Live Report|THE PRIMALS Live in Japan – Beyond the Shadow 2022年6月5日@幕張イベントホール Live Report|THE PRIMALS Live in Japan – Beyond the Shadow 2022年6月5日@幕張イベントホール

Live Report|THE PRIMALS Live in Japan – Beyond the Shadow
2022年6月5日@幕張イベントホール

オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』の公式バンドであるTHE PRIMALSが、約4年ぶりの有観客単独公演=“THE PRIMALS Live in Japan – Beyond the Shadow”を6月4日〜5日に開催した。千葉・幕張イベントホールを“光の戦士”たちが埋め尽くした2日間のうち、編集部は5日公演に潜入! “楽しさ”に満ちたライブの模様をお届けするとともに、特別に入手できた機材写真も合わせて掲載しよう。

文=福崎敬太 ライブ写真=西槇太一 機材写真=MASANORI FUJIKAWA

ファイナルファンタジーXIV(以下:FFXIV)の音楽を手がける祖堅正慶が率いるゲーム公式バンド=THE PRIMALSの約4年ぶりとなる有観客単独公演が開催された。舞台は彼らとして過去最大規模となる、幕張イベントホール。数多くの“光の戦士(注:FFXIVのプレイヤー)”で満員の中、2日間に及ぶライブは大盛況のうちに幕を閉じた。

そして、我々が潜入した最終日のライブ終了後、ステージを去る直前に祖堅が放った言葉がある。

「今日のライブを楽しめた人は、FFXIVを真剣にやっていた人だ!」

この言葉に、THE PRIMALSの特異性と、彼らの音楽が愛される理由が詰まっていたように思う。

ゲーム制作サイドならではの“楽しさを共有したい”という気持ちが、ライブでも滲み出ているのだ。MCでこれから演奏する楽曲がどういう場面で使われたかを説明してくれたり、演奏中にもプレイ動画が映し出されたりと、プレイヤーが自身の経験と照らし合わせて聴くことができるように気を配ってくれている。ゲーム公式バンドということで、当たり前のことを書いているように思えるが、よく考えるとこれって凄くないか? しかも、全世界でこの演出を最大限に楽しめるファンが2500万人以上いる。そして、THE PRIMALSのメンバーもファン同様、光の戦士という同志でもある。

前回ギタマガWEBでTHE PRIMALSのライブを観た際は配信のみだったため、性別も年齢も幅広い多くの観客が同じように楽しむ姿を初めて生で観て、改めてこの凄さを体感できた。とともに、その音楽がまごうことなきギター・ミュージックであることがとにかく嬉しい。

鋼鉄感が増したGUNNのギター・サウンド

幕に投影される映像の向こう側に、フェンダー・スターキャスターを持った祖堅とアリア・プロIIのPE-5350 GEをかき鳴らすGUNNの姿が見える。1曲目は「ENDWALKER」。フィードバックとGUNNのメタリックなサウンドが空間を支配し、一気にロックな世界に持っていかれる。心なしか以前聴いたサウンドよりもGUNNのギターに鋼鉄感が増したように感じた。

祖堅のドライブするコード・ストロークの疾走感はそのままに、ディレイをかけたリフが鋭い「輝ける蒼 ~希望の園エデン:覚醒編~」、フェイザーで揺れる歪みが印象的なオブリが聴ける「究極幻想」と、GUNNのロックな引き出しを楽しむ。

ジャズマスターに持ち替えたGUNNは「メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~」で歪ませたワウのフリーキーなオブリを聴かせ、ボーカルを務める「忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~」へ。

「忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~」ではメイン・バッキングを祖堅が担い、ロックなアルペジオでグルーヴを牽引していく。ハウリングの音をスパイス的に鳴らすGUNNの演出も粋に響いている。

そしてついに、FFXIVとフェンダーとのコラボで生まれたFINAL FANTASY XIV Stratocasterを手にする2人。紹介こそされなかったが、観客にとってこのストラトのサウンドを生で体感するのは初なのでは?とワクワクしてしまう。その2本で、「目覚めの御使い ~ティターニア討滅戦~」を披露。おそらく“リミット・ブレイク・スイッチ”を押した状態(リア&センターがシリーズ接続)の太いサウンドで刻む祖堅、アルペジオで空間の広がりを演出するGUNNのコンビネーションが気持ち良い。

続く「女神 ~女神ソフィア討滅戦~」が終わるとTHE PRIMALSの面々がステージを去り、アニメーションによる演出とともにスモークの中から黒いフードを被ったシルエットが姿を現わす。そのシルエットの持ち主がシンセで美しいサウンドスケープを描き出し、FFのクラシック=「悠久の風」が演奏された。そう、ファイナルファンタジーIIIの象徴的な楽曲。衣装のフードを脱ぐと、ゲーム音楽の巨匠=植松伸夫の姿が。植松による最新アレンジが施された往年の名曲「メインテーマ~マトーヤの洞窟メドレー」、「ビッグブリッヂの死闘」がサプライズで披露された。

キャラクターの違う祖堅とGUNNのギター

再びTHE PRIMALSの面々がステージへと戻ってくると、公募したゲームのプレイ動画を編集した映像とともに「貪欲」、「To the Edge」が演奏された。キャラクターが攻撃するタイミングなどに合わせた音楽のブレイクなど、映像と演奏のマッチングも彼らならではの演出だ。祖堅のFFXIVストラトでかき鳴らすストレートなロック・サウンドと、GUNNの1968年製レス・ポール・カスタムによる粗いリードが心地良く会場を包み込む。そのまま、「Shadowbringers」へ。

そして、「知恵の巻貝 ~オールドシャーレアン:夜~」では、アコースティック・セットに。祖堅はピアノの前に座り、ベーシストのイワイエイキチがアコギを持った。イワイの大きなストロークに乗せて、GUNNはバッカスのSpace Steelで、指とピックを織り交ぜながら美しく叙情的にメロディを紡いだ。

アコースティック・セットで「知恵の巻貝 ~オールドシャーレアン:夜~」を披露。
アコースティック・セットで「知恵の巻貝 ~オールドシャーレアン:夜~」を披露。

バンド・セットへと戻り、「Close in the Distance」、「Flow Together」としっとりとしたロック・バラードが続く。女性ボーカルの美しい歌声を、ツイン・ギターの厚みのあるバッキングが支える。「Flow Together」のアウトロでは、ダンエレクトロの’84を使ったGUNNによる泣きのソロも。そしてフィードバックで余韻をたっぷりと味わわせるエンディングを迎える。

「此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~」ではヘヴィに分厚いコードの塊を客席へと放ち、「ロングフォール ~異界遺構 シルクス・ツイニング~」では、リードを祖堅とGUNNで交互にバトンタッチする。2人で同じ流れのフレーズを弾くが、ピッキング・ニュアンスなどでキャラクターがしっかりと聴き分けられるのが面白い。

重厚なボトムリフを聴かせる「魔神 ~魔神セフィロト討滅戦~」、火炎放射器による演出も加わったヘヴィな「加重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~」から、「エスケープ ~次元の狭間オメガ:アルファ編~」でのブライトな歪みで空間が一気に開かれたところで本編は終了した。

祖堅正慶

アンコール1曲目は、祖堅がトランペットを務める「メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~」。GUNNによるヘヴィなリフと軽快なカッティングを織り交ぜたバッキングのグルーヴで、観客は体を揺らす。アッパーな「ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~」から、大きなビートで踊れる「ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~」で最高潮に盛り上がり、ライブは幕を閉じた。

ここまでギターに着目して話をしたが、ここに書ききれない“光の戦士だから楽しめる”というギミックがたくさん盛り込まれたライブだった。そういった現場でしか味わえないTHE PRIMALSが用意する“楽しさ”は、FFXIVをしっかりとプレイしてライブ会場で体感してほしい。

GUNN
祖堅正慶

SOKEN’s Gear

GUNN’s Gear

作品データ

『THE PRIMALS – Beyond the Shadow』
THE PRIMALS

スクウェア・エニックス/SQEX-10939/2022年5月25日リリース

―Track List―

01. Close in the Distance
02. 此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~
03. Flow Together
04. 知恵の巻貝 ~オールド・シャーレアン:夜~ (Acoustic Version)

―Guitarists―

祖堅正慶、GUNN

THE PRIMALS公式サイト
https://www.jp.square-enix.com/music/sem/page/ff14/primals/

ファイナルファンタジーXIV公式サイト
https://jp.finalfantasyxiv.com/