今回のテーマは「ツー・ファイブ」です。この言葉を初めて知る人から、聞いたことはあるけどよくわからないという人向けに、なるべくシンプルに解説します。
文・図版作成=ギター・マガジン編集部
コード進行についての解説が載っている教則本には、必ずといって良いほど「ツー・ファイブ」という言葉が出てきます。このツー・ファイブを覚えることで、コード進行のバリエーションがかなり増やせます。今回ははこれをなるべく簡単に説明してみますので、どうか最後までおつきあい下さい。
ツー・ファイブ(II-V)とは?
ツー・ファイブ(II-V)とは、簡単に言えばダイアトニック・コードの2番目のコードから5番目のコードに進むコード進行のことです。
キーがCメジャーの場合、四和音のダイアトニック・コードは次の表のとおりです。上の段のローマ数字が何番目のコードであるかを示しています。2番目と5番目のコードはピンク色にしました。
I△7 | IIm7 | IIIm7 | IV△7 | V7 | VIm7 | VIIm7(♭5) |
C△7 | Dm7 | Em7 | F△7 | G7 | Am7 | Bm7(♭5) |
これを見るとわかるとおり、2番目のコードはDm7で、5番目のコードはG7ですので、キーがCメジャーの時のツー・ファイブはDm7-G7になります。
次にCメジャーの平行調であるAマイナーのダイアトニック・コードも見てみましょう。なお、ここで示すマイナーのダイアトニック・コードは本講座で何度か紹介した「お手軽版」です。
Im7 | IIm7(♭5) | ♭III△7 | IVm7 | V7 | ♭VI△7 | ♭VII7 |
Am7 | Bm7(♭5) | C△7 | Dm7 | E7 | F△7 | G7(♭5) |
2番目のコードはBm7(♭5)で、5番目のコードはE7なので、キーがAマイナーの時のツー・ファイブはBm7(♭5)-E7になります。
ツー・ファイブを表わす記号 ”└───┘”
ツー・ファイブは、数あるコードの組み合わせの中でも特に重要というか、応用が利くというか、はたまた音楽理論を説明する側からすれば何かと強調したくなるもの(?)であることから、これを表わす特別な記号があります。それは次の2つの図の中にある”└───┘”です。なお湾曲した矢印がドミナント・モーションを表わすことは、「第29回:ドミナント・モーションとは?」で説明しました。
ツー・ファイブ・ワン(II-V-I)進行を弾けるようになろう
以下ではツー・ファイブの実用的な使い方に焦点を絞って説明します。
*ツー・ファイブについて理論的なことを深く知りたい方は、音楽理論書をひもといてみて下さい。
まず、ツー・ファイブ(II-V)の次にはトニックであるワン(I)が来ることが多いです。このツー・ファイブ・ワン(II-V-I)進行をギターですぐ弾けるように、ポジションを覚えてしまいましょう。
以下にDm7-G7-C△7の指板図を7種類示しますので、自分で押さえられるものや、響きが気に入ったものから覚えていって下さい。
Aマイナー・キーのII-V-IであるBm7(♭5)-E7-Am7の指板図も5つ挙げておきます。
テンション・ノート入りのツー・ファイブ・ワン
さらにDm7-G7-C△7にテンション・ノートを付加した例も6つ挙げておきます。筆者は主にツー・ファイブ・ワン進行を通じて、テンション・コードを少しずつ覚えていきました。
また、以下で挙げた例は、トップ・ノート(コードのボイシングの中で一番高い音)が動かなかったり、半音で移動するものです。この点にも少し注目してみて下さい。
ツー・ファイブ・ワン(II-V-I)進行におけるルートの動き
II-V-I進行におけるギターでのルートの動きを覚えておくと、「Dm7から始まるツー・ファイブ・ワンの残り2つのコードのルートは何だっけ?」とド忘れした時に役立ちます。
主なパターンは次の3通りです。上で示したII-V-I進行の指板図も、ほぼこの3つのパターンのどれかに当てはまります。
「Dm7で始まるツー・ファイブ・ワン」なら、5弦5フレットまたは6弦10フレットにあるD(II)から、上の図のパターンに従って、V(G)とI(C)を見つけることができます。
セカンダリー・ドミナントをツー・ファイブに分解する
ツー・ファイブのさらに応用的な使い方も1つ紹介しましょう。
Cメジャー・キーのダイアトニック・コードの中にセカンダリー・ドミナントを挿入する方法については、「第30回:セカンダリー・ドミナントとは?」で説明しました。そのセカンダリー・ドミナントをさらにツー・ファイブに分解することで、コード進行のバリエーションをもっと増やすことができます。
セカンダリー・ドミナントをツー・ファイブに分解する、とは一体どういうことなのか?を順を追って説明します。
まず出発点として、次の5つのコード進行があるとします。キーはいずれもCメジャーで、そのダイアトニック・コードのみを使ったものです。
- C△7 – Dm7
- C△7 – Em7
- C△7 – F△7
- C△7 – G7
- C△7 – Am7
それぞれのコード進行の1つ目と2つ目のコードの間に、セカンダリー・ドミナントとなるコード(ピンク色で示したもの)を挟み込むと、次のようになります。これは「第30回:セカンダリー・ドミナントとは?」でも紹介しました。
- C△7 – A7 – Dm7
- C△7 – B7 – Em7
- C△7 – C7 – F△7
- C△7 – D7 – G7
- C△7 – E7 – Am7
さらにセカンダリー・ドミナントの手前にもう1つのコード(水色で示しました)を追加したものが次のコード進行です。
- C△7 – Em7(♭5) – A7 – Dm7
- C△7 – F♯m7(♭5) – B7 – Em7
- C△7 – Gm7 – C7 – F△7
- C△7 – Am7 – D7 – G7
- C△7 – Bm7(♭5) – E7 – Am7
上の5つの例は、1つのコード(水色)をただやみくもに追加したのではありません。共通点があります。
その共通点とは、最後(4つ目)のコードを“仮の”トニック(I)ととらえた場合に、2つ目のコードと3つ目のコードがツー・ファイブ(II-V)を形成している、ということです。
意味不明かもしれませんので補足します。
まず先のそれぞれのコード進行の、うしろの3つのコードだけに着目します。1つ目のコードであるC△7は取っちゃいます。
- Em7(♭5) – A7 – Dm7
- F♯m7(♭5) – B7 – Em7
- Gm7 – C7 – F△7
- Am7 – D7 – G7
- Bm7(♭5) – E7 – Am7
そして一番最後のコードを仮のトニック(I)とみなした場合に(ここがポイント!)、その手前の2つのコードをローマ数字で表現すると何にあたるかを調べます。
すると、どのコード進行も「ツー・ファイブ・ワン」になっているんですね。
- Em7(♭5) – A7 – Dm7 → IIm7(♭5) – V7 – Im7
- F♯m7(♭5) – B7 – Em7 → IIm7(♭5) – V7 – Im7
- Gm7 – C7 – F△7 → IIm7 – V7 – I△7
- Am7 – D7 – G7 → IIm7 – V7 – I7
- Bm7(♭5) – E7 – Am7 → IIm7(♭5) – V7 – Im7
このようにセカンダリー・ドミナントの手前にもう1つのコードを入れてツー・ファイブ進行を作ることを、「セカンダリー・ドミナントをツー・ファイブに分解する」という言い方で表現します。
さて、以上の説明にはわかりにくい部分もあるかと思いますが、仮によく理解できていなくても、これらのコード進行を弾くことはできます!
5つのコード進行をロー・コードの指板図で示しますので、手に馴染むまで弾き込んでみて下さい。またここでのローマ数字は、最後のコードを仮のトニック(I)とみなした場合のものです。2つ目のコードはII、3つ目のコードはVで、これらがツー・ファイブを形成しています。
ツー・ファイブを覚えると、自分でコード進行を作る時の引き出しは確実に増えます。また曲のコード進行を耳コピーするときにも役立つはずです。
今回はここまで。次回はいよいよ最終回です。
本講座の関連コンテンツ
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【CONTENTS】
◎コードとは?コード進行とは?
◎Cの構成音と、いろいろな押さえ方
◎C6、C7、C△7の構成音と、いろいろな押さえ方
◎Cメジャー・スケールを覚えよう
◎ルートとは?度とは?
◎コードの構成音一覧
◎三和音とは?
◎四和音とは?
◎テンション・コードとは?
◎omit3とは?add9とは?sus4とは?
◎分数コードとは?
◎続・分数コードとは?
◎コードは平行移動で覚えよう
◎続・コードは平行移動で覚えよう
◎フレット数の書かれていないコード・ブック
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