出してレコーディングに被っていったのだけど、被ったままヘッドホンもできるし、気分はジョン・レノンって感じでテンション上がり、その日のダビングはかなり捗り、短時間でスタジオをあとにした。
帰る道すがら見つけたタイカレー屋に寄ることにした。半地下にある背の低い小さな扉から腰をかがめて入る。店内のすべての調度品も通常の2/3サイズな感じ。オーダーを済ませて少し待っていると、出てきた。びっくりするほどすべてが大盛り。“面白いな”。ギャップ萌えと意地も手伝い完食。
会計を済ませ、店を出ようと席を立った時、脳天にドーン！と衝撃。低い天井の梁にアタマをぶつけたらしい。さすが2/3のミニチュア店だな。フラフラしながら扉に向かうと、今度は眉間を何かに思い切り叩かれた感じで目の前が真っ暗に。思わずのけぞる。さらに一段低くなった天井の梁に気づかず自分からぶつかっていったらしい。調理場のタイ人女性がキャハハハと声を上げてる。振り返ると店長らしきおっちゃんが下を向いて無言で肩を震わせている。
“そうですか、面白いですか” せめて「ダイジョブデスカ？」とか声をかけてくれたら、こちらも何かリアクションできるのに「会計済ンダラ店ト関係ナイ他所の人ネ」みたいなスタンスで笑って放置かよー。
ひとり「いてぇ」とつぶやきながら、恥ずかしさいっぱいで外に出た。「茶室じゃあるまいし、なに？ この縮尺世界」。“浮かれていると痛い目に遭うぞ”というガネーシャからの警告だったのかも。
件の黒澤明キャップで守られていたからまだ良かったけれど、普段の自分の動作がかなり大振りで粗い、というか 「目の前のモノすらちゃんと見てない」と反省。気を引き締めなおし言動もなるべく優雅に？ 慎重に慎重に周りも見て、ミックスやLIVEの仕込み、その他諸々に臨まなくちゃ。では、また！
いまみちともたか
ソロ・アルバムに先がけ、先行2曲が10月16日に配信リリース！！
いまみちともたか、そして浜崎貴司
いまみちともたか
Profile
いまみちともたか
いまみちともたか◎1959年生まれ。BARBEE BOYSのギタリストとして1984年にデビュー後、佐野元春や井上陽水のレコーディングに参加するなど、多方面で活躍。ほかにも、椎名純平らとのヒトサライ、自身がホストとなってゲストを迎えるスタジオ・ライブ・シリーズ＝“カメを止めるな”を主催するなど、精力的に活動中。
