ボウ・ディアコの基本情報 ミュージシャンとしての歩みを追う ボウ・ディアコの基本情報 ミュージシャンとしての歩みを追う

ボウ・ディアコの基本情報
ミュージシャンとしての歩みを追う

SNS界隈で早耳のギター・ファンから注目を集めていたボウ・ディアコウィックズ(Beau Diakowicz)。ギター・マガジン2019年10月号『NeoSoul 2019』にてメール・インタビューをした際は、プロデューサーやサポート・ワークがおもな活躍のフィールドで、“もうすぐソロEPを出すんだ”と言っていた。ボウ・ディアコ名義でようやく1stフル・アルバム『Nylon』をリリースしたわけだが、彼がどんなギタリストなのかまだ一般の知るところではないだろう。ここでは彼のプロフィールをおさらいしておこう。

文=福崎敬太 Photo by Audrey Gretz

サッカー少年を襲ったレディオヘッドの衝撃

ボウ・ディアコは1991年12月2日生まれ。出身はイギリスのハンプシャー州南部にある港町、ポーツマス。イングランドの多くのティーンエイジャー同様、幼少期からサッカーにのめり込んでいった。現在もマンチェスター・ユナイテッドの大ファンとのことだ。

さて、ギターを始めたのは15歳の頃で、レディオヘッドに触れたことがきっかけだった。ジョニー・グリーンウッドのプレイに魅了され、すぐに父親が持っていたアコースティック・ギターを弾き始めたという。また、最初に買ったテレキャスターには、ジョニーと同じくホンダ・バイクのウィング・マークのステッカーを貼っていたそうだ。

そこから父親のCDコレクションを掘り下げていく中で、ザ・スミスやザ・ストロークスにハマり、ギターを学びたい欲求が次第に大きくなるにつれ、インディー・バンド、フォーク、ジャズなどを聴き漁っていった。また、ジョアンナ・ニューサムのハープやビル・エヴァンスのピアノなど、様々な楽器の演奏をギターに置き換えたりしながら、独自のギター・スタイルを築き上げていく。そして同時に、エレクトロニックな音楽も聴きながら、現代的なビート・メイクのノウハウも学んでいった。

特に影響を受けた音楽について聞くと、ボウはこう答えてくれた。

自分では意識しているわけじゃないけど、今よりももっと若い頃に聴いて学んでいた音楽からの影響が大きいと思う。ディスタウン・ニーズ・ガンズ(TTNG)みたいなマスロックのバンドや、スフィアン・スティーヴンスみたいなフィンガーピッキングによるフォークだったりとね。タッピングに関してはマスロックから由来していて、僕のスタイルの一部になっているところがある。でも、TTNGのティム・コリスからもある程度影響を受けていると思うけど、やっぱりスフィアン・スティーヴンスが大きいかな。いわゆる派手なギター・ソロを弾くような人たちではないよね。あと一時期僕はジャズっぽいものにハマっていたこともあって、ジョナサン・クライスバーグからも学んだ時期があったね。

Photo by Peter Planter

すでに完成されたギター・スタイルは、SNSを通じて世界へと知れわたる

2015年から、彼が知られるきっかけとなったInstagramの演奏動画をアップするようになる。当初は楽曲の断片的なアイディアをメモする程度の役割だったが、これを見た何人かの音楽プロデューサーから連絡を受け、スタジオ・ワークを経験する。また、そこから人脈も広がり、ジョーダン・ラカイの「Mind’s Eye」を始め、アーティストへの楽曲提供や、トラック・メイクやギターでの参加するように。そして徐々に自分自身の音楽活動へとシフトしていった。

ボウ自身のプロジェクトとして最初のものがピガレット(Pigarette)だ。アメリカのトラック・メイカー、アントニオ・メンデス(ソロではリンゼイ・ロウエンド名義で活動)とのインスト・ユニットで、制作はインターネットを通じてデータのやり取りで行なっていたそうだ。ピガレットは2016年4月に『Anapola』、同年10月に『Poinsettia』をデジタル・リリース。すでに完成されたボウのジャズ的なアプローチやマスロック的なテクニカルで精緻な演奏は、歌モノ主体のソロ作よりも濃く味わえるかもしれない。bandcampSoundCloudで音源が聴けるので、ぜひチェックしてほしい。

そしてもう1つ、カナダ出身のシンガー/ギタリスト、エミリー・クルーガーとのズーロジー(Zoology)がある。2016年にシングル「Escape」をリリースしたのち、最初で最後のEP『Bloom』を2018年に発表して活動を終了。現代的なトラックでエミリーのキャッチーなボーカルを活かしながらも、リズミックで幻想的なギター・フレーズが耳を掴む。本人も“このプロジェクトが終わった頃に自分のサウンドをしっかりとコントロールできるようになったし、再び実験的なことにトライして自分の作品に集中するようになった”と語るように、ギターでも主張しながらボーカルを活かすアレンジはボウのソロ活動にも通じるものがある。

ちなみにズーロジーでのエミリーはボーカルに徹しているが、タッピングを用いた現代的なアプローチなども巧みな注目のギタリストだ。ぜひ彼女のInstagramなどでその腕前をチェックしてみよう。

ズーロジーの活動に区切りをつけたボウは、いよいよソロ名義の作品制作に取りかかる。2019年から2020年にかけていくつかのシングルをリリースし、翌年にはEP『Flutter』を発表。そしてついに、1stフル・アルバム『Nylon』が我々のもとに届けられた。

インターネット上のつながりからワールドワイドな活躍を見せるボウ。『Nylon』も多くのフィーチャリング・ゲストが参加しており、プロデューサー的な立ち位置でゲストを活かしながら、自身のギターでもしっかりと主張する。彼の音楽が今後どういったコラボレーションで広がりを見せていくのか、そして純粋なギタリストとしてのソロ作がいつどんな形で出てくるのか楽しみだ。

作品データ

『Nylon』
ボウ・ディアコ

インパートメント/IPM-8138/2022年7月29日リリース

―Track List―

01. Introforsomething
02. Fretless(featuring Bas and Etta Bond)
03. Nylon(featuring Tobi Tunis)
04. Birthmark(featuring emawk)
05. Alone(featuring Ego Ella May)
06. Settle Down(featuring Rad Museum)
07. Turn Your Phone Off(featuring emawk)
08. Normal(featuring Emilia Ali)
09. Marina(featuring Galimatias)
10. Afloat(featuring Miso)
11. The Care(featuring Tobi Tunis)
12. Wake Up(featuring Alann8h and Bel Cobain)
13. Walking On My Toes(featuring Tennyson)
14. Lychee(featuring Yvette Young)

―Guitarists―

ボウ・ディアコ、イヴェット・ヤング