岡田拓郎をナビゲーターに迎え、カテゴライズ不可能な個性派ギタリストたちの作品を紹介する連載、“Radical Guitarist”。第11回はスティーヴ・チベッツのECM第2弾、『Safe Journey』をご紹介しよう。カルテット編成で重厚に聴かせる今作のアンサンブルを、前作『Northern Song』と聴き比べるのも面白いかもしれない。
文=岡田拓郎 デザイン=山本蛸
今回紹介する作品は……
『Safe Journey』
スティーヴ・チベッツ
ECM Records/ECM-1270/1984年リリース
―Track List―
01. Test
02. Climbing
03. Running
04. Night Again
05. My Last Chance
06. Vision
07. Any Minute
08. Mission
09. Burning Up
10. Going Somewhere
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スティーヴ・チベッツの基本情報
チベッツによる静と動のレンジの広いプレイを楽しむ1枚
前作『Northern Song』に続きプロデュースはマンフレート・アイヒャー。メンバーはスティーヴ・チベッツ、マーク・アンダーソン(perc)に加え、拠点であるミネアポリスの演奏家と思われるボブ・ヒューズ(b)、スティーヴ・コクラン(tabla)。このカルテット編成により、ミニマルなアンサンブルに重厚さが加わった。
「Test」ではトライヴァルなビートの上でネルス・クラインを思わせるアグレッシブなディストーション・ギターを、「Vision」ではレガートを多用した浮遊感溢れるプレイの合間にフィートバックを自在に操ったりと、チベッツのハードなギター・プレイがアルバム全編においてドライヴィンな印象を与えている。しかし、どんなにハードな演奏でもギターのための音楽にはならず、あくまで音楽のためのギターといった客観的なバランス感の鋭さを感じさせる。
「Climbing」でのボリューム奏法はタンブーラのような瞑想的な効果を生み、ハンマリング&プリングをひたすらミニマルにくり返し続ける「Any Minute」など、エレクトリック・ギターによるテクスチャー的なアプローチもユニーク。もちろん、丹念にレイヤーされた多重録音による、広がりあるアコースティック・ギターも随所で聴かせる。チベッツによる静と動のレンジの広いプレイを楽しむのであれば、本作がベストではないだろうか。
著者プロフィール
岡田拓郎
おかだ・たくろう◎1991年生まれ、東京都出身。2012年に“森は生きている”のギタリストとして活動を開始。2015年にバンドを解散したのち、2017年に『ノスタルジア』でソロ活動を始動させた。現在はソロのほか、プロデューサーとしても多方面で活躍中。