曽我部恵一(サニーデイ・サービス)が選ぶ“歌とギター”の3枚。連載『わが心の愛聴盤』特別出張版! 曽我部恵一(サニーデイ・サービス)が選ぶ“歌とギター”の3枚。連載『わが心の愛聴盤』特別出張版!

曽我部恵一(サニーデイ・サービス)が選ぶ“歌とギター”の3枚。
連載『わが心の愛聴盤』特別出張版!

プロ・ギタリストが心から大切にしている“愛聴盤”を紹介するギター・マガジン本誌の連載『わが心の愛聴盤』に、サニーデイ・サービスの曽我部恵一が登場! 本誌2022年12月号で紹介した5枚とは別に、“これもはずせない!”という3枚を選んでくれた。ここでは、いつまでも曽我部の心に残る“歌とギター”のアルバムをお届けしよう。

取材・文:錦織文子 ロゴ・デザイン=猪野麻梨奈

『Pink Moon』(1972年)/ニック・ドレイク

ニック・ドレイク『Pink Moon』ジャケ写

鬼気迫る世界観が物凄い。

曽我部 ニック・ドレイクの数少ないアルバムの中で、このアルバムが最も好きですね。ギターと歌をじっくり楽しんで聴けるし、何とも表現できないアルペジオの独特な響きが、本当に美しい。

 前2作はほかの楽器も色々入っているんですけど、このアルバムは「Pink Moon」にピアノ・ソロがある以外は、アコギ1本と歌だけ。それで、これほど鬼気迫る世界観を生み出すことができてしまうのが物凄いです。

作品解説

憂いと静謐さが染みるラスト作

前作から制作が行き詰まっていた矢先、たった2日間の深夜セッションで完成させた、ニック・ドレイクのラスト作。”飾りはいらない”というニック自身の希望で制作した本作は、ピアノ・ソロのある表題曲「Pink Moon」を除き、アコースティック・ギターによるシンプルな弾き語りからなる。変則チューニングを駆使した「Free Ride」を始め、全編を通してトラッド・フォークの妙味が感じられ、独特な憂いや静謐さを湛えている。孤独と絶望の中に光を見出そうとしているような温かな音色のギターが染みる最終曲「From The Morning」も必聴。

『Everybody Knows This Is Nowhere』(1969年)/ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース

ニール・ヤング『Everybody Knows This Is Nowhere』ジャケ写

歌わない時にはギターに歌わせる。

曽我部 このアルバムはバンドで一発録りした感じがあって、特にギター・サウンドの生音感が聴いていて気持ち良いんですよね。「Cinnamon Girl」はあのイントロのリフから曲ができあがったんじゃないかと思うほど存在感があって好きですね。

 それから「Down By The River」のソロは最高。彼は以前から“テクニックではなく、心で弾きたい”とたびたび言っているんですけど、このアルバムの演奏からその思いが伝わってくるんですよね。だから、かなり長いソロでもスッと気持ちが入ってくるんです。歌わない時にはギターに歌わせるところは、凄く影響を受けてますね。

作品解説

クレイジー・ホース名義の1st

ニール・ヤングの2ndであり、この後長きにわたりステージを共にするクレイジー・ホースを従えた初の作品。表題曲「Everybody Knows This Is Nowhere」や「Cowgirl In The Sand」など、代表曲が多数収録されている。冒頭の「Cinnamon Girl」から生々しく歪んだギター・サウンドを炸裂させる一方、メロウなアコースティック曲「Round & Round (It Won’t Be Long)」や、軽快なアンサンブルが心地良い「The Losing End (When You’re On)」など、多彩なナンバーで飽きさせない。

『満足できるかな』(1971年)/遠藤賢司

遠藤賢司『満足できるかな』ジャケ写

アコギで鳴らした音がエンケンさんの魂そのもの。

曽我部 このアルバムは凄く肩の力が抜けた演奏をしていて、等身大のエンケンさんが聴けるんですよね。猫がいて、アコギが部屋にあって、本を読みながら、たまにポロンって弾いてみるような……。日記みたいに生活感が溢れているアルバムでもあるんですけど、一方で彼の強い魂が演奏に込められている感じもするんです。

 まず、左手の指使いも素晴らしいんですよ。弦に触れた時の音に魂が込められているというか。このアルバムは全曲アコギですけど、プリングとハンマリングを良いあんばいで織り交ぜながらアルペジオをくり出したり、フォーク系のギター弾きの方があまりやらない弾き方なんです。なんていうか……ジミヘンが『Electric Ladyland』(1969年)でやっていることと近い感じがするんですよ。「カレーライス」のめちゃくちゃサイケで透明感のあるアコギもいいですね。

 アコギでガンガン弾き倒している曲もあったりして、パンク以上にパンクな感じもある。「満足できるかな」なんかもうギターの演奏が暴れまくってますもんね。

 ゲスト参加している鈴木茂さんの演奏ももちろん素晴らしいんですが、エンケンさんがアコギを持って音を鳴らした瞬間の、世界が変わる感じは唯一無二ですね。“自分もずっと音楽をやり続けていたら、彼のようになれるかな”とか考えたりするんですけど、無理ですね。あの存在感はほかにはないと思うし、アコギで鳴らした音がエンケンさんの魂そのものだと思うから。

作品解説

日本語ロックを鳴らした歴史的名盤

初期名盤として今もなお輝き続ける、遠藤賢司の2作目。はっぴいえんどの細野晴臣や鈴木茂、松本隆が参加したことでも有名な本作は、日本語ロックを高らかに鳴らした歴史的名盤としても名高い。力強いバッキングとロックンロールな歌声で魅了する表題曲「満足できるかな」のほか、ブリティッシュ・フォーク的な物悲しさをまとったヒット曲「カレーライス」や、ダウナーなアシッド・フォーク曲「君はまだ帰ってこない」など、後年のライブでもよく演奏された楽曲も多く収録される。

ギター・マガジン2022年12月号
『浅井健一(SHERBETS)』
2022年11月11日(金)発売

曽我部恵一のギター愛聴盤5枚を本誌でチェック!