リズムの面で演奏クオリティを上げていく効果的な練習方法のひとつが、メトロノームを“裏”に聴いて(感じて)弾くトレーニング。このエクササイズを日々積み重ねていけば、読者のリズム感がピカピカに磨き上げられること請け合い!
構成/文=安東滋 浄書=Seventh
“裏拍”への意識をブラッシュアップ!
この裏拍トレーニングの概略を4拍子の設定で書き出したのが図1。ご覧のように、普通はメトロノームの音を「1・2・3・4」の“オン・ビート(表拍)”の位置に鳴らすのがスタンダードな設定ですが(ex-1)、このトレーニングではそのメトロノームの音を“オフ・ビート(裏拍)”の位置に鳴らしながら(感じながら)ギターを弾いていこう……という算段です(ex-①~③)。
つまり、演奏者が“表拍”をキープしながら、そこにメトロノームが各音符の“裏拍”を「カッ・カッ」と打ち込んでくる構図ですね。
すると当然ですが、メトロノームの打音によって常に“裏”が聴こえてきますので、嫌が応にもそのタイミングを意識せざるを得ません。つまり、このトレーニングによって「裏拍への意識がぐんとクローズ・アップされてくる!」……というわけです。
それによって裏拍のタイミングがより正確にとらえられるようになり、弾き出すリズム&グルーヴも格段にタイトになっていく、という寸法です。ここに、この裏拍トレーニングの一番の効用があります。
また、それまでジャストだと思っていたオン・ビート側の微妙な発音のタイミングも、この裏拍トレーニングによって矯正/補正されていく……という副産効果(?)も期待できます!
トレーニングのポイントはここ!
①テンポ&リズムをしっかりキープ!
前述したように、この裏拍トレーニングは演奏者が表拍をしっかりキープするところに一番のポイントがあります。そこがきっちりとできていれば、メトロノームの打音が裏拍のタイミングに気持ちよく返ってくるはずです。
ですが、演奏者側のテンポ/リズムが前のめりになったりモタったりすると(速くなったり、遅くなったりすると)、当然ながらメトロノームの音もズレて聴こえてきます。このズレ幅が許容範囲を超えると「リズムの“表”と“裏”がひっくり返る」というペケな状態になってしまいます。
つまり、あくまでも演奏者自身がキープするテンポ&リズムの基準値がしっかりあってこその裏拍トレーニング、というわけです。逆説的ですが「不動の“表”があるから“裏”が計れる」ということですね(笑)。
②メトロノームは“グッド・パートナー”
これらのメトロノーム・トレーニングを実践する際の見逃せないツボは、「メトロノームに合わせる」のではなく「メトロノームと一緒に演奏する!」……この感覚で弾くことです。演奏者が基本のビートをしっかりキープしながら、そこに練習パートナーであるメトロノームが“裏”のタイミングを「カッ・カッ」と正確無比に打ち込んで補佐してくれる、というような感覚でしょうか。メトロノームはあなたのリズム感をピカピカに磨き上げてくれる敏腕コーチなのです。
裏拍トレーニング
【基本セッティング篇】
ではここから、メトロノーム・トレーニングの実践に入りましょう! まずは基本的なセッティングからトライ!
前述したように、このトレーニングの一番の狙いは“裏拍”への意識を研ぎ澄ますことにあります。そしてそれらの細かい裏拍を感じると同時に、グルーヴの大きな柱である2&4拍目のバック・ビート(ドラムが叩く2&4拍目のアクセントの位置)もしっかりと感じながら弾く……ここにも、本リズム・トレーニングの大きなツボがあります。「木を見て、森を見ず」の格言ならぬ、「細かい“裏”を聴いて、大きい“グルーヴ”を感じず」では本末転倒、ということですね(笑)。ここもお忘れなく!
トレーニング①:8分音符の“裏”で鳴らす
トレーニング②:シャッフル(3連符)の“裏”で鳴らす
トレーニング③:16分音符の“裏”で鳴らす
〜終わりに~
「“裏”で聴くヒント」
メトロノームを“裏”で聴く基本トレーニング、いかがだったでしょうか?
同種のリズム練習は読者のリズム感を何段階もアップグレードしてくれる効果的なエクササイズになってくれるはずです。ぜひ日々の練習ルーティンに加えてみてください。その効果は保証書付き!
「でも、メトロノームの音がなかなかうまく“裏”に感じられないんだよな~、とほほ」という人は、半端な数のパルスを挿入する入れ替えアイディアを試してみて下さい(ex-1)。きっとリズムの“表”と“裏”がうまくひっくり返ってくれるはずです。
さて次回は、これらの基本セッティングを踏まえた、中級者~上級者向けの『応用セッティング』を紹介します。