「Alberta」と、エリック・クラプトンとボー・カーター 「Alberta」と、エリック・クラプトンとボー・カーター

「Alberta」と、
エリック・クラプトンとボー・カーター

エリック・クラプトンの『Unplugged』という世紀のアコギ名盤のリリース30周年を記念し、作中ブルース・カバー曲をその元となったバージョンとともに紹介していく。今回はマディ・ウォーターズなどもカバーしている「Corrina Corrina」の別歌詞版=「Alberta」。詠み人知らず(トラディショナル)とされることも多い楽曲だが、そのルーツを探っていこう。

文=青山陽一

牧歌的なボー・カーター版

レッド・ベリーによる同タイトル曲との混同が一時問題になったこともあり、また単にトラディショナルとクレジットされることもあるが、これはミシシッピ・シークスを結成して活躍したボー・カーターが1928年に吹き込んだ「Corrina Corrina」のメロディに、歌詞を“Alberta”と入れ替えてジャクソン・ブルー・ボーイズとして録音した「Sweet Alberta」がその元歌のようだ。

ただし「Corrina Corrina」も含め、厳密にボー・カーターが作者なのかどうかも断定しきれていないところはあるのだろう。

一般的に言うブルースとはニュアンスがかなり違い、ブルーノートを含まないメロディのフォークやカントリーに近いタイプの曲。1928年のオリジナル録音を聴いてみると、ギターやフィドルによるストリング・バンドのシンプルな演奏に複数のシンガーが和気あいあいとメロディを歌う宴会ソング的なノリだ。エリックはスヌークス・イーグリンの60年録音でこの曲を知っていたらしい。

リラックスしたクラプトンの演奏が味わえる

70年代のステージでは頻繁に演奏していたが、ストラトキャスターをマーティン000-28などに持ち替えるだけで、エレクトリック・バンドを従えて歌う形が多かった。

『Unplugged』も同じくフルバンド編成だが、ピアノ、アコーディオン、ウッドベースなどのアコースティックなアンサンブルで、エリックがここで使ったのは12弦モデルのマーティンD12-20。12フレット・ジョイントのドレッドノート・モデルで、時折ベースライン的なオブリを織り交ぜゆったりとストロークしながら気持ち良さそうに歌っている。

作品データ

『Unplugged』
エリック・クラプトン

リプリーズ/1992年8月18日リリース

―Track List―

01. 「Signe」
02. 「Before You Accuse Me」
03. 「Hey Hey」
04. 「Tears in Heaven」
05. 「Lonely Stranger」
06. 「Nobody Knows You When You’re Down and Out」
07. 「Layla」
08. 「Running on Faith」
09. 「Walkin’ Blues」
10. 「Alberta」
11. 「San Francisco Bay Blues」
12. 「Malted Milk」
13. 「Old Love」
14. 「Rollin’ and Tumblin’」

―Guitarists―

エリック・クラプトン、アンディ・フェアウェザー・ロウ