新連載! 崎山蒼志の未知との遭遇第2回:Gibson Explorerへの憧れ 新連載! 崎山蒼志の未知との遭遇第2回:Gibson Explorerへの憧れ

新連載! 崎山蒼志の未知との遭遇
第2回:Gibson Explorerへの憧れ

新世代のシンガー・ソングライター/ギタリスト、崎山蒼志の連載コラム。1人のミュージシャンとして、人間として、日々遭遇する未知を自由に綴っていきます。 月一更新です。

デザイン=MdN

歯の奥から熱くなります。

歯切れの良いギターの音が好きです。その多くはシングル・ピックアップから成り立つのでしょうが、ハムバッカーによる歯切れの良い歪みの心地良さに私はひとつ魅せられています。

もっと断定すればギブソン・エクスプローラーやフライングVなどの音で、特にエクスプローラーが好きです。クランチ程度に歪ませたフロントとリアのミックスの時点で粘り気と軽やかさが同居し、もちろん輪郭のある音で見た目同様ガッツはあるのですが、くぐもっているようで抜けのいい音。どこかコリッとした音の印象もあります。リア・ピックアップに切り替えれば、それはもう私が好きな音です。搭載されているピックアップの好みで言うとギブソンの500Tや496R、同じくギブソンのDirty Fingersなどハイパワーなタイプで、とことん歪ませていけばスラッシュ・メタルのような音になります。

とことん歪ませる際の私の好みとしては、ちょっとファズっぽいジュワッ、やゲジッ感があることかな、と思います。というのも、私はキング・ギザード&ザ・リザード・ウィザードというオーストラリアのバンドが好きでして、そのバンドが2019年にリリースした『Infest The Rats’ Nest』というスラッシュ・メタルなアルバムをかなり愛聴しています。とても音楽性の振り幅が広いバンドで、基本的にはサイケ・ロックを軸にしていると思うのですが、アコースティックっぽいサイケなフォーク・ソングを集めたアルバムや、ブギーなロック・アルバムを出したりと、毎度驚かされます。割とビザーリーなギターを使っている印象で、作風に合わせて風変わりなベースやギターを選んでいたり、とにかく非常に興味深いことをしているバンドなのです。

『Infest The Rats’ Nest』では、ギターを弾くメンバー3人揃ってハイパワーなピックアップを搭載したギターを用いて、どこかファズっぽさのあるスラッシュ・メタルのような音像を作り出しました。その際にステュー・マッケンジーというメンバーの一人が、数ヵ所穴の開いたギブソン・エクスプローラーを使っています(下に描いてみました)。

イラスト:崎山蒼志

軽量化もひとつの意図なのだと思うのですが、見た目がとにかく面白く、めちゃくちゃクールです。色が茶っぽいナチュラルなところも、飾らない奇抜さにつながっていると言いますか、渋い。

ギブソン・エクスプローラーに今ほどの熱量で興味を抱いたのは、そのステュー・マッケンジー氏による影響が大きいと思います。あとは、少し振り返るとノルウェーのボーイ・パブロというミュージシャンが2018年にリリースした『Soy Pablo』という作品のジャケで、エクスプローラーを抱えていました。そこからの影響もあったかもしれません。「ベッドルーム・ポップ」とも称される彼の音楽の、歪んだギターのイメージがない作品のジャケでエクスプローラーを抱えていることがなんとも印象的でした。良い意味で期待を裏切っているような。

気づけばその時から……否、実はもっと前にさかのぼります。父の影響もあり、幼い頃から耳にしていたメタリカ。ジェイムズ・ヘットフィールド氏はギブソンではありませんが同じタイプを愛用しています。そこがこのエクスプローラーというギターに対する気持ちのルーツかもしれません。

そんな私はまだエクスプローラーを持っていません。恥ずかしながら、弾いたこともわずかしかないです。リスペクトするミュージシャンの音像や見た目からイメージで書いている箇所もあってすみません……エクスプローラーのことをもっと知りたいですね。材によって音はめちゃくちゃ変わると思うので、たくさん弾いて、みたいなこともこの連載でできたらいいなと思います! マホガニー・ボディのエルボー・カットも憧れです、歯の奥から熱くなります。

著者プロフィール

崎山蒼志

さきやま・そうし。2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガー・ソングライター。現在19歳。2018年、15歳の時にネット番組で弾き語りを披露、一躍話題に。独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。

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