個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今回は、ゴージャスなルックスが目を引く、プレミアのE-722だ。ギブソンStyle-Oのような渦巻きショルダーもチャーミングで、シルバー・スパークルのピックガードなどからも気品を感じるだろう。ビザール貴族をご覧あれ。
文=編集部 撮影=星野俊 ギター提供=伊藤あしゅら紅丸
ビザール界への新提案。
あまり知られていないけど、
イイ感じにビザールなんです。
フラットワウンドで、イナたくキメるのもあり。
ここまで比較的、定番ブランド(?)を紹介してきたが、ここでひとつ、ビザール・ギター・ファンに新たな提案をしたい。それがこのプレミアというブランド。
70年代にはライ・クーダーが愛用していたのでご存知の方も多いだろうが、“夜通しビザール・ギターを語ろう!”となった時、グヤトーン、テスコから始まり、エコー、バーンズ、ケイにハーモニーときて、プレミアの名前は何番目にあがるのか、あるいは出てこないのか……いずれせよ、まだ市民権を獲得しているとは言いがたい。しかし、そのラインナップや個々の作りは非常に魅力的なのだ。
まず、ブランドの成り立ちからご説明しよう。ニューヨークの楽器ディーラーであるPeter Sorkin Music CompanyがMultivoxという自社ブランドを設立し、各種楽器の発売をスタート。50年代にはエレキ・ギターとアンプの販売も始め、プレミアはその最高級ラインとして位置づけられていたものだ。
なにせ名前からして“最高級”の意味である。作りもやはりゴージャス路線で、このE-722を見ても、大粒のシルバー・フレークが散りばめられたピックガード、ヘッドにしつらえられたエンブレム・プレート、6弦側ホーンのスクロールしたシェイプなど、各部で趣向を凝らしている。エッジをつけながら渦を巻いている仕上げは、まるでマンドリンの名器、ギブソン F-4のようではないか。
製造は、S.S.StewartやOrpheumのギターなどを製造していた、ニュージャージー州のUnited Company社が行なっていたそうで、同社の高い木工技術が見てとれるだろう。
50年代前半にBantamのような箱モノの発売を開始し、58年頃にはソリッド・ボディを発表。60年代に入ると他メーカーと同じくフェンダー・ライクなモデルが主流となる。
本器は50年代後半のもので、60年代のカタログには掲載されていないことから、比較的短命に終わってしまったものなのかもしれない。ちなみにドラム・メーカーのプレミアと混同されることもあるが、両者は無関係だと思われる。
本記事はギター・マガジン2016年9月号『弾きたいビザール』に掲載された記事を再編集したものです。本誌では、哀愁たっぷりのシェイプを持つ愛しいギターをこれでもかと紹介。好事家のプロ・ギタリストたちが持つビザール・ギターも掲載しています。