Live Report|The 1975 SUMMER SONIC20222022年8月20日@ZOZOマリンスタジアム Live Report|The 1975 SUMMER SONIC20222022年8月20日@ZOZOマリンスタジアム

Live Report|The 1975 SUMMER SONIC2022
2022年8月20日@ZOZOマリンスタジアム

2022年8月20日(土)~21日(日)にかけて、千葉・幕張と大阪で開催されたSUMMER SONIC 2022。今回は両会場でヘッドライナーを務めたThe 1975が20日にZOZOマリンスタジアムで行なった公演の模様をレポートしよう。バンドとしては3年ぶりの来日であり、彼らのライブ自体も2020年以来の開催だったが、つい先日には2023年4月の単独来日ツアーの情報も発表された。そのライブ再始動の皮切りに日本のフェスが選ばれたというのは嬉しい限りである。

文=伊藤雅景 写真=©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.

壮大な雰囲気をまとい始まった3年ぶりの来日公演

  日が沈んだ19時過ぎのZOZOマリンスタジアム。スタンド席から小雨越しに見えるステージに、後光が差すような照明に照らされながらスーツ姿のメンバーが入場。視認する限りは、ステージ上にアンプなどは置かれておらず、非常にシンプルでスタイリッシュな印象のセッティングだ。

 最初に披露されたのは「If You’re Too Shy (Let Me Know)」。アダム・ハン(g)のクリーンともクランチともとれる絶妙なサウンドで鳴らすストローク・リフが会場を包んでいく。

 アダムの使用ギターは、極彩色にペイントされたErnie Ball Music ManのJP6。これは彼の近年のメイン器であり、続く「Love Me」でも引き続き本器を使用。ギターの音量は比較的抑えられているものの、本器のクリアかつ粒立ちの良いサウンドは、多彩なシーケンス・サウンドが入り乱れるThe 1975のアンサンブルの中でも強い存在感を放っており、ギターの音色がバンドを牽引しているような印象を強く受けた。

 ピエゾPUが搭載されていたり、モノ/ステレオアウトが選択できたりと多彩なサウンドが生み出せるモデルなだけに、アダム本人にその活用術を聞いてみたいものだ。

 3曲目はバンドの代表曲でもある「Chocolate」。それまでハンドマイクだったボーカル&ギターのマシュー・ヒーリーが、ここでフィエスタ・レッドのストラトキャスターを手にした。

マシュー・ヒーリー(vo,g)。手にしているのはフィエスタ・レッドのフェンダー・ストラトキャスター。(写真=©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.)
マシュー・ヒーリー(vo,g)。手にしているのはフィエスタ・レッドのフェンダー・ストラトキャスター。(写真=©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.)

 また、アダムは黒いボディにアノダイズド・ピックガードがあしらわれた、fano製のJMタイプに持ち替えた。ハイ・ポジションを中心にくり出す、マシューのミュート・フレーズと、アダムの小気味良いカッティングが絡み合う。

 そして、マシューが赤いGibson ES-330へと持ち替え、ピースフルなチューン「Me & You Together Song」へと続く。アダムもメイプル指板のストラトキャスターへとチェンジし、一気にギター・サウンドが華やかに。また、サビではマシューがハイ・ポジションでのアルペジオでメロディを奏で、アダムがコード・ストロークをかき鳴らす。細かいところではあるが、パートの振り分け方にもこだわりが詰まっており、彼らのギター・アンサンブルの“巧みさ”が垣間見えた。

 「TOOTIMETOOTIMETOOTIME」のあとの「It’s Not Living (If It’s Not With You)」でアダムは、ギターと鍵盤を交互に弾き分けるという器用な技を披露した。ここでマシューの暖かい雰囲気のMCを挟み、次曲の「Paris」へ。

Ernie Ball Music ManのJP6を手にする、アダム・ハン(g)。(写真=©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.)
Ernie Ball Music ManのJP6を手にする、アダム・ハン(g)。(写真=©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.)

 そしてなんと、新曲「Happiness」を世界初披露。彼らの「She’s American」のような、ギターが左右でスピーディに絡み合う立体的なアンサンブルの楽曲だ。アダムは再度JP6を手にして、ギター・ソロで本器のピエゾ・ピックアップのサウンドであろうアコースティック風な音色をクリエイトしていた。

多彩なギター・サウンドから生まれる“The 1975”な音像

 ライブの中盤からは、1stフル『The 1975』(2013年)に収録されている「Robbers」を皮切りに、「A Change Of Heart」、「I’m In Love With You」、「Somebody Else」、「Love It If We Made It」とバラード・ナンバーを並べたセクションへとなだれ込む。

 これまた初披露の新曲である「I’m In Love With You」では、マシューによるアコースティック・ギターの煌びやかなストローク・サウンドがアンサンブルと溶け合い、“これぞThe 1975!”と言いたいサウンド・スケープが広がる。

 しっとりした楽曲が続いたが、ここで同期から流れるノイジィなサウンド・エフェクトとハウリングで幕を開ける「People」で一気に場面転換。マシューのシャウトや、アダムのヒートアップした“激歪み”なコード・ストロークが炸裂。アダムはここで本日初披露の、赤いfano製JMタイプでオルタナ感満載のファジーなサウンドを掻き鳴らし、続く壮大なバラード「I Always Wanna Die (Sometimes)」では、マシューのアコースティック・ギターがキラキラ感満載な彩りを加えた。

 そしてライブも終盤に差しかかり、彼らのキラー・チューン「The Sound」へ。ギター・ソロ前のセクションでマシューが観客を煽りに煽り、アダムの伸びやかなソロ・パートへとバトンタッチ。四つ打ちのリズムに合わせた見事なプレイに、会場もこれ以上ない一体感と多幸感に包み込まれていた。ラスト2曲は「Sex」、「Give Yourself A Try」で走り抜け、全18曲で構成されたライブが終了。

 終始アットホームな雰囲気がありながらも、ヘッドライナーにふさわしい圧巻のパフォーマンスだった。また、楽曲ごとに細かくギターを選別しているところからも、彼らのギター・サウンドに対するこだわりがうかがえる。

 ライブ初披露となった2022年10月にリリース予定の新作『Being Funny In a Foreign Language』の楽曲も、すでに素晴らしい完成度だった。先日発表された2023年4月の単独来日公演も含め、ますますThe 1975の今後が楽しみになるステージだった。

LIVE INFORMATION

The 1975
『at their very best』

【スケジュール】
2023年4月26日(水)/神奈川・ぴあアリーナMM
2023年4月27日(木)/神奈川・ぴあアリーナMM
2023年4月29日(土)/愛知・Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場) ホールA
2023年4月30日(日)/大阪・大阪城ホール

【チケット】
詳細はクリエイティブマンHPから。
https://www.creativeman.co.jp/artist/2023/04the1975/

Tag:
Adam Hann
Matthew Healy
The 1975