流行の変遷を体現する“火の鳥”テスコ ファイアー・バード-G 流行の変遷を体現する“火の鳥”テスコ ファイアー・バード-G

流行の変遷を体現する“火の鳥”
テスコ ファイアー・バード-G

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今週は、国産ビザールの最右翼=テスコから、圧倒的な個性を主張するフルアコ、ファイアー・バード-Gをご紹介しましょう。当時の音楽背景を考えながら本モデルを眺めてみると、いろんな推測が浮かんでくる。これもビザールの楽しみ方のひとつですよ!

文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大

Teisco Fire Bird-G

ベンチャーズ×ビートルズの個性派フルアコ!

個性の塊……そう言いたくなるようなボディ・シェイプ──1960年代末に生まれたテスコのファイアー・バード-Gは、ベンチャーズを頂点とした“エレキ・ブーム”からビートルズの“リヴァプール・サウンド”へ流行が移っていく、その過渡期を体現したモデルだ。

指板はフェンダー・ギター程度のアール(7.25インチくらいだろうか)がかかっているローズウッドで、ネックはブナの積層合板。エピフォン・カジノのボディをベースにリッケンバッカーのホーンを混ぜ合わせ、モズライトのヘッドを加えたようなシェイプ……(モズライトのリバースをさらに裏返して正当オフセットになったコンセプトは、VOXのブルドッグに近いとも言える)。

ビートルズとベンチャーズで頭に思い浮かぶギターの要素がごちゃ混ぜになったかのような1本なのだ。ファイアー・バード……言われてみれば“火の鳥”に似てなくもない。

カジノ同様シン・ボディのフルアコースティック構造で、独自のfホールが個性を放つ。このfホールも“リッケンバッカー360のホールをデフォルメして、カジノのホールを片方に生かした”というような見方もできるだろう。また、ボディに巻かれた3プライ・セル・バインディングは経年変化で色が抜けている部分があり、ヘッド周りは完全に透明になってしまっている。

独特なfホール。いや、もはや“y”ホールか?
よく見ると透明の樹脂のようなバインディングが確認できる。

写真の個体は歴代オーナーによって改造が施されており、ピックアップは純正のテスコ製からモズライト製に交換。トレモロ・アームもオリジナルの板金プレス加工品から、アルミ鋳造のビグスビー・コピーに変更されており、今でも現役で通用する仕様になっている。

配線は当時のままで、1ボリューム&1トーン、3ウェイ・ピックアップ・セレクターというシンプルなコントロール構成。サウンドはジャリッとしたフルアコ・サウンドで、リッチな雰囲気よりもハイ抜けの良いチープな印象だ。ジャズというよりはファンクに向いてそうな出音だった(ハウりそうだけど/笑)。

ちなみに、ボディはかなり大きめなサイズだが、抱えてみると意外と据わりは良く弾きやすい。ただ、6弦側のホーンが顎を突いてくる時があるので、このあたりは要注意(笑)。

テスコは1966年に経営難から河合楽器の傘下に収まるが、それでもなおエッジの効いたモデルを生み出し続けた。

このファイアー・バード-Gも、逆境の中でも強い個性を主張するテスコの魂が表出した珠玉の1本と言えるだろう。