今回のテーマはマイナーのダイアトニック・コードです。3つあるマイナー・スケールから導き出される3通りのダイアトニック・コードはそれなりに複雑なのですが、本講座では極力単純化して説明します。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
本講座でこれまでダイアトニック・コードと呼んできたものは、すべてメジャー(長調)のダイアトニック・コードでした。これに対しマイナー(短調)のダイアトニック・コードもあります。
マイナーのダイアトニック・コード「お手軽版」
マイナーのダイアトニック・コードにはけっこうややこしいところがあるのですが、本講座は初心者向けですので、マイナーのダイアトニック・コードの「お手軽版」(と筆者が勝手に名付けているもの)を紹介しましょう(何が「お手軽」なのかはのちほど説明します)。
次の譜面がそれです。キーはCメジャーの平行調であるAマイナーです。
これらのロー・コードの指板図はこちらです。本講座で以前に見かけた指板図ばかりです。
この指板図の中のAmやAm7を中心としつつ、その他のコードを適当につなげば、悲しい感じのコード進行がわりと簡単に出来上がります。またAmやAm7の手前には、なるべくEやE7を入れるようにしてみて下さい。
その例を4つ示しておきましょう。
- Am-E7-Am
- Am-Dm-E7-Am
- Am-Dm-Bm7(♭5)-E7-Am
- Am-G-F-E-Am ※弾き方次第でフラメンコっぽくなる。
簡単でしょ? ただ、このままではあまりにも説明不足なので、もう少し解説を加えます。
3種のマイナー・スケールに対応した3種のダイアトニック・コード
先ほど譜面で示したマイナーのダイアトニック・コードは、「お手軽版」でした。なぜあれが「お手軽版」なのかというと、マイナーのダイアトニック・コードは実際にはもっとたくさんあるからです。ここがメジャーのダイアトニック・コードと事情が違うところです。
メジャーのダイアトニック・コードがメジャー・スケールの音から出来ていることはすでに説明しました。同じようにマイナーのダイアトニック・コードはマイナー・スケールの音から出来ているのですが、マイナー・スケールにはナチュラル・マイナー・スケール、ハーモニック・マイナー・スケール、メロディック・マイナー・スケールの3つがあり、それぞれに対応したダイアトニック・コードが存在します。
3種のマイナー・スケールはこれです。
3種のマイナー・スケールそれぞれに対応するダイアトニック・コードは次のとおりです。ざっとでよいので見て下さい。
……ちょっとうんざりしますよね? また全部覚える必要もたぶんありません。そんな理由から、先の「お手軽版」では、使用頻度が高く、最初に覚えておくと良さそうなコードだけを選びました。
マイナーのダイアトニック・コード「お手軽版」の覚え方
「お手軽版」はかなり簡単に覚えられます。
まずCメジャーのダイアトニック・コードと、先ほど紹介したAナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードに含まれるコードを比較します。次の表のとおりです。コードはまったく同一で、その順番が違うだけです。
Cメジャーのダイアトニック・コード
三和音 | C | Dm | Em | F | G | Am | Bm(♭5) |
四和音 | C△7 | Dm7 | Em7 | F△7 | G7 | Am7 | Bm7(♭5) |
Aナチュラル・マイナーのダイアトニック・コード
三和音 | Am | Bm(♭5) | C | Dm | Em | F | G |
四和音 | Am7 | Bm7(♭5) | C△7 | Dm7 | Em7 | F△7 | G7 |
そして「お手軽版」は、Aナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードの中のEmをEに、Em7をE7に変えただけのものとなっています。
Aマイナーのダイアトニック・コード「お手軽版」
三和音 | Am | Bm(♭5) | C | Dm | E | F | G |
四和音 | Am7 | Bm7(♭5) | C△7 | Dm7 | E7 | F△7 | G7 |
このように、Cメジャーのダイアトニック・コードを把握していれば、Aマイナーのダイアトニック・コードの「お手軽版」もすぐに覚えられるわけです。
マイナーのダイアトニック・コードにおけるドミナント・モーション
さて、「Aのナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードだけでOKだと思うんだけど、お手軽版はなんでわざわざEやE7にしているの?」と思う方がいるかもしれません。答えを言うと、EmやEm7の代わりにEやE7を使うことでドミナント・モーションを作ることができるから、です。
次の2つの枠内にある1.と2.のコード進行を弾き比べてみて下さい。
- Am-Dm-Em-Am
- Am-Dm-E7-Am
- Am-G-F-Em-Am
- Am-G-F-E7-Am
どちらも1.はナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードだけを使ったものです。実際に弾いてみると、たぶんわりとあっさりした感じに聴こえると思います。なぜかというと、Em-Amという進行では、ドミナント・モーションにならないからです。
一方、2.は、EmだったところをE7に変えています。これらにはより強い進行感があります。なぜかというと、E7(ドミナント)-Am(トニック)という進行がドミナント・モーションを形成しているからです。
もっとも、どっちが良いとか優れているとかいう話ではありません。人の好みやメロディ・ラインによって使い分ければ良いだけの話なのですが……とりあえずここで示した「お手軽版」は、シンプルでありつつ、ドミナント・モーションも作れるようにコードを選んだもの、と思って下さい。
今回はこれでおしまいです。
本講座の関連コンテンツ
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【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
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