個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今週の1本は鋭角なシェイプながらどこか愛くるしさも帯びている憎めない1本、ウーリッツァーのジェミニをご紹介。エレクトリック・ピアノの代名詞=ウーリッツァーが生み出したギター、気になるでしょう?? スイッチやコントロール類も、非常に興味深いモデルなんです!
文=編集部 撮影=星野俊 ギター提供=イシバシ楽器新宿店
まるでスペース・コロニーのようなデザインです。
JAZZ/ROCKスイッチがおもしろい
1957年、ライカ犬を乗せたスプートニク2号が地球軌道を周回、1961年にはガガーリンが世界初の有人宇宙飛行を成功させ、60年代は人々の宇宙への熱が高まっていく。宇宙時代の幕開けだ。
当時のさまざまなプロダクト・デザインには宇宙のイメージが反映されるが、ギターもその例に漏れず。ナショナルやエアラインは新素材のボディを売り出し、65年に登場したグヤトーンの名器LG-160Tテルスターは宇宙衛星の名に由来している。
アメリカ・インディアナ州のウーリッツァーが60年代中頃に送り出したこのジェミニも、いかにも60年代的な“宇宙っぽさ”を感じさせるシェイプだ。
ウーリッツァーと言えば、ダニー・ハサウェイも愛用したエレクトリック・ピアノ、あるいはジュークボックスを思い浮かべる人が多いだろうが、60年代のある一時期にはギターも作っていたのである。17世紀から楽器ビジネスに関わってきた老舗は、活況だったギター産業にも期待をしていたのだろう。今回の取材に際して当時のカタログを見る機会を得られたのだが、そこにはギター、アコギ、ベースなどが並んでいた。
同社製品の中でもはっきりとしたブランド・カラーが打ち出されているのは、ジェミニ、ワイルド・キャット、クーガーの3兄弟的モデル。ワイルド・ワン・シリーズと名付けられたこれらは、シェイプのみ異なり、コントロール類はほとんど共通である。
自社製造ではなくカンザス州のホルマン・ウッデル社が生産していたのだが、それにしても、ボディ形状や、丸みを帯びたボディ・エッジの仕上げ、各ピックアップに備えられたトーン・スイッチ、テイルピースにかたどられた社名の“W”などなど、オリジナリティを追求し、なかなかに手間暇がかかっている。単なるエレキ・ブームの便乗商戦という以上に、作り手の気合いが伝わってきそうだ。写真では大ぶりに見えるかも知れないが、ジェミニのボディは思った以上に小ぶり。座って弾いても違和感はあまりなかった。ポット・デイトから判断すると、写真の1本は66〜67年頃のものだと思われる。
ウーリッツァー ジェミニ/1966〜67年製
本記事はギター・マガジン2016年9月号『弾きたいビザール』に掲載された記事を再編集したものです。本誌では、哀愁たっぷりのシェイプを持つ愛しいギターをこれでもかと紹介。好事家のプロ・ギタリストたちが持つビザール・ギターも掲載しています。