エリック・クラプトン『Unplugged』はどんな作品だったのか? エリック・クラプトン『Unplugged』はどんな作品だったのか?

エリック・クラプトン『Unplugged』はどんな作品だったのか?

1992年にリリースされた『Unplugged(邦題:アンプラグド〜アコースティック・クラプトン)』は、ギタリストにとってまさに“必携の1枚”。本サイト読者の方々で本作をまだ聴いていない人はほとんどいないのではないだろうか? ちょうど今から30年前、世界中のギター・ファンたちに多大な影響を及ぼしたこの稀代のアコースティック名盤について、改めて振り返っておこう。

文=青山陽一

『Unplugged』の基本情報

『Unplugged』
Eric Clapton

録音:1992年1月16日
発売:1992年8月18日

メンバー:エリック・クラプトン(g,vo)、アンディ・フェアウェザー・ロウ(g)、レイ・クーパー(perc)、ネイザン・イースト(b,cho)、スティーヴ・フェローン(d)、チャック・リーヴェル(k)、マック・キスーン/ケイティ・キスーン/テッサ・ナイルズ(cho)

受賞:グラミー賞ベスト男性ボーカル・パフォーマンス部門、同年間最優秀アルバム部門、同ベスト・ロック・ソング部門(「Layla」)

愛息コナーへの想いを込めたステージを

90年代初頭のエリック・クラプトンは89年のアルバム『Journeyman』のヒットを受けたツアーや、ロイヤル・アルバート・ホールの24回公演など大掛かりなコンサート活動に明け暮れたが、91年3月に息子のコナーを不慮の事故で失ってからは喪に服すかのように予定をキャンセル。12月のジョージ・ハリスンの日本公演をサポートしたり、いくつかのレコーディング参加以外は目立った動きは控えていた。

当初は『MTV Umplugged』のオファーも躊躇していたそうだが、先にリリー・ザナック監督の映画『Rush』に使われていた「Tears In Heaven」やアルバムに収録されなかった「Circus」など、コナーにまつわる曲を演奏する場として相応しい企画ではないかと思い直したところもあったという。

70年代末以降、エリックのステージからはアコースティック・セットがすっかり消えていたこともあって、ステージで全編をアコースティック・ギターで通す企画はかなりの話題を呼んだ。アコースティックにしては8人という比較的大きな編成だったが、当時のエリックとしては自分の歌とギターでぐいぐい引っ張るというよりは、気心の知れた仲間に押し上げてもらって安心して演奏したかったのかもしれない。

その名演はアコギ業界を揺るがした

セットリストの中心を成したのは当然ながら得意のブルーズ・カバー群だが、ビッグ・ビル・ブルーンジーの「Hey Hey」、70年代のアコースティック・セットで良く演奏していたボー・カーターの「Alberta」(レッドベリーで知られる曲とは同名異曲)、ジェシー・フラー「Sanfrancisco Bay Blues」など、少年期のエリックがブルースに近づくきっかけとなった少しフォーク寄りなアコースティック・ブルースが要所に含まれ、ドミノズ時代にも取り上げていた「Nobody Knows You When You’re Down And Out」の再演もスクラッパー・ブラックウェルのアレンジに倣っていたりと、バック・トゥ・ルーツな方向性を持っていた。

かと思うと冒頭の「Sign」のようなブラジル的なインストや「Tears In Heaven」、「Lonely Stranger」といった新しめのオリジナル曲では、これまで使ったことがなかったナイロン弦のギターを抱えてジェントルなフィンガーピッキングを披露するという新機軸も見せている。しかしコンサートの主力機としてエリックが持ち出したのは、スティーヴン・スティルスから譲り受けたという1939年製のマーティン000-42という70年代のレイドバック時代を彷彿とさせる1本。とりわけこれを弾きながら歌った「Layla」の新アレンジには誰もが驚かされたはずだ。ピックアップを付けず、マイク収録で可能な限りアンプラグドの趣旨に則ったセッティングにもこだわった。

このマーティンがきっかけとなって000サイズのオーディトリアム・モデルの人気が再燃することになる。マーティンからのシグネチャー・モデル000-28ECや42ECなどが発売され、空前の大人気を呼んだことはマーティンの長い歴史の中でも重要な出来事にもなった。

作品データ

『Unplugged』
エリック・クラプトン

リプリーズ/1992年8月18日リリース

―Track List―

01. 「Signe」
02. 「Before You Accuse Me」
03. 「Hey Hey」
04. 「Tears in Heaven」
05. 「Lonely Stranger」
06. 「Nobody Knows You When You’re Down and Out」
07. 「Layla」
08. 「Running on Faith」
09. 「Walkin’ Blues」
10. 「Alberta」
11. 「San Francisco Bay Blues」
12. 「Malted Milk」
13. 「Old Love」
14. 「Rollin’ and Tumblin’」

―Guitarists―

エリック・クラプトン、アンディ・フェアウェザー・ロウ