ブルース・セッション定番曲プレイリスト ギタリストはこの15曲から聴いてみよう! ブルース・セッション定番曲プレイリスト ギタリストはこの15曲から聴いてみよう!

ブルース・セッション定番曲プレイリスト 
ギタリストはこの15曲から聴いてみよう!

ブルース・セッションは、12小節のブルース進行が弾ければ基本的には誰でも参加できるお手軽なもの。ただ、よく演奏される曲の中には、マイナー・キーのものがあったり、8小節の展開があったりもする。と言われると、セッション・イベントなどに行くのが、“ブルースについて詳しくないとダメ?”とハードルが高く感じてしまう人もいるのでは?

今回はそんなブルース・セッション初心者に向けて、定番の15曲をご紹介。ぜひ本プレイリストを聴いて、“〇〇町(近所) ブルース セッション”とググって参加してみよう! あと、実際に行ってみてわからないことがあれば、みんなが優しく教えてくれますよ!

選曲/文=福崎敬太 Photo by Kevin Mazur/WireImage/Getty Images

ギタリストが知っておくべき、ブルース・セッションの定番15曲!

「Crossroads」

クリームの名曲「Crossroads」でエリック・クラプトンの代表曲。原曲はロバート・ジョンソンの「Cross Road Blues」だが、セッションだとクラプトンのバージョンで演奏されることがほとんどだろう。

12小節の一般的なブルース進行で、2小節目でIV7に進むかどうかは雰囲気次第(!)で判断しよう。“クリーム版いける?”と聞かれた時に対応できるよう、リフは一応覚えておくのがオススメ!

ちなみに、基本的な12小節のブルース進行とは以下(キーがAの場合)。

12小節のブルース進行のコード譜(キーがAの場合)

なお、以降も同様だが、必ずしもセッションをする楽曲に“〇〇バージョン”という指定があるわけではない。その場で“(手拍子をしながら)こんなリズム、キーは〇、合図でアタマにブレイク入れる”など、指示があったりする。

それを念頭に、“一緒に楽しむ”というのがブルース・セッションのマナーだ。

「Everyday I Have the Blues」

B.B.キングの名曲「Everyday I Have the Blues」はセッションでは超ド定番! プレイリストにはオリジナル版を入れたが、『Live at the Regal』のバージョンも聴いておくのがベターだ。

ただ、あまりにも定番曲なため、リズムやバッキング・パターンなども様々なアレンジがある。例えばジョン・メイヤーのライブ・バージョンを聴けば、どれくらい自由に解釈されている曲かがわかるだろう。

「Hoochie Coochie Man」

マディ・ウォーターズの「Hoochie Coochie Man」のリフは必修! 逆に言うと、ブルース・セッションの場に行けば、誰かしらが必ず知っているので、覚えてなければ任せちゃえばOK。

譜面を書くとすれば、メインのリフは8小節くり返す。が、歌の入るタイミングによって変わったりするため、“what this all about〜”や“hoochie coochie man〜”という歌詞とともに全体が盛り上がったら、IV7(=キーがAの時はD7)にいってブルース進行の後半8小節、と覚えておこう。このタイミングはセッション・ホストやボーカルの人がなんとなく合図してくれることが多いので、雰囲気でわかるはず。

ちなみに、ソロ回しは12小節のブルース進行で行なわれることが一般的だ。このあたりはエリック・クラプトンのライブ・バージョンなどが良いお手本。歌に戻る際はわかりやすく合図をしてくれるので、それを見逃さないのもポイントだ。

「Sweet Home Chicago」

ロバート・ジョンソンが原曲で、多くのブルースマンがカバーしてきた1曲。これもド定番なので色々なアレンジがあるが、強いて言うとマジック・サムのイントロ&オブリを使ったバージョンがポピュラーな印象。これをコピーしておいて、“イントロ、自分が弾いても良いっすか?”なんて言ってみてほしい。

原曲リスペクトを込めたターン・アラウンド始まりのピーター・グリーン版、マジック・サム版に近い雰囲気を持つ、マット・マーフィーが弾くブルース・ブラザーズ版などもチェックしておくと◎。“Sweet Home Chicago”で調べると、ほかにも色んなバージョンがあるので、ぜひギタリストごとの違いを聴き比べてほしい。

「Stormy Monday」

ちょっと小洒落たこともできちゃう、「Stormy Monday」=通称ストマン。T-ボーン・ウォーカーが原曲で、セッションの場で“ストマン進行で”と言われたら、ツー・ファイブで結ぶ進行を指すことが多い。また、オールマン・ブラザーズ・バンドに代表される、7小節目からI7-IIm/IIIm-♯IImと進む少しジャズ的な展開になる場合もある。このあたりは、始まる前にどういう進行になるか指示や話し合いがあるので、それに従おう。

また、“イントロはケツから”みたいに言われた時は、T-ボーン・スタイルの♯V7-V7-Vdimという流れを使ったフレーズを弾いてみよう。

ちなみにストマンのバージョンを紹介した、ギタマガWEBの連載もある。これで色んなバージョンを聴き比べてみてほしい。

「Messin’ with the Kid」

ファンキーなスタイルで盛り上がるのが、この「Messin’ with the Kid」。プレイリストにはジュニア・ウェルズのオリジナル・バージョンを含めたが、もっとアップ・テンポで演奏されることもあるので、リズムは始まる前に確認しておこう(カウント始まりが多いので、スタートすればわかる)。

この楽曲はイントロに出てくるキメのフレーズがポイント。セッション・ホストやボーカルから何かしらの合図があったら、その回しの10小節目にこのフレーズを弾いてみよう。また、バッキングは歯切れの良いコード・カッティングや、ブルース・ブラザーズ版で聴けるような単音カッティングが定番。

「The Thrill is Gone」

B.B.キングの名曲として知られる「The Thrill is Gone」は、マイナー・ブルースの金字塔。IはIm(7)、IIはIIm(7)で、9小節目が♯V7、10小節目がV7、そしてIm(7)に戻るという進行になる。これはマイナー・ブルースの一種の雛形進行のため、覚えておくと良いだろう。

ソロはマイナー・ペンタトニックを中心に、ブルーノート(♭5th)を織り交ぜながら泣きのフレーズを!

ちなみにオリジナルは1951年、ロイ・ホーキンスによるもの。もともとがムーディーな雰囲気を持つ楽曲のため、ジャズ的なアプローチもマッチするだろう。

「Key to the Highway」

多くのレジェンド・ブルースマンがカバーし、エリック・クラプトンによってさらに広く知られるようになった8小節ブルース。今回はギターでのセッションが楽しめるB.B.キングとエリック・クラプトンの共演盤『Riding With The King』からピックアップした。

コード進行は次のとおり(キーがAの場合)。

「Key to the Highway」のコード譜(キーがAの場合)

12小節ばかりだと飽きがきてしまうので、こういった変則的なブルース進行も覚えておこう。

ちなみに原曲はブルース・ピアニストのチャーリー・シーガーで、これは12小節だった。現在スタンダートとなっている8小節バージョンの原曲は、ビッグ・ビル・ブルーンジー版とするのが一般的。

「Johnny B. Goode」

ロックンロールの金字塔も、12小節進行でブルース・セッションの人気曲だ。

なんと言ってもソロ回しのアタマでブレイクを入れるのが醍醐味! ここは原曲どおりのフレーズでも、チョーキングと顔だけで演出しても、何をしても盛り上がる最高のポイントだろう。

とはいえ、イントロ、ブレイクともに雰囲気だけでもコピーしておくことをオススメする。また、チャック・ベリーよろしく、ダック・ウォークをしちゃうのも◎!

ビートルズ、エルヴィス・プレスリー、ジミ・ヘンドリックスのカバーなども聴いておこう。

「All Your Love(I Miss Loving)」

めちゃくちゃ定番とまではいかないもしれないが、スライドを入れたメイン・リフが弾きたくて選ばれるオーティス・ラッシュの名曲。オリジナル・バージョンのギタリストはオーティスとアイク・ターナーだ。

途中でシャッフルに切り替えて変化をつけるのも本曲の楽しいポイントの1つなので、セッション・リーダーの合図を見逃さないようにしておこう。

また、バリエーションとしてジョン・メイオール&ザ・ブルースによるカバーもオススメ!

「Dust My Broom」

スライド・プレイヤーの定番曲が、スライド名手=エルモア・ジェームスの「Dust My Broom」。オープンEチューニングなどで弾かれることが多いため、キーの選択肢はおのずと狭まってくる。

オープン・チューニングでのスライドの入門としてもオススメなので、ぜひ挑戦してみてほしい。

また、エルモア・ジェームスのスライド楽曲では、「Shake Your Money Maker」なども定番としてよく演奏される。

「Ain’t Nobody’s Business」

ブルース・セッションのラストなどにぴったりの1曲。コード進行は覚えておきたいところだが、いわゆる“ブルース進行”とは異なるため、現場で聞けば教えてくれるだろう。

コード進行は以下のとおり(キーがCの場合)で、トニック(I)やサブドミナント(IV)はセブンス系のコードにしないのが一般的。

「Ain't Nobody's Business」のコード譜(キーがCの場合)

メジャー・スケールを軸に展開できるので、セブンス感の強いブルースとは少し違うアプローチが楽しめるのもポイントだ。ただ、ボーカルのメロディが美しいので、オブリは控えめに!

なお、曲名表記は「Ain’t Nobody’s Business」や「Ain’t Nobody’s Business(If I Do)」、「Tain’t Nobody’s Biz-ness if I Do」などのパターンが存在する。

「Walkin’ By Myself」

“非ブルース進行”をもう1曲入れておこう。ジミー・ロジャースの名曲「Walkin’ By Myself」は、ブルース進行の5〜8小節目を省略した全8小節の進行。

ソロ回しの際は12小節進行に以降するのが一般的。ボーカル・メロディの始まりがメジャー3rdのため、メジャー・ペンタトニックを軸にしてもマッチする楽曲だ。

また、ポイントは前半4小節の各1拍目でブレイクを入れるところ。バシッと決めたら気持ち良いので、合図を見逃さないように!

「I Got Mojo Workin’」

最も盛り上がるブルース・スタンダードの1つ、「I Got My Mojo Workin’」。“モージョー・ワーキン”と略されることも。

早いテンポで演奏することが多いので、ギター的にはノリを重視してプレイするのがポイントだ。

が、この曲のセッションで一番大切なのは、ボーカルの盛り上がりに合わせること! “Got My Mojo Working!”と歌ったら、コーラスで目一杯“ガッ・マ・モージョー・ワーキン!”と叫んだり、合図があったらブレイクを入れたりと、盛り上げるための引き出しを持っておこう。

その好例として、ポール・バターフィールド・ブルース・バンドのカバーもチェックしてほしい。

「Route 66」

ジャズ・スタンダードとしても知られる1曲だが、チャック・ベリーがカバーしたことからロック界隈でも演奏されるようになった「Route 66」。ローリング・ストーンズのデビュー・アルバム『The Rolling Stones』のUK盤では、この曲が冒頭を飾っている。

軽快なロックンロール調で、ブレイクを入れることも多いので、合図を見逃さないように注意が必要だ。

ほかのお手本としてチャック・ベリーと、ジャズ的なアプローチを学べるジョージ・ベンソンも紹介しておこう。

まだまだブルース・セッションで演奏される楽曲は存在する。が、すべて覚えていく必要はない。

大切なのは、わからない時は教えてもらうこと、そしてみんなの演奏もしっかりと聴きながら、一緒に音楽を楽しむということ。

人と人のコミュニケーションが改めて考えられている今、ぜひブルース・セッションという楽しいコミュニティに足を踏み入れてほしい。

セッション中のロバート・クレイ、エリック・クラプトン、ジミー・ヴォーン、B.B.キング
左からロバート・クレイ、エリック・クラプトン、ジミー・ヴォーン、B.B.キング。これだけみんなリラックスしながら、音楽によるコミュニケーションを楽しめるのが、ブルース・セッションなんです!