分数コードとは? 初心者集まれ! 指板図くんのギター・コード講座 第11回 分数コードとは? 初心者集まれ! 指板図くんのギター・コード講座 第11回

分数コードとは? 
初心者集まれ! 指板図くんのギター・コード講座 第11回

今回のテーマは「分数コード」です。そのコード名は、C/GやC/B♭など分数のように表記されますが、算数とは関係ありません。ではどういうコードのことなのでしょうか?

文・図版作成=ギター・マガジン編集部

分数コードとは?

分数コードとは、分数の形で表記されるコードのことです。次の図の①のように縦に重ねる場合と、②のように横に並べる場合とがありますが、意味は同じです。

そして分数コードでは、分子にあたる部分に書かれているのがコード名を、分母にあたる部分に書かれているのがベース音の音名を表わしていますベース音は単音であることに注意して下さい。

また分数コードは次の③のように「コード on ベース音」の形で表記されることも多く、この場合はオン・コードと呼びます

通常のコードでは、そのコードのルートがすなわちベース音と言えますが、あえてルートとは違う音をベース音に指定したい時に、分数コードを使います

分数コードの例(メジャー系)

分数コードの例をいくつか示しましょう。

まずはメジャー系。分子のコードはすべてC(メジャー・トライアド)とします。またベース音は、コードがCの時に使われやすいものに絞ります。

なお、これまでの指板図において、ずっとルートを意味していた二重丸(◎)は、今回はベース音に使いますので、その点にもご注意下さい。

まずC/Eです。これは、Cコードの構成音のうちのE(ミ)の音をベース音にしたものです。単なる「Cの転回形」なので、コード全体の響きが普通のCと大きく変わることはありません。

次はC/Gです。これは、Cコードの構成音のうちのG(ソ)の音をベース音にしたものです。これもまた単なる「Cの転回形」なので、コード全体の響きが普通のCと大きく変わることはありません。

次にC/Bです。これは、Cコードの構成音には含まれない7(長7度)の音であるB(シ)をベース音にしたものです。しかしこれをC△7の転回形とみなして、C△7/Bと書くこともあります。

※コード名を見る側の受け取り方は、「C/B」と「C△7/B」とで若干異なるかもしれません。例えば筆者は「C/B」というコード名を見ると、ギターの高音弦側には7の音を入れないように(つまりはトライアドだけになるように)します。一方「C△7/B」というコード名を見ると、ギターの高音弦側にも7の音を入れようとします。このへんは人それぞれかと思いますので、適宜使い分けたほうがよいかもしれません。

次はC/B♭です。これは、Cコードの構成音には含まれない♭7(短7度)の音であるB♭(シのフラット)をベース音にしたものです。しかしこれをC7の転回形とみなして、C7/B♭と書くこともあります。

次はC/Aです。これは、Cコードの構成音には含まれない6(長6度)の音であるA(ラ)をベース音にしたものです。これをC6の転回形とみなすこともできます。ただし、C6の構成音は実はAm7とまったく同じであり、なおかつこの場合はベース音がAなのですから、普通はC/AやC6/Aではなく、ただAm7と書くでしょう。

もう1つ、C/Dを紹介しておきます。C/Dは、Cadd9の9(長9度)の音であるD(レ)をベース音にしたもの、と言えなくもないのですが、これはD7(sus4,9)の別名、と思ったほうがよいでしょう。詳しいことは次回に説明しますが、コード進行においてC/Dは、D7やDsus4の代わりに使われることが多いからです。

分数コードの例(マイナー系)

分子がマイナー・コードの分数コードもありますので、そのフォームをAmを例にいくつか挙げておきましょう。

まずAm/Cです。これは、Amコードの構成音のうちのC(ド)の音をベース音にしたものです。単なる「Amの転回形」なので、コード全体の響きが普通のAmと大きく変わることはありません。

次はAm/Eです。これはAmコードの構成音のうちのE(ミ)の音をベース音にしたものです。これもまた単なる「Amの転回形」なので、コード全体の響きが普通のAmと大きく変わることはありません。

次はAm/G♯です。これは、Amの構成音には含まれない7(長7度)の音であるG♯(ソのシャープ)をベース音にしたものです。しかしこれをAm△7の転回形とみなして、Am△7/G♯と書くこともあります。

次はAm/Gです。これは、Amの構成音には含まれない♭7(短7度)の音であるG(ソ)をベース音にしたものです。しかしこれをAm7の転回形とみなして、Am7/Gと書くこともあります。

次はAm/F♯です。Amの構成音には含まれない6(長6度)の音であるF♯(ファのシャープ)をベース音にしたものです。しかしこれをAm6の転回形とみなして、Am6/F♯と書くこともあります。

最後に、Am/Dを紹介しておきましょう。Am/Dは、Am add11の11の音であるD(レ)をベース音にしたもの、と言えなくもないのですが、C/Dとも似ていていますし、D7(9) omit3の別名と思ったほうがよいと思います。詳しいことは次回に説明します。

分数コードを分類してみる

前項で挙げた分数コードは、次の3つに大別できます。

  1. 三和音の転回形
  2. 四和音の転回形
  3. その他

「1:三和音の転回形」とは、次の分数コードたちのことです。

C/E C/G Am/C Am/E

これらは、CもしくはAmの構成音にもともと含まれている音をベース音にしたものなので、先にも書いたとおり、コード全体の響きは通常のCやAmと大きく変わるところはありません。

「2:四和音の転回形」とは、次のコードたちのことです。

C/B C/B♭ C/A Am/G♯ Am/G Am/F♯

これらはそれぞれ、ルートに対して7、♭7、6にあたる音をベース音にしたものであるため、四和音の転回形と見ることができます。よって、次のように分子の部分を四和音で表記することもできます。

C△7/B C7/B♭ C6/A Am△7/G♯ Am7/G Am6/F♯

「3:その他」とは、今回紹介した中では次のコードたちです。これらに関しては次回に説明します。

C/D Am/D

さて、一部不明な点も残ったかもしれませんが、このように色々な分数コードをある程度分類しておくと、その役割や使い方も理解しやすくなってきます。

今日のまとめ


分数コードのベース音には、分子のコードのルート以外の11音のどれを指定しても良いわけですが、今回はそのうちの一部しか紹介しませんでした。なぜならば、実際によく使われる分数コードはわりと限られているからです(人それぞれでしょうが)。

ただ、今日のまとめを兼ねつつ、CおよびAmを分子とした各11個の分数コードの名前だけでも、一覧表で挙げておきましょう。「使用頻度が高い」の欄に○印が付いたコードは、今回紹介したものです。

▼Cを分子とした分数コード

コード名分母が分子の構成音使用頻度が高い転回形別表記
C/D♭
C/DD7(sus4,9)
C/E♭
C/ECの転回形
C/F
C/G♭
C/GCの転回形
C/A♭
C/AC6の転回形C6/A、Am7
C/B♭C7の転回形C7/B♭
C/BC△7の転回形C△7/B

▼Amを分子とした分数コード

コード名分母が分子の構成音使用頻度が高い転回形別表記
Am/B♭
Am/B
Am/CAmの転回形
Am/C♯
Am/DD7(9) omit3
Am/E♭
Am/E
Am/FF△7
Am/F♯Am6の転回形Am6/F♯
Am/GAm7の転回形Am7/G
Am/G♯Am△7の転回形Am△7/G♯

さて、分数コードは、コード単体で弾いてみても何の役に立つのかわかりにくいものです。そこで次回は、分数コードを使ったコード進行例をいくつか紹介します。

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◎コードとは?コード進行とは? 
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方 
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方 
◎Cメジャー・スケールを覚えよう 
◎ルートとは?度とは? 
◎コードの構成音一覧 
◎三和音とは? 
◎四和音とは? 
◎テンション・コードとは? 
◎omit3とは?add9とは?sus4とは? 
◎分数コードとは? 
◎続・分数コードとは? 
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