『18』
ジェフ・ベック&ジョニー・デップ

【参加クレジット】
ジェフ・ベック(g)、ジョニー・デップ(vo,g)、他
【曲目】
①ミッドナイト・ウォーカー
②ザ・デス&リザレクション・ショウ
③安らぎの時
④サッド・マザーファッキン・パレード
⑤ドント・トーク
⑥ミス・ヘディ・ラマーに捧げる歌
⑦キャロライン・ノー
⑧ウー・ベイビー・ベイビー
⑨ホワッツ・ゴーイン・オン
⑩毛皮のヴィーナス
⑪レット・イット・ビー・ミー
⑫スターズ
⑬孤独
いつもながらの神業に宿る緊張感と
リラックスした新境地は必聴
前作『ラウド・ヘイラー』から6年というタイミングで登場したスタジオ新作。
ジェフはジョニー・デップと6年前に知り会い、意気投合。この数年は一緒のステージを重ねながら、今年4月に初のコラボ・シングルでジョン・レノンのカバー曲「孤独」を発表。そしていよいよフル・アルバムの登場だ。
収録曲は13曲中、ジョニー・デップのオリジナルが2曲。それ以外はすべて有名曲のカバーである。意図的にコンフォート・ゾーンから離れたという選曲は、ビーチ・ボーイズやミラクルズ、マーヴィン・ゲイなど多彩。
“クリエイティヴなパートナー”と絶賛するジョニー・デップとの共同作業でのびのびと弾くジェフ。まるで18歳の若者が2人で遊んでいるようでもあり、こんなにも清々しいジェフのギターを聴けるとは感激だ。ジェフの共演してきた歴代ボーカリストの中では相方として一番しっくりきていると感じた。ジェフをやる気にさせてくれたジョニー・デップに感謝したい。
(近藤正義)
『ヘルファイヤ』
ブラック・ミディ

【参加クレジット】
ジョーディ・グリープ(vo,g)、キャメロン・ピクトン(vo,b)、モーガン・シンプソン(d)
【ゲスト】カイディ・アキンニビ(sax)、他
【曲目】
①ヘルファイヤ
②シュガー/ツ
③イート・メン・イート
④ウェルカム・トゥ・ヘル
⑤スティル
⑥ザ・レース・イズ・アバウト・トゥ・ビギン
⑦デンジャラス・リエイゾンズ
⑧ザ・ディフェンス
⑨27クエスチョンズ
⑩シュガー/ツ(Live at Electrical Audio/Bonus Track)
⑪スティル(Live at Electrical Audio/Bonus Track)
混沌と調和、破壊と構築が
さらなる飛躍を確かなものにする快作
バンドが革新を起こす瞬間というものがある。ブラック・ミディがこの『ヘルファイヤ』で体感させてくれるのは、レッチリが『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』で、そしてレディオヘッドが『OKコンピューター』で見せてくれたような羽ばたきだ。
パンキッシュかつプログレッシブな空気感と卓越した演奏力、そしてそれを大胆にポスト・プロダクションしコラージュ的に耳に新しい質感を作り出す魅力はそのままに、強烈な一貫性とメロディックな普遍性を獲得した作品に仕上がっている。
物語を感じる映像的な音像の中で場面を彩り、時にそこから飛び出す立体感を担うギターの役割はとても大きい。混沌とした場面をUKロックの香りに溢れたカッティングが切り開く②、鋭角でフリーキーなギター・リフが曲を躍動させる④。続く⑤でのラップ・スティールとリゾネーターの叙情的な響きも美しい。
今作をリアルタイムで聴ける12月の来日公演が待ちきれない。
(西田修大)
『アイ・アム・ザ・ムーン:II. アセンション』
テデスキ・トラックス・バンド

【参加クレジット】
デレク・トラックス(g)、スーザン・テデスキ(vo,g)、マイク・マティソン/マーク・リヴァース/アリシア・シャコール(vo)、ゲイブ・ディクソン(k, vo)、ブランドン・ブーン(b)、タイラー・グリーンウェル/アイザック・イーディ(d, perc)、ケビ・ウィリアムズ(sax)、他
【曲目】
①プレイング・ウィズ・マイ・エモーションズ
②エイント・ザット・サムシング
③オール・ザ・ラヴ
④ソー・ロング・セイヴィアー
⑤レイニー・デイ
⑥ラ・ディ・ダ
⑦ホールド・ザット・ライン
デレクとスーザンのギター競演も美しい 『アイ・アム・ザ・ムーン』第2章
ニザーミーの詩集『ライラとマジュヌーン』をもとにしたコンセプチュアルな新作『アイ・アム・ザ・ムーン』4部作の第2章が登場。
落ち着いたトーンの『I.クレッセント』の余韻を頭に浮かべつつ聴くと、タイトなモータウン風グルーヴに乗ったスーザンの歌声や、デレクと交互に掛け合うリード・ギターに思わず体が動くオープニング。ゲイブ・ディクソンが歌う②などのファンキー・ナンバーが続くと思いきや、7拍子+9拍子のテーマとゆるやかなジャムの対比が美しい③の夢うつつな音場にうっとりする。
デレクのリゾネイター・スライドが炸裂するローリン&タンブリン調ブルースの④、ムーディな癒やしの雨の歌⑤、ボブ・ディランを思わせる⑥に心をつかまれたりと、多彩さを増した雄大な音楽絵巻が紡がれていく。
ラストはデレクお得意のラーガ風スライドが導く幻想的なバラードで、まるで目の前に景色が浮かんでくるよう。第3章への期待もさらに深まる会心の仕上がりだ。
(青山陽一)
『After Hours』
デリケート・スティーヴ

【参加クレジット】
スティーヴ・マリオン(g,b,d,etc.)、シャザード・イズマイリー (g,b,syn,perc)、ブレアナ・バーバラ /トール・ジュアン・ザバリャ(vo)、ジェレミー・ガスティン/オースティン・ヴォーン(d)、マウロ・レフォスコ(perc)、マーティン・ボンヴェントレ/ジェイク・シャーマン(p,etc.)、他
【曲目】
①Playing in a Band
②Street Breeze
③I Can Fly Away
④Now I Know
⑤Looking Glass
⑥Find My Way
⑦After Hours
⑧Artificial
⑨Night Owl
⑩Still Life
字義どおり温故知新を体現! 新感覚のギター・インスト作
ジャケ写を見て即刻ジェフ・ベックの『ワイアード』を思い浮かべたが、デリケート・スティーヴなるこのギタリスト、巷では“ベッドルーム界のサンタナ”と評されたことがあるらしい。2011年にデビューし、これまでインスト作品4枚を発表、デヴィッド・バーンやポール・サイモンなど幾多のレジェンドのライブ/RECにも参加……という経歴だが、恥ずかしながら存じ上げなかった。
1966年製のストラトで録音したらしいインストの本作。タイム感やチョーキング・ニュアンスの付け方に耳を澄ませば、彼の核はそれこそジェフ・ベックを始めオールド・ロックやソウル、ブルースにもありそう。一貫して鷹揚に構えたプレイで魅せるが、ビート感にはヒップホップ的なムードがあるし、オルタナ・ライクな音像もあって響き的には新鮮。
ともすれば“テクニック集”や“あの頃最高!”となりがちなギター・インストにおいて、かなり新しいことに挑戦しているのでは?
(辻昌志)
『Entering Heaven Alive』
ジャック・ホワイト
『ファースト・コングリゲイショナル・チャーチ・オブ・エターナル・ラヴ・アンド・フリー・ハグス』
クーラ・シェイカー
『But wait. Cats?』
[Alexandros]
『バック・トゥ・ビジネス』
バングス&タルボット
UKソウル&モッズ・サウンド、再び! ギター・フィーチャーのグルーヴ作
アシッド・ジャズの生みの親による新プロジェクト。モータウンを支えたアール・ヴァン・ダイクを想起するソウル・インストに、グラント・グリーン的ギターが乗っかるという展開にヨダレが(笑)。マーヴィン・ゲイの「How Sweet It Is (To Be Loved By You)」でのソウルフルな歌い上げ、5拍子「Leela’s Dance」での艶っぽいジャズ・ラインも聴き逃がせない。
(久保木靖)
『セカンド・スキン』
アイコニック
※本記事はギター・マガジン2022年8月号にも掲載されています。