英国ビザールの渡米ボールドウィン ジャズ・スプリット・サウンド 英国ビザールの渡米ボールドウィン ジャズ・スプリット・サウンド

英国ビザールの渡米
ボールドウィン ジャズ・スプリット・サウンド

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。2021年の一発目は、ピアノで有名なボールドウィンからジャズ・スプリット・サウンドをご紹介。英国の一大ギター・メーカー=バーンズが生み出したジャズ・スプリット・サウンドは、1965年にボールドウィンがブランドを買い取ったあとも生産が続けられた。その無骨な魅力に迫っていこう。

文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大

Baldwin Jazz Split Sound

“スプリット・サウンド”ピックアップとは何ぞや!?

米ボールドウィン社のロゴが付いたこのジャズ・スプリット・サウンド。手がけているのは英国の一大ギター・ブランド=バーンズである。

1800年代後半から続くピアノの名門、ボールドウィン・ピアノ&オルガン・カンパニーは、ポップ・ミュージックのマーケットに本格参入すべく、フェンダーを買収しようと試みる。しかしそれは失敗に終わり、1965年9月、イギリスのバーンズを買収したのだ。

ただ、ボールドウィンは自社のピアノ小売店でギターの販売を始めたものの、店員の不慣れもあり、思ったような売り上げには届かなかった。そこで、1966年、モデル数を削減しギター・ビジネスを合理化する方針を決める。

バーンズ製ギターはボールドウィンに売却された当初、それまでのモデルから大きな変化はなく、ピックガード上の文字が“BALDWINに変わる程度だった。

今回紹介するジャズ・スプリット・サウンドも買収以前からバーンズで生産されていたモデルで、写真のものがバーンズ時代と変わっているのは、ロゴとヘッド形状くらいだろう(バーンズ時代〜売却後しばらくはシンプルな6インライン・ペグ・ヘッドだった)。バイオリン属のスクロールを単純化したようなヘッドは、バーンズ時代のハンク・マーヴィン・モデルの流用だろう。年代によりエッジの仕上げがかなり変遷しており、この時期はかなり面取りがされている。

ちなみにバーンズのギターはボールドウィン以前にも、アメリカでアンペグが販売していた時期があり、このモデルもアンペグ・ブランドのものが存在した。

1962年にバーンズで生まれたジャズ・スプリット・サウンドは、“スプリット・サウンド”ピックアップを3基搭載したモデル。このピックアップはその名のとおり、低音側3弦と高音側3弦でコイルが分かれており、それぞれが別の信号で制御されているものだった。

コントロールは通常のボリューム&トーンに加え、それぞれのモードにユニークな名前を付けた4ウェイのピックアップ・セレクター。それぞれのモード名とピックアップの対応は以下のとおり。

WILD DOG=センターとリアのフェイズ・サウンド
TREBLE=センター単体
JAZZ=フロント単体
SPLIT SOUND=1〜3弦はリアから出力/4〜6弦はフロントから出力

ジャズ・スプリット・サウンドのコントロール・パネル。

この見た目のとおり、ジャリっとしたロックな音は暴れ馬のようで、乗りこなすのもひと苦労しそうな無骨さを感じる。極太のボルト・オン・ネックもこの音のひとつの要因だろう。

ジョイント・プレートには“メイド・イン・イングランド”の文字。それに加え、世界各国でパテントを取得しているのがわかるが、これはカバープレートで、はずすと本来のネック・ジョイントのプレートが現われる。

このジャズ・スプリット・サウンドを生み出したのは、天才=ジム・バーンズ。しかし、買収直後はあまり口出ししなかったボールドウィンも、しばらくするとギターの仕様などにも積極的に関与するようになり、逆にジムは製作の現場から離れていってしまう。そして、ボールドウィンは1970年にギターの生産を中止してしまう。

その後も、ジムはギター作りを続けるのだが、バーンズ・ブランドの名前に付随するすべての権利はボールドウィンが所有したままだったため、自身が生み出したギターに仕方なく“オームストン”の名を使用することに。

70年代以降、ジムが作るギターは“Burns UK”、“Jim Burns”として続くが、それはバーンズ・ギターを紹介する際に改めて話をしよう。