個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今回は本誌ビザール特集号(2016年9月号)の表紙でもおなじみ、ナショナル製グレンウッド95をご紹介! ボディが“とある形状”になっていますが、わかりますか???
文=編集部 撮影=星野俊 ギター提供=伊藤あしゅら紅丸
アメリカ合衆国。
ナショナル・グレンウッド95
限りなくハムに近い、シングル
ギター・マガジン2016年9月号の表紙を飾ったこのシェイプ、実はアメリカ合衆国の形になっている。
そう言われてみると、そう見えなくもない。ゆえに、通称マップ・シェイプとも呼ばれる。ナショナルのグレンウッド95というモデルだ。
62年頃に発売し、65年頃まで生産されていたが、ボディは木ではなく当時の新素材であったレゾグラス(FRP樹脂=繊維強化プラスティック)を採用している。
このナショナルというブランドについてだが、まず、1925年にジョン・ドピエラを中心とした5人のメンバーがナショナル・ストリングス・インストゥルメント・カンパニーを設立する。しかし、直後にジョンが会社を離れ、ドブロ社を立ち上げることに。リゾネイター・ギターの代名詞的ブランドである、あのドブロだ。その後、30年代の前半に両社が合併、ナショナル・ドブロ社となり、その傘下にエレキ・ギター・ブランドとしてスプロが新設される。スプロもビザール好きの間ではお馴染みの名前だろう。40年代に入ると、かつての共同経営者の別会社であるヴァルコに吸収されることになる。
そして60年代に入ると、先述の新素材=レゾグラスを積極的に採用し始める。通販会社モンゴメリー・ウォードのハウス・ブランドである低価格シリーズ、エアラインもそのなかのひとつで、J.B.ハットーやジャック・ホワイト(ホワイト・ストライプス)らが手にしていることで知っている人も多いのでは? そんなレゾグラス・モデルの最上位機種のひとつが本器である。
ハムバッカーのように見えるピックアップはシングルコイル。これがかなり太い音だ。試しにマーシャルをドンシャリにしてリフを刻んでみたが……さすがにメタル系は無理がありそうだ。ただ、クリーン〜クランチくらいの設定で弾くと、ファットなサウンドの中に“プリーン”とした張りが混ざっており、限りなくハムに近いシングル、という印象である。レゾグラスのせいか、ボディの生鳴り感は少ないようだ。テイルピース、ポジション・マーク、ピックガードといった細部もアール・デコ のモチーフでまとめられている。
本記事はギター・マガジン2016年9月号『弾きたいビザール』に掲載された記事を再編集したものです。本誌では、哀愁たっぷりのシェイプを持つ愛しいギターをこれでもかと紹介。好事家のプロ・ギタリストたちが持つビザール・ギターも掲載しています。