シールド・ケーブルを選ぶ時の7つのポイント シールド・ケーブルを選ぶ時の7つのポイント

シールド・ケーブルを選ぶ時の
7つのポイント

文:編集部 イラスト:山本蛸

エレキ・ギターを演奏するにあたり、ギターやアンプと並んで必要不可欠な存在であるシールド・ケーブル。近年は多くのブランドから個性豊かなケーブルが発売されており、実に選択肢が多い。それゆえ、自分に最適な1本はどのモデルなのか、迷ってしまう人も多いのでは? 今回はシールド・ケーブルを選ぶ際に、ぜひ心がけたい7つのポイントを紹介しよう。どのようなシーンや用途で使うのかをしっかりと想定して、後悔のないケーブル選びを!

1 そもそも“シールド”とはどういう意味?

“シールド=電気信号を伝えるケーブル”というのはギター弾きにとって常識。だが、なぜ“シールド”と呼ぶのかは、意外と知らないのでは? ギターから出ている信号はとても微弱なので、周辺で発生する電磁波の影響を受けやすく、通常の電線ではかなりのノイズが生じてしまう。それを防ぐため、ほとんどの楽器用ケーブルには音を伝える“芯線”の外側に“シールド=盾”構造を施してあり、それが通称として呼ばれるようになったのである。ちなみにこの呼称は日本独特のもので、海外では単に“ケーブル”と呼ばれているようだ。

2 ケーブルの音作りは“どの帯域がどう減るか”

ケーブルの音を評する時、“ハイが強調される”や“ローが強い”などの表現が用いられる。ここで重要なのが、ケーブルによって各帯域が増幅されることはなく、必ず引き算で音が作られるということ。例えば高域が強いと感じる場合、ギター本来の音を[高-中-低:10-10-10]とすると、[13-11-10]などに増幅しているわけではなく、[9-6-5]といったように低~中域が減ることで、相対的に高域を目立たせるのである。もちろん上記は極端な数字での例だが、その配分をどうチューニングするかが各社の腕の見せ所というわけだ。

3 柔軟性や耐久性もチェックしよう

もちろん音質を第一に考えたいケーブル選び。しかし、意外と見逃せないのが柔軟性や耐久性といった物理的な取り回しやすさだ。ライブ向きに設計されたモデルは軽くて柔らかいものが多いので、ステージ上で動き回っても絡まりづらく、ケーブルに想定外の負荷がかかるシーンも少なくなる。一方、あまり動くことのないレコーディング現場を想定したケーブルには固めのモデルも多いので、絡まった拍子にギターからジャックが抜けてしまう……といったことも考えられる。適材適所で合ったものを選択しよう。

4 ワイドレンジか、あえて絞るか

近年のギター向けケーブルは大まかに分けると、どの帯域も引き出すワイドレンジなタイプと、特定の帯域にフォーカスしたタイプ、ふたつの傾向がある。前者は楽器が本来持つトーンを再現し、ギター以外にベースやシンセ、エレキとは異なる音響特性であるアコギにも向くが、アンサンブル内ではほかの楽器と帯域がかぶりやすいデメリットも。後者はそうした帯域をあえて絞り、いわゆるエレキ・ギターの“おいしい”中域周辺を狙うことで、アンサンブルでの抜けやギターらしい音のツヤに優れる。プレイ・スタイルや好みで選ぼう。

5 ギター、アンプ、ペダル……周辺機材との相性も考慮

ケーブル単体でなく、ギターやアンプといった周辺機材とのバランスを考えることも重要。例えばギター自体がジャキジャキとした強い高域を持っている場合、高域寄りのケーブルでさらにシャープな音を狙うか、逆にロー・ミッドに優れるケーブルを使って音の太さを狙うかで、トータルの出音は大きく変わってくる。出したい音にもよるが、シングルコイルPUは低~中域を太くするイメージで、ハムバッカーPUでは中~高域の伸びを意識してケーブルを選ぶと、バランスが取りやすいだろう。

6 ギター本体とのコーディネートで選ぶ

ひと昔前まで、シールドと言えば黒いケーブルの両端に銀色のプラグが付いたシンプルな見た目が一般的なイメージだったが、近年はブランドのキャラクターを反映する個性豊かなデザインの製品が多くなった印象。ある意味ギター・ストラップと近い感覚で、自分の愛用ギターとの組み合わせをコーディネートするのもひとつの楽しみ方だろう。特にプラグ部分の色(=メッキ)はサウンドにも大きく関係し、形状が扱いやすさにもつながるため要チェック。クラシック・ロック好きならばカール・コードという選択肢も。

7 用途を想定して最適な長さを使おう

多くのケーブルは3m、5m、7mなどいくつかの長さがラインナップされており、どれを選ぶべきか悩んでしまうかもしれない。“大は小を兼ねる”という言葉もあるが、基本的にケーブルは長いほど高域を中心に音が劣化していくため、それを念頭に置きつつ過不足ない長さを選びたい。個人差が大きい部分だが、一般的なライブハウスであれば5m、自宅やリハーサル・スタジオでは3mあれば十分なケースが多いだろう。DTM/レコーディング専用と割り切れば、1m~2m程度のケーブルも選択肢に入ってくる。

さぁ、この7つのポイントを踏まえ、さまざまなブランドのシールドが持つ特性を見ていこう。ということで、特にこだわり派のギタリストへおすすめしたい、“ワンランク上の”シールドを試奏した企画をご紹介。自分の好みと合う相棒をぜひ見つけてもらいたい。

今回、よりキャラクターの違いを実感しやすい“ワンランク上”のケーブル20本を紹介。内部構造や素材、デザインにこだわった多彩なモデルを、西田修大による試奏とともに紹介していこう。あわせて、編集部によるライン録音でのレビューもご参考までに。
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*本記事はギター・マガジン2020年10月号にも掲載されています。

本号の特集は「’70s BLUE NOTE〜70年代ブルーノートとクロスオーバー前夜のギタリスト」。”新時代の音を作ってやる”という気概のこもった当時のギタリストたちのプレイと、デヴィッド・T.ウォーカー、リー・リトナーらの証言インタビューで、彼らのドラマと偉業に迫っていく。