『縫層』のインタビュー時に持参してもらった、君島大空(写真左)と西田修大(写真右)の愛用ギター&ペダル・ボードを紹介しよう。インタビュー記事と合わせてぜひチェックを!
取材・文=田中雄大 人物・機材撮影=西槇太一
KIMISHIMA’S GUITAR
Fender 1970s Stratocaster
“リア+フロント”が出力可能なストラト
2019年末頃からメインとして使用しているストラトキャスター。もともとYOUSAY SOUNDSが所有していたものを譲り受けたという1本で、やや珍しいウォルナット・ボディであり、色味の経年変化も相まって独特のオーラをまとっている。シリアルは“562384”ということで、おそらく1976年製だろう。
YOUSAY SOUNDSによって配線系が改造されており、本来“フロント+センター”のセレクター・ポジションで“リア+フロント”のミックスが出力される。これによってテレキャスターのセンターに似た音を得ることができるため、長らくテレを愛用していた君島の好みに合うそうだ。
弾き心地としては“ごまかしが効かなくてアコギみたいな感覚。振り幅があってしなやかな楽器だと思います。例えば繊細なアンサンブルの中で、エレキ・ギターがクリーン・トーンを弾く時とか、残酷なほど自分と楽器との距離が炙り出される瞬間の手前で怯むことがあると思うのですが、そういう時でも怖くないんですね。心の挙動にすごく率直に反応してくれるのでダメな時はダメだし、良い時は頗る良いという、甘えは絶対に効かない感じが好きです。僕はアコギを弾いていた時間が長かったのもあって、そういう距離でいさせてくれる楽器の方がプレイにグッと入れるし、このギターはその機微に丁寧に応えてくれるんです”とのこと。
KIMISHIMA’S PEDALBOARD
多彩な空間表現を演出
ライブ時に使用するペダル・ボード。すべて直列で接続順は①~⑩の番号通りだ。④Tensorのみ飛び道具系だが、その他は中央のボリューム・ペダルを挟んで右側が歪み系、左側が空間系という明快な構成となっている。
珍しい⑧DDS-100は高校生の頃から使っている愛機。君島によると“デジタルっぽくなくて、音のにじみや濁りの具合がリバーブっぽい。どんなタイムに設定しても広がりを作ってくれる”とのこと。DL4はYOUSAY SOUNDSによってモディファイされ、筐体上部にふたつのフット・スイッチを追加。
左側は一発でループ・モードに入るスイッチ。右側はダブル・プリセット・スイッチで、ひとつのプリセットの中にA/Bふたつのプリセットを登録して瞬時に切り替えることができる。ギター・マガジン本誌2020年4月号の“もしもペダル3台でボードを組むとしたら?”特集になぞらえ、もし3台のみを選ぶとしたら⑥ボリューム・ペダル、⑦DL4 Mod、⑧DDS-100の3つを選ぶそうで、空間的な表現に重きを置いていることがうかがえる。
NISHIDA’S GUITAR
Fender Custom Shop Jazzmaster
数多の傷が刻み込まれた愛器
西田の絶対的愛器として活躍するカスタムショップ製のジャズマスター。2014年に吉田ヨウヘイgroupでフジロックへの出演が決定した際にローンで購入したもので、2019年に君島大空合奏形態でフジロックへ出演した際にローンを完済したという。
初めからある程度のレリック加工が施されていたそうだが、ほとんどの傷は使い込む中で刻まれていったものだ。多くのパーツが交換・修理されており、ブリッジ周辺とフローティング・トレモロ、ストリング・ポストはマスタリー・ブリッジ製に変更。ペグやストラップ・ピンも交換されているが、“改造というより壊れてしまって変えています”とのこと。電装系もYOUSAY SOUNDSによって換装済み。
また、西田がジャズマスターを使い始めたきっかけでもあるネルス・クラインがボリューム・ノブ右下のピックガードを留めるネジをはずしているのを発見したことで、本器もそれに準じている。ヘッド裏のサインもネルスのものだ。“ジャズマスターの機構って俺がやりたいことがほぼできるんです。
それと、このギターは開放弦やハーモニクスの透明感も良いし、ローが締まっていることもポイントですね。リバーブやファズのノリも抜群です。ボロボロだけどめちゃくちゃ慈しんでるので、ライブのあと打ち上げで酔っ払っても必ずギターは拭きます(笑)”と本器への愛を語ってくれた。
NISHIDA’S PEDALBOARD
19台を直列した巨大ボード
さまざまなサウンドを生み出すべく、2枚で組まれた巨大なペダル・ボード。とは言え常に2枚稼働するわけではなく、左側のボードを基本として、右側は君島大空合奏形態や中村佳穂BANDなど必要に応じて出動するそうだ。
ペダルの数もかなり多いがすべて直列であり、接続順は①~⑲のとおり。現場やステージで瞬時に音を作りたい時、それぞれが独立していたほうが汎用性が高いということでスイッチャーは導入していない。配置に関しても“⑦ワーミーと⑮ボリューム・ペダルを同時に上げられる”、“⑨MT-2と⑦ワーミーが同時に踏める”など、演奏中の操作性が考慮されている。
㉑エクスプレッション・ペダルは⑱Tensorのコントロール用。左側ボードの背面にはYOUSAY SOUNDSによる特製パワー・サプライ(アイソレート電源を12個搭載)がセットされ、ノイズを拾いやすいペダルに関しては別途アダプターからも電源を取るため、サイズの大きさや複雑さに比して非常にノイズが少ないそうだ。ちなみに、右側ボードにはナイフが置かれているが、これはボードからペダルを動かす際にマジック・テープを剥がす役割を持っているほか、ノイジーなアプローチの演奏にも用いられる。各ペダルのセッティングがチェックできるよう、それぞれのボードの個別写真も以下に掲載しておこう。
作品データ
『縫層』 君島大空
ウルトラ・ヴァイヴ/APLS2010/2020年11月11日リリース
―Track List―
01.旅
02.傘の中の手
03.笑止
04.散瞳
05.火傷に雨
06.縫層
07.花曇
―Guitarists―
君島大空、西田修大