今回のテーマは「分数コード」です。そのコード名は、C/GやC/B♭など分数のように表記されますが、算数とは関係ありません。ではどういうコードのことなのでしょうか?
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
分数コードとは?
分数コードとは、分数の形で表記されるコードのことです。次の図の①のように縦に重ねる場合と、②のように横に並べる場合とがありますが、意味は同じです。
そして分数コードでは、分子にあたる部分に書かれているのがコード名を、分母にあたる部分に書かれているのがベース音の音名を表わしています。ベース音は単音であることに注意して下さい。
また分数コードは次の③のように「コード on ベース音」の形で表記されることも多く、この場合はオン・コードと呼びます。
通常のコードでは、そのコードのルートがすなわちベース音と言えますが、あえてルートとは違う音をベース音に指定したい時に、分数コードを使います。
分数コードの例(メジャー系)
分数コードの例をいくつか示しましょう。
まずはメジャー系。分子のコードはすべてC(メジャー・トライアド)とします。またベース音は、コードがCの時に使われやすいものに絞ります。
なお、これまでの指板図において、ずっとルートを意味していた二重丸(◎)は、今回はベース音に使いますので、その点にもご注意下さい。
まずC/Eです。これは、Cコードの構成音のうちのE(ミ)の音をベース音にしたものです。単なる「Cの転回形」なので、コード全体の響きが普通のCと大きく変わることはありません。
次はC/Gです。これは、Cコードの構成音のうちのG(ソ)の音をベース音にしたものです。これもまた単なる「Cの転回形」なので、コード全体の響きが普通のCと大きく変わることはありません。
次にC/Bです。これは、Cコードの構成音には含まれない7(長7度)の音であるB(シ)をベース音にしたものです。しかしこれをC△7の転回形とみなして、C△7/Bと書くこともあります。
※コード名を見る側の受け取り方は、「C/B」と「C△7/B」とで若干異なるかもしれません。例えば筆者は「C/B」というコード名を見ると、ギターの高音弦側には7の音を入れないように(つまりはトライアドだけになるように)します。一方「C△7/B」というコード名を見ると、ギターの高音弦側にも7の音を入れようとします。このへんは人それぞれかと思いますので、適宜使い分けたほうがよいかもしれません。
次はC/B♭です。これは、Cコードの構成音には含まれない♭7(短7度)の音であるB♭(シのフラット)をベース音にしたものです。しかしこれをC7の転回形とみなして、C7/B♭と書くこともあります。
次はC/Aです。これは、Cコードの構成音には含まれない6(長6度)の音であるA(ラ)をベース音にしたものです。これをC6の転回形とみなすこともできます。ただし、C6の構成音は実はAm7とまったく同じであり、なおかつこの場合はベース音がAなのですから、普通はC/AやC6/Aではなく、ただAm7と書くでしょう。
もう1つ、C/Dを紹介しておきます。C/Dは、Cadd9の9(長9度)の音であるD(レ)をベース音にしたもの、と言えなくもないのですが、これはD7(sus4,9)の別名、と思ったほうがよいでしょう。詳しいことは次回に説明しますが、コード進行においてC/Dは、D7やDsus4の代わりに使われることが多いからです。
分数コードの例(マイナー系)
分子がマイナー・コードの分数コードもありますので、そのフォームをAmを例にいくつか挙げておきましょう。
まずAm/Cです。これは、Amコードの構成音のうちのC(ド)の音をベース音にしたものです。単なる「Amの転回形」なので、コード全体の響きが普通のAmと大きく変わることはありません。
次はAm/Eです。これはAmコードの構成音のうちのE(ミ)の音をベース音にしたものです。これもまた単なる「Amの転回形」なので、コード全体の響きが普通のAmと大きく変わることはありません。
次はAm/G♯です。これは、Amの構成音には含まれない7(長7度)の音であるG♯(ソのシャープ)をベース音にしたものです。しかしこれをAm△7の転回形とみなして、Am△7/G♯と書くこともあります。
次はAm/Gです。これは、Amの構成音には含まれない♭7(短7度)の音であるG(ソ)をベース音にしたものです。しかしこれをAm7の転回形とみなして、Am7/Gと書くこともあります。
次はAm/F♯です。Amの構成音には含まれない6(長6度)の音であるF♯(ファのシャープ)をベース音にしたものです。しかしこれをAm6の転回形とみなして、Am6/F♯と書くこともあります。
最後に、Am/Dを紹介しておきましょう。Am/Dは、Am add11の11の音であるD(レ)をベース音にしたもの、と言えなくもないのですが、C/Dとも似ていていますし、D7(9) omit3の別名と思ったほうがよいと思います。詳しいことは次回に説明します。
分数コードを分類してみる
前項で挙げた分数コードは、次の3つに大別できます。
- 三和音の転回形
- 四和音の転回形
- その他
「1:三和音の転回形」とは、次の分数コードたちのことです。
C/E C/G Am/C Am/E
これらは、CもしくはAmの構成音にもともと含まれている音をベース音にしたものなので、先にも書いたとおり、コード全体の響きは通常のCやAmと大きく変わるところはありません。
「2:四和音の転回形」とは、次のコードたちのことです。
C/B C/B♭ C/A Am/G♯ Am/G Am/F♯
これらはそれぞれ、ルートに対して7、♭7、6にあたる音をベース音にしたものであるため、四和音の転回形と見ることができます。よって、次のように分子の部分を四和音で表記することもできます。
C△7/B C7/B♭ C6/A Am△7/G♯ Am7/G Am6/F♯
「3:その他」とは、今回紹介した中では次のコードたちです。これらに関しては次回に説明します。
C/D Am/D
さて、一部不明な点も残ったかもしれませんが、このように色々な分数コードをある程度分類しておくと、その役割や使い方も理解しやすくなってきます。
今日のまとめ
分数コードのベース音には、分子のコードのルート以外の11音のどれを指定しても良いわけですが、今回はそのうちの一部しか紹介しませんでした。なぜならば、実際によく使われる分数コードはわりと限られているからです(人それぞれでしょうが)。
ただ、今日のまとめを兼ねつつ、CおよびAmを分子とした各11個の分数コードの名前だけでも、一覧表で挙げておきましょう。「使用頻度が高い」の欄に○印が付いたコードは、今回紹介したものです。
▼Cを分子とした分数コード
コード名 | 分母が分子の構成音 | 使用頻度が高い | 転回形 | 別表記 |
---|---|---|---|---|
C/D♭ | ||||
C/D | ○ | D7(sus4,9) | ||
C/E♭ | ||||
C/E | ○ | ○ | Cの転回形 | |
C/F | ||||
C/G♭ | ||||
C/G | ○ | ○ | Cの転回形 | |
C/A♭ | ||||
C/A | ○ | C6の転回形 | C6/A、Am7 | |
C/B♭ | ○ | C7の転回形 | C7/B♭ | |
C/B | ○ | C△7の転回形 | C△7/B |
▼Amを分子とした分数コード
コード名 | 分母が分子の構成音 | 使用頻度が高い | 転回形 | 別表記 |
---|---|---|---|---|
Am/B♭ | ||||
Am/B | ||||
Am/C | ○ | ○ | Amの転回形 | |
Am/C♯ | ||||
Am/D | ○ | D7(9) omit3 | ||
Am/E♭ | ||||
Am/E | ○ | ○ | ||
Am/F | F△7 | |||
Am/F♯ | ○ | Am6の転回形 | Am6/F♯ | |
Am/G | ○ | Am7の転回形 | Am7/G | |
Am/G♯ | ○ | Am△7の転回形 | Am△7/G♯ |
さて、分数コードは、コード単体で弾いてみても何の役に立つのかわかりにくいものです。そこで次回は、分数コードを使ったコード進行例をいくつか紹介します。
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◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
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