岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第8回はギリシャのコンテンポラリー・ジャズ・シーンの重要人物、アンドレアス・ジョージウー(Andreas Georgiou)。フィジカルの音源を見つけるのは難しいが、インターネットを駆使してでも、この多弦アプローチなどは聴いてほしい。
文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸
今回紹介する作品は……
『Talisman』
アンドレアス・ジョージウー
Self-released/CON1081/1990年リリース
―Track List―
01. Talisman
02. Inner Voices
03. Tripticho
04. Plastic Man
ギリシャ現代ジャズ・シーンの重鎮による
多弦を操る自主制作の意欲作
古代よりヨーロッパとアジアおよびアフリカとの交差点としての役割を果たし、文化的発展を遂げるギリシャ。そんな地の実験音楽/コンテンポラリー・ジャズ・シーンにおいて、1980年代後半から90年代にかけて中心的な役割を担った名ギタリストが、アンドレアス・ジョージウーだ。
ジョージウーは、ギリシャの伝統音楽や演劇の影響を受けた作曲家ディミトリス・ドラガタキスに師事し、サイモン・カラス国立音楽学校でビザンティン音楽や、アフリカやインドの古典音楽を学ぶ。ポリリズムへの関心から13、14、15、16、19弦などの様々な多弦アコースティック・ギターを、非音律の音階の研究からエレクトリック・フレットレス・ギターなども演奏する。
1990年に自主リリースされた本盤では、A面「Talisman」、「Inner Voices」がそれぞれ15、16弦のアコースティック・ギターによる独奏、B面「Tripticho」、「Plastic Man」ではフルート/テナー・サックスのリード奏者、ドラマー/パーカッショニスト、バイオリニストを加えたアンサンブルでエレクトリック・ギターを演奏している。「Talisman」でのギターを打楽器のようにパーカッシブに奏でる姿に、同じく多弦奏者であるエグベルト・ジスモンチの姿を重ね合わせたくなる。大曲「Tripticho」では、フリーキーなジャズ・ビートにベン・モンダーを思わせるアルペジオを絡ませたと思えば、終盤には抑制的なギター・シンセがバイオリンやフルートの持続音と溶け合う。
著者プロフィール
岡田拓郎
おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。