爽快だけど、どこか切ない……センチメンタル・シティ・ロマンスのツイン・ギターの特異性とは? 爽快だけど、どこか切ない……センチメンタル・シティ・ロマンスのツイン・ギターの特異性とは?

爽快だけど、どこか切ない……
センチメンタル・シティ・ロマンスのツイン・ギターの特異性とは?

センチメンタル・シティ・ロマンスの最大の魅力と言えば、やっぱり2本のギターだ。時に立体的なバッキングを聴かせ、時にドラマチックにハモり、時に伸びやかにインプロをかます。そのスタイルの源流とは?

文=小川真一 写真提供/協力=センチメンタル・シティ・ロマンス、高山富士子、新倉愛、三浦憲治、ステキッスレコーズ

 センチメンタル・シティ・ロマンスといえば、反射的に“西海岸サウンド”という答えが返ってくるかと思う。確かに初期のジャケットを眺めていても、ウエストコースト風のイメージで作られているのがわかるだろう。しかし、それだけではないのがセンチメンタル・シティ・ロマンスなのだ。

 初期のインタビューで中野督夫は、“ザ・バーズやバッファロー・スプリングフィールド、モビー・グレープ、ポコが好きだ”と発言している。この言葉からもわかる通り、イーグルス以降の西海岸ロックというよりは、それ以前から続いている60年代フォーク・ロックから、その後のカントリー・ロックへと連なるサウンドへの憧れが、彼らの根底にあるように思う。

 ツイン・ギターにキーボード、それにペダル・スティールも加わるという楽器の編成は、元バッファロー・スプリングフィールドのリッチー・フューレイとジム・メッシーナが、ペダル・スティール奏者のラスティー・ヤングを誘って結成したポコに近いともいえる。リード・ボーカリストが複数いること、全員が歌えてコーラス・ワークを得意としているなど、色々な面でポコとセンチは共通項が多い。

リッチー・フューレイ(左)とラスティー・ヤング(Photo by Getty Images)。

 中野督夫のギターの特徴は、ともかく明快であること。テレキャスターであったりストラトキャスターだったり、フェンダー・ギター特有のブライトな音色を存分に活かしたプレイだ。75年のデビュー・アルバム『センチメンタル・シティ・ロマンス』の冒頭を飾る「うちわもめ」での小気味のいいピッキング・ハーモニクスなど、まさにその典型。弦をフレットに打ち付けるような奏法は、ジム・メッシーナのカントリー・ロックのアプローチにも通じるものがある。「おかめとひょっとこ」後半部分のギター・ソロでもそうなのだが、カントリー・ロック的な奏法でありながらも、どこかナイーブさが感じられる。それは単なるコピーのサウンドではなく、日本的な情緒感が加味されていて、そこがまさしくセンチメンタルであるのだ。

 西海岸的なサウンドだけでなく、ラテンのリズムもとても上手に活用している。2nd『ホリデイ』収録の「マンボ・ジャンボ」のサルサであったり、「魅惑のサンバ流るる今宵」のサンバだったり、これらのビートをこれ見よがしに全面に持ってくるのではなく、曲の隠し味として使っているのが実に上手い。

 と同時に、「ロマンス航路」などでのソウル感覚も見逃せない。間奏でのリズム・カッティングは、実にグルーヴィン。カッティングだけでこれだけの表情の出せるギタリストはそういないだろう。以前話を聞いた時に、当時はカーティス・メイフィールドやダニー・ハサウェイなどのニュー・ソウル系もよく聴いていたと話していた。

 告井延隆は初期のアルバムでは、ギブソンのファイヤーバードI(P-90が二発のノンリバース)を愛用している。沖縄の楽器店で安価で手に入れたというが、ファイヤーバードですぐに頭に浮かぶのがバッファロー・スプリングフィールド~クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングのスティーヴン・スティルス。バッファロー時代のニール・ヤングとのツイン・ギターを思い出してしまう。ツイン・ギターといえば、「うちわもめ」のイントロのツイン・リードが実に印象的だ。ステージでも、中野督夫のリードに告井のギターが重なっていくと、たまらないほどわくわくしてしまう。このツー・トップ体制も、センチメンタル・シティ・ロマンスの魅力のひとつなのだ。

スティーヴン・スティルス(Photo by Getty Images)。

 もうひとつ、告井延隆のペダル・スティール・ギターもセンチならではの構成だ。ペダル・スティール奏者がグループにいるというアドバンテージは大きい。デビュー作の「あの娘の窓灯り」で、スティールの魅力が存分に活かされているのだが、ペダル・スティールを手に入れたのがレコーディングの1ヵ月前だったという話を聞いてびっくり。グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアも、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの「ティーチ・ユア・チルドレン」を録音する時に、まだこの楽器の初心者だったというエピソードが残されているが、天才とはそういうものなのかもしれない。

 セカンド・アルバム『ホリディ』収録の「U.S タイムマシーン」の後半部分では、告井のペダル・スティールと中野のギターとが、ジャム・バンド風のインプロヴィゼーションを繰り広げていく。日本にこんな演奏ができるグループがいたのかと本当に驚いてしまうのだが、こんなプログレッシブさも、センチメンタル・シティ・ロマンスのインストゥルメンタル・ワークのひとつだったのだ。

ギター・マガジン2021年10月号には、本記事に加え、センチメンタル・シティ・ロマンス三部作のギター・フレーズ分析も掲載しています。

ギター・マガジン2021年10月号

●川谷絵音
●センチメンタル・シティ・ロマンス三部作物語
●『All Things Must Pass』とジョージ・ハリスンの魂の開花
●ナッグス・ギターズ トップ・ビルダーが練り上げる美しきハイエンド・ギター